仕事で信頼される人とそうでない人との違いは何か。マナー講師の松原奈緒美さんは「ビジネスでは身だしなみが大切だ。
服装、髪型は言うまでもないが、意外に見られているのが腕時計などの“小物類”だ」という――。
※本稿は、松原奈緒美『信頼される人がやっている ビジネス基本のふるまい事典』(かんき出版)の一部を抜粋・再編集したものです。
■「自分の好きな服を着る」がNGなワケ
仕事では「身だしなみを整えましょう」と言われますね。これは、身だしなみとは、他者に不快な思いをさせないために整えるものだからです。
いっぽう、「おしゃれ」は自分の好きなもの、個性を主張するものです。
身だしなみは他者評価が基準ですので、自分の着たいもの、したいことをするのではなく、他者から評価される仕事に見合った服装やヘアスタイルが求められます。
クールビズ、ウォームビズ、カジュアルビズが導入されるなど、身だしなみの境界線は年々曖昧になってきています。
細かな規定は少なくなりましたが、与える印象・評価は昔と今とでそれほど違いはありません。
本稿では、仕事での身だしなみで注意すべきポイントをご紹介します。
■服装と靴の格式は一致させる
まず、服装と靴は格式を一致させることが大切です。
スーツを着用する際は、革のビジネスシューズが基本です。合皮製のものでも、ビジネスシューズ形状であれば差し支えないでしょう。

避けるべきなのは、スニーカーなどのカジュアルな靴、ローファー、スリッポン、メダリオンやウィングチップなどの派手な装飾のあるもの、ブーツ、ミュール(かかとがない靴)、サンダル(つま先が出たもの)などです。
男性のビジネスシューズの中でも格式が高いのは、内羽根式のストレートチップです。ひとつ持っておくと、急なフォーマルシーンでも使えるので、おすすめです。
女性はパンプスを合わせましょう。正式には、ヒールのあるものを履きます。3~7センチ程度のものを選ぶとよいでしょう。なお、ウェッジソールはカジュアルなので避けてください。靴の色はスーツと同系色が基本です。例えば、紺のスーツに茶色の靴などを合わせると、若干カジュアルな印象になります。
靴下も、男性はスーツと同系色のビジネスソックスです。くるぶし丈のもの、柄がカジュアルなソックスなどは避けましょう。女性はストッキングを着用します。
タイツは本来、カジュアルなものです。
■ポケットの襟は出すべきか、入れるべきか
次に紹介するのは、主に男性の身だしなみに関わるマナーです。
スーツ上着のポケットについている襟部分を「フラップ」と言います。このフラップは、もともと「雨除け」です。正式には、屋外に出るときに出し、室内に入るときにはポケットに入れるものです。
特に、フォーマルなシーンでこのようなマナーがさりげなくできると、「マナーのある人」「デキる人」という印象を与えます。
現在のビジネスシーンではそこまで厳密に求められていませんが、少なくとも左右対称にしておくことが大切です。特にポケットにものを入れる方は、出し入れの際にフラップが乱れやすいので、注意しましょう。
例えば、
・片方のフラップが入っていて、片方が出ている状態

・フラップがポケットに中途半端にかかっている状態
などは、だらしない印象を与えます。出すなら出す、入れるなら両方入れましょう。
なお、女性のスーツやジャケットは、フラップが飾りになっていることも多く、出し入れはできないケースもありますので、左右が揃っていれば差し支えありません。
■「前ボタン」マナーは男女で異なる
起立時にスーツの前ボタンを開けっぱなしの方を目にしますが、これはだらしない印象を与えてしまいます。
スーツのボタンの留め方にも、実はマナーがあるのです。
「アンボタンマナー」という言葉を聞いたことはありますか。男性は起立時に一番下のボタンを留めないというものです。このマナーは、19世紀イギリス国王のエドワード七世が、晩餐会でスーツの一番下のボタンを外していたため、国王に恥をかかせないように周囲の方も一番下のボタンを外したことが由来とされています。
つまり、すべて留めたらマナー違反というわけではありません。1960年代、ジョン・F・ケネディ大統領はボタンをすべて留めることを好み、留める前提でスーツを仕立てていたと言われています。
ただし、現在の男性のスーツのほとんどは、一番下を外す前提で作られています。着席時は外し、起立時には一番下以外は留めるとよいですね。
一方、女性のスーツは、すべて留めて着用します。着席時にもボタンは外しません。最近は、おしゃれを優先して前ボタンを外した着こなしをなさる方が増えましたが、お客様対応時などはマナーを知らない人という印象を与える可能性があるので注意が必要です。
■商談で避けるべき時計の種類
服装は整えるけれど、怠りがちなのが小物類です。

よく相手を見ている人は、小物類を評価基準のひとつにします。
腕時計もその一種です。カジュアルすぎる時計や華美な時計などは避けたほうがよいでしょう。仕事によりますが、例えばラバーストラップの時計などはカジュアルな印象を与えます。
最近身につけている方が多いスマートウォッチも、お客さまとの商談などがある場合は、マナー上おすすめしません。通信機能がついたスマートウォッチには携帯電話やスマートフォンと同じ特徴があるからです。
実は、携帯電話やスマートフォンは、その場にあるだけで集中力が削がれる(アメリカのテキサス大学エイドリアン・ウォード博士)というデータがあるのです。
また、身につける時計のイメージが年齢や職業に合っていることも大切です。
・若手社員:立場をわきまえた謙虚なイメージで、高価すぎずベーシックな時計

・中堅社員:おしゃれに走らず、上質さを意識

・役職者:年齢・立場に合わせたステータス感をプラス
こういった細部まで意識して気を遣える方は、周囲にも「優秀だ」「頼りになる」という印象を与えることができるでしょう。
■意外と目につく名刺入れの選び方
名刺交換は出会って最初に行うため、持っている名刺入れも目につきやすいです。避けたい種類やデザインは次のようなものです。
・プラスチック製のもの

・アルミ製のもの

・表面に装飾が多いもの
プラスチック製やアルミ製のものは、簡易的な印象を与えます。
また、その多くは自分の名刺と相手の名刺を分けて収納することができず、自分の名刺と相手の名刺を混同してしまうリスクもあります。そのような名刺入れを使っていると、相手には「あまり名刺交換の機会がない=ビジネススキルが低い」という印象を与えます。
なお、自分のオフィスで名刺交換する際に、プラスチックの名刺保管ケースからそのまま出すのは言語道断です。
名刺入れはお盆代わりに相手の名刺を載せるものでもありますので、表面に装飾のあるものも避けましょう。色は、一般的には黒、紺、茶色、グレーなどがベーシックですが、職業に合わせて選んでいただければ結構です。ただし、派手過ぎず、若干控えめの色がおすすめです。

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松原 奈緒美(まつばら・なおみ)

コミュニケーション・マナー講師、EXSIA社長

マナー・コミュニケーション領域の専門家。同領域で企業などをサポートする「株式会社EXSIA(エクシア)」代表取締役。NPO法人 日本サービスマナー協会 ゼネラルマネージャー講師として、「マナー講師養成講座」「プロフェッショナルマナー講師養成講座」など、後進講師の育成や講師認定試験官も担当。著書に『信頼される人がやっている ビジネス基本のふるまい事典』(かんき出版)がある。

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(コミュニケーション・マナー講師、EXSIA社長 松原 奈緒美)
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