■なぜ新入社員は社内情報を投稿するのか
桜の季節とともに、今年も多くの新入社員が社会への第一歩を踏み出した。苦難の就職活動を乗り越え、ついに憧れの仕事に従事している喜びを胸に秘めつつ、新たな業務の習得に追われる毎日だ。
学生時代とは違う刺激的な毎日を友達と分かち合いたい――。そこで、自分が働いている様子がよく伝わるように、資料やPC画面などの写真を添えて投稿する。
しかし、言うまでもなく、それは社会人としてアウトな行為だ。
4月に入り、日本テレビのロゴが入った入館証や芸能人の名前が入った台本と思われる資料などがXで拡散されている。スクリーンショットを見ると、日本テレビ系「ZIP!」の制作スタッフがInstagramのストーリーズへ投稿したものと思われる。拡散されている投稿のなかには「親しい友達」という、公開範囲を特定の人にだけ限定しているストーリーズも見られる。
■友人がスクショを撮り、流出させた?
今の若者は、多くの人と繋がるメインアカウント以外に、仲良しの友人だけと繋がるサブアカウントを運用する人が多い。推測にはなるが、前述の事例はサブアカウントへの投稿をさらに公開範囲を絞って投稿したものが流出したと思われる。また、ストーリーズは24時間で自動消去されることも気を緩めた原因だろう。
他にも、NTT東日本の社員がシフト表と思われるPC画面や内示資料をInstagramのストーリーズに投稿して拡散されている。こちらは「BeReal.」というSNSへの自撮り投稿も一緒に投稿されている。
「BeReal.」は、1日1回、通知が来てから2分以内に自撮りと風景を同時撮影して投稿するSNSだ。加工した写真を投稿できない仕組みになっているため、「リアル」を共有できるとZ世代に人気がある。
BeRealの公開範囲は、繋がった友人だけだ。となると、InstagramのストーリーズとBeRealでの両方で当該社員と繋がっている人がスクリーンショットを撮り、流出したということだ。他にも、三菱電機グループ企業の社員が社内資料を投稿したり、外資系コンサル勤務と思われる人がPC画面と自撮りを投稿するなど、新入社員に限らず情報漏洩を行い、炎上へと繋がっている。
■報酬狙いで炎上させるユーザーにより拡散
あらためて、こうした情報漏洩に伴う炎上が起きる仕組みを解説する。
まず、InstagramのストーリーズやBeRealなど、24時間で消える場に友人限定で社内情報を含んだ投稿が行われる。本人は信頼できる人にだけ公開しており、さらに24時間で消えるため、問題がないと考えている。
しかし、そうした仲間のなかに“裏切り者”となる人がいる。それは決して相手を貶めたいという理由だけではなく、正義感を持って相手の行動を正したいという気持ちだろう。
裏切り者はスクリーンショットを撮り、本人の公開範囲以外に画像を共有する。それは自分の友人へのダイレクトメッセージかもしれないし、炎上を目的としたインフルエンサーかもしれない。やがて、投稿はXで拡散され、YouTubeやTikTokなどへ広がり、まとめサイトにも掲載されてしまう。
■「バイトテロ」や「迷惑動画」と同じ仕組み
こうなると、大元の投稿をしてしまった人が投稿をすべて消すことは不可能だ。Xには本当かどうかは定かでないが、名前も特定されて拡散されている。今後の将来に影響してしまうことは想像に難くない。
この流れは、「バイトテロ」や「迷惑動画」と同じ仕組みだ。アルバイト中に食品を粗雑に扱う様子を撮影したり、飲食店で備え付けの醤油差しを舐めたりといった動画を見たことがある人も多いだろう。炎上してから数年が経っても、ネットを検索すれば当時の投稿がヒットし、「その後」などとアレンジも加えられた動画も見つかる。閲覧数を稼ぐとプラットフォームから報酬が出る仕組みが導入されているため、気を引く投稿を拡散したい人が増えている。アテンションエコノミーにより炎上案件は増殖していき、ネットに残り続けてしまう。
■企業だけでなく病院でも起きている
バイトテロや迷惑動画の場合、迷惑行為を行った人が企業に賠償請求されている。
今回の被害者も企業だが、問題を起こしているのは自社の社員だ。社員による情報漏洩の事例としては、日産自動車の社員が新車の写真を発表前にTwitter(当時)に投稿、不正競争防止法違反と偽計業務妨害の疑いで書類送検されている。
企業だけではない。仙台市の市立病院では、職員が患者のカルテを撮影してInstagramに投稿、氏名や病名などの個人情報を漏洩させた。仙台市は、再発防止策を発表したが、被害に遭った患者としてはたまったものではない。
■ミサイルの未公開情報も流出
過去には、航空自衛隊の内部関係者が「Discord」というSNSにミサイルの未公開情報を掲載した問題も起きている。国家の軍事に関わる重大な問題だ。
企業にとって社内情報の漏洩は、経済的な損失や社会的な信用の失墜に繋がる。上記の事例がネットに残っているように、再発防止に努めてもイメージを底上げしていくには時間が掛かる。一方、問題を起こした社員は、企業の就業規則に基づいて処分される。
■「会社内では撮影しない」ことを徹底する
社内情報をSNSに投稿させないために、企業はどうすべきなのだろうか。
まず、社員に対しての啓発は必須だ。特に新入社員は「何が機密なのか」という判断が甘い。そこで、「会社内では撮影しない」ことを徹底して指導したい。PC画面や書類はもちろん、会議室のホワイトボードももちろんNGだ。
社員証を撮影すると複製される可能性があることや、オフィスの窓から風景を写すと会社名が特定され、他の投稿と合わせてビジネスの動きをライバル企業に推察されてしまうかもしれないリスクがあることも伝える。
若い世代はスマホのカメラをメモ代わりに使うケースもあるが、何かの折に写真が流出してしまうかもしれない。企業としては大きな損失となることを指導し、撮影した写真はすぐに消すなどのルールを決める。
また、「鍵垢を過信しない」ことも重要だ。今回の社内情報流出は、InstagramのストーリーズやBeRealが大元になっている。
■個人端末の業務利用は問題が起きやすい
こうした指導をする際に、社員のソーシャルメディアポリシーを規定しておくとよい。その際には、官公庁の啓発資料のように、どういう投稿がOKでこれはNGなど、事例を示すと周知しやすい。新入社員以外にも役立つものになるだろう。
また、研修の機会は入社時だけでなく、新たなサービスが出たときにも行うとよい。今回使われたBeRealは2022年頃から使われ始めたばかりで、ユーザーの8割以上がZ世代という、大人にはあまり認知されていないSNSだ。こうした新情報にも触れておくことで、新たな対策を講じることもできる。
他にも、個人スマホを職場で使わせない、撮影禁止エリアを設けるといった物理的なゾーニングも効果がある。SNSへの流出に限らず、BYOD(Bring Your Own Device:個人端末の業務利用)は問題が起きやすい。公私の境目が付きにくいため、仕事の写真と個人の写真がクラウドサービスで混在してしまうといったリスクも起きる。
使い慣れた個人スマホを業務でも利用したいという社員もいるとは思うが、安全を優先してデバイスの利用規定を策定しておくとよい。
また、万が一の場合、すぐ相談できる窓口も用意する。早い段階で対処できれば、企業としての損失を最小限に抑えられる。「上司に怒られるかも」と報告しない社員もいるかもしれないので、匿名やチャットで報告できる仕組みや直属の上司以外が対応するなど、自社に合った形で報告の流れを整えるとうまく機能する。
若者にとってのSNSは、上の世代が想像する以上に日常と地続きだ。その感覚の違いを前提に、リテラシー教育や社内規定の整備、円滑なコミュニケーションを柱とする組織作りを行うことがSNS時代の危機管理となるはずだ。
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鈴木 朋子(すずき・ともこ)
ITライター・スマホ安全アドバイザー
メーカー系SIerのSEを経て、フリーランスに。SNSなどスマートフォンを主軸にしたIT関連記事を多く手がける。10代の生み出すデジタルカルチャーを追い続けており、子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」としても活動中。著作は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)など多数。
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(ITライター・スマホ安全アドバイザー 鈴木 朋子)

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