■散歩中の50代女性を襲ったまさかの悲劇
ある夏の夕方、山梨県北杜市の歩道を1人、のんびりと散歩していた50代の女性は、予期せぬ事態に出くわすこととなった。前方から、ちぎれた散歩用のリードを首に巻いた大型犬が、猛烈な勢いで、彼女に向かって走ってくるのが視界に入ってきたのだ。
犬の種類は、攻撃性を持つ犬として知られるジャーマンシェパードであった。昨今、公共の場で犬の放し飼いをしているケースは、ほとんど見かけない。それだけに、その女性は今自分に起こっていることに頭の整理が追い付かず、その場で固まってしまう。その刹那、大型犬が歯をむき出しにして彼女に襲いかかった。
「ギャー!」女性は、阿鼻叫喚の声を発した。あとからわかったことだが、この大型犬は1年前にも、自宅でつながれていた散歩用のリードを引きちぎって脱走し、人を噛む事件を起こしていた。犬は苦痛を与えられると、自分の生命を守るための行動として、本気で噛みつくケースがある。人は手や言葉でコミュニケーションを取ろうとするが、犬は口を使って、意思表示を行うのだ。
■飼い主には「相当な注意」が欠けていた
この大型犬は、係留されることに対するストレスが、相当強かったのだろう。
犬などのペットが引き起こしたトラブルについては、まず刑事責任として、飼い主は「傷害罪」や「器物損壊罪」などを負わされる可能性がある。
また、民事責任についても、民法によって「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない」(第718条1項)と規定されている。
大型犬の飼い主は、70代の男性であった。では、彼は「相当の注意」をもって、犬を管理していたのか? 裁判では「1年前の出来事により、犬がリードをひきちぎることは想定できたのにもかかわらず、鎖ではなく、相変わらず散歩用のリードで係留していた。
■危害を加えなくても1500万円の損害賠償
さらに、そのリードは1年前のものと同じで、修理をしたものだった」といった理由を挙げ、「相当の注意」をもって管理していたとはいえない、とした。
その結果、この飼い主は、甲府簡裁から過失致死罪で罰金50万円の略式命令を受けるとともに、民事責任では、飼い主の管理・注意義務違反として5433万円の支払いが命じられた。なお、犬が直接、危害を加えていなくても、損害賠償が発生することもあり得る。
原付バイクに乗っていた男性が、前方から急に飛び出してきた大型犬を避けようとするも、接触してしまい転倒し、足を骨折した案件では、飼い主の女性に1500万円の損害賠償の支払いが命じられているのだ。犬は従順だ。
■しつけだけでは防げない高額賠償の恐怖
【破産しないために】
犬が人に危害を加えた場合、裁判では「相当の注意をもって、犬を管理していたか」が大きな焦点となる。まずは、犬のしつけをしっかりと行い、人などに危害を加えないようにすることが大切だ。しかし、それだけでは「相当の注意」をクリアすることは難しい。
「自宅」「散歩」「ドッグラン」など、犬の行動範囲をつかみ、それぞれのシーンで、危害を加えさせないための措置を講じる必要がある。犬を庭で放し飼いにする場合は、絶対に脱出できないようにする。係留する場合は、安直にリードを選ばず、犬の力を考慮しながら、太さや長さ、つなぎ方を決める必要がある。散歩する場面でも、然りだ。こうした配慮を通じて「相当の注意」を徹底することが、大事だといえよう。
【ポイント】
・犬の散歩では、丈夫なリードでつなげ!
・散歩中は、犬から目を離すな
・犬は、あなたが考えているほど忠実じゃない!
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永峰 英太郎(ながみね・えいたろう)
フリーライター
母の末期がん、父の認知症の体験をもとに、実体験をもとにした、さまざまな本の企画・出版も行っている。『改訂版 70歳をすぎた親が元気なうちに読んでおく本』(二見書房)『親の財産を100%引き継ぐ一番いい方法』(ビジネス社)『マンガ! 認知症の親をもつ子どもが いろいろなギモンを専門家に聞きました』(宝島社)『マイナス相続サバイバルガイド』(東洋経済新報社)など。
1969年東京都生まれ。明治大学政治経済学部卒。業界紙・夕刊紙記者、出版社勤務を経て、フリーランスの執筆・編集業につく。ビジネスマンやスポーツマンなどの人物ルポを得意とする。著書に『日本の職人技』『「農業」という生き方』『日本の農業は“風評被害”に負けない』(アスキー新書)、『夢をかなえる!ネットショップのやさしい作り方』(技術評論社)など。母の末期がん、父の認知症の体験をもとに、実体験をもとにした、さまざまな本の企画・出版も行っている。『改訂版 70歳をすぎた親が元気なうちに読んでおく本』(二見書房)『親の財産を100%引き継ぐ一番いい方法』(ビジネス社)『マンガ! 認知症の親をもつ子どもが いろいろなギモンを専門家に聞きました』(宝島社)『マイナス相続サバイバルガイド』(東洋経済新報社)『人はこんなことで破産してしまうのか!』(三笠書房)など。
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(フリーライター 永峰 英太郎)

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