仕事のデキる人はどこが違うのか。経営アドバイザーの萩原雅裕さんは「計画を立てるスピードが違う。
作業の速さだけで2倍3倍の差はつかないが、準備の速さで簡単に10倍ほどの差が生まれる」という――。
※本稿は、萩原雅裕『「今日も仕事が終わらなかった」はなぜ起きるのか?』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■時間を確保しても仕事が終わらないワケ
例えばもし、あなたが「フルマラソンを1時間以内に完走する!」という目標を設定したとします。この目標は達成できるでしょうか?
当然、無理ですよね。人間の限界を超えていますから。
しかし仕事では、意図しないうちに、ついこういったことをやってしまっています。
多くの人がよくやっているのが、予定表に「終日作業」と書いておくパターンです。
みなさんも「よし、今日は集中するぞ!」と思い立って、一日予定を確保して、作業に集中しようとしたことがあるでしょう。「しっかり時間を確保したのだから、当然仕事が終わるはずだ」と希望を抱いて……。しかし、終業時間ごろになって気づくのです。「あれ、全然終わってない……」と。
あなたも一度はこのような絶望を味わったことがあるはずです。
「こんなに時間を確保したのに、なぜ?」と思いますよね。もちろん私にもそういう経験があります。
ではその謎を解くために、ここで考えてみましょう。
質問です。あなたがカレンダーに「終日作業」と入れたときのことを思い出しながら答えてください。
その仕事は「そもそも、何時間かかる仕事だったのでしょうか?」
■根拠のない見込みが招く「負の連鎖」
言い換えてみます。その仕事は、確保した時間で終わる内容だったのでしょうか? カレンダーに書いた「終日作業」は、事前にきちんと「1日(正確には7時間か8時間)で終わる」と見込んだうえで、立てた予定だったのでしょうか?
おそらく違いますよね。厳しい言い方になりますが、きっと「とりあえず1日確保しておけば終わるだろう」という、あまり根拠のない見込みだったんだと思います。
例えば「フルマラソンを何時間で完走するか?」の目標を立てるなら、まずは「10キロをどれくらいのペースで走れるのか?」を知るのが効果的です。
フルマラソンは42.195キロありますから、仮に10キロを60分で走れるペースなら4時間強かかります。10キロを70分ペースで走れるのなら、5時間弱。10キロを80分かかる場合、おそらく5時間半から6時間かかるとわかります。

このように考えて初めて「だいたい何時間くらいで終わるのか?」が見えてきます。一度目安を作っておけば、その後「でもペースが維持できるかわからないし」と、さらに現実的な目標に変えていくこともできます。
■計画が不十分だと「手戻り」が増える
フルマラソンを走ったことがなくても、「10キロを走れるペース」と「フルマラソンが42.195キロである」という事実から、タイムを推測することはできます。
時間をたくさん確保したからといって、時間内に走りきれるとは限りません。「ちゃんと5時間確保したから、フルマラソンは走りきれるだろう!」というのは、量を正確に把握できていない無謀な目標です。
仕事も同じです。
時間をたくさん確保したからといって、その仕事が時間内に終わるとは限りません。
事前に「どんな作業があって、それぞれにどれくらい時間がかかるのか」を具体的に考えておかないと、仕事が終わるかどうかはわかりません。
「どんな作業があるのか」がわかっていないということは、マラソンのコースを把握していないようなものです。それでは走り出したところで、途中で「道が違った」と気づき、走り直すことになります。仕事で言えば「作業をしてみたけどやり方が違った」「ゴールが違った」などに気づき、作業をやり直すことにあたります。このように、計画が不十分だと手戻りが発生しやすいのです。

■実は「終わらない計画」通りに進めている
「どんな作業があるのか」「それぞれにどれくらい時間がかかるのか」を正確に見積もらないと、仕事は思い通りには終わりません。
もちろん、計画が曖昧でも、仕事が終わることもあるでしょう。
しかしそれは計画ではなく偶然です。たまたまあなたの見込みよりも作業量が少なかったために、仕事が早く終わっただけなのです。その場では良かったとしても、時間をとりあえず大量に確保しておく「大は小を兼ねる」的な見積もりでは、時間内に終わる保証もなければ、再現性もありません。
しかも仕事はフルマラソンとは違って、事前に距離がわかっているとは限りません。10キロのマラソンなのか、50キロのマラソンなのか、はたまた100キロのマラソンなのかすら、わからないことがあります。「5時間で走り切ります!」と大会本番でいきなり走り出したからといって、毎回5時間以内に走りきれるとは限らないのです。
そう考えると、具体的な仕事内容を考えないまま「とりあえず丸一日あれば終わるだろう」という見通しが、いかに楽観的すぎるかがわかります。
つまり仕事が終わらないときには「終わるような計画」を立てられていないのです。
これは、逆に次のようにも表現できます。
「終わらない計画通り」に進めているので「終わらないのが計画通り」である、と。

「仕事が思い通りに仕事が終わらない」のは、あなたが計画を立てていないからではありません。計画を立てているつもりなのに、実は「終わらない計画」を立ててしまっているからなのです。
■仕事はまず「頭の中」で終わらせる
そもそも仕事がうまく進むような計画を立てている人は、意外なほど少ないものです。
みなさんが今進めている仕事は、「終わる計画」になっているでしょうか? 「このまま進めていけば終わるはずだ」という確信があるでしょうか?
「終わる計画」がきちんと作れていなければ、結局仕事が思い通りに終わることはありません。早く作業を始めたところで、やってみたらうまくいかないことに気づき、やり方を変える必要があったり、データを探し直したりと、結局手戻りが多発してしまうのです。
「頭の中でうまくいかなかったこと」が、現実の世界でうまくいくことはありません。
スティーブン・R・コヴィーの世界的名著『7つの習慣』にも次のような表現があります。
「すべてのものは2度作られる。1回目は頭の中で、2回目は現実世界で」
仕事が速い人は、まずは頭の中で仕事を一度終わらせています。だから、実際に仕事を進めても、うまく終わるのです。
■「想定外のトラブル」に対応するには
「でも、予想外のことが起きたりするじゃないか」と思うかもしれませんね。もちろんどれほど綿密な「終わる計画」を立てたところで、現実にはさまざまな障害が出てきますし、予想外の出来事も発生します。
手を動かし始めたら次々と必要な作業が判明し、想定以上に時間がかかることもあります。
しかし、だからと言って計画を立てなくていいということにはなりません。
終わる計画を立てていなかったら、起きることすべてが「想定外」になってしまいます。想定外のことに対処するのは時間も労力もかかります。事前に「終わる計画」を立て、よくあるトラブルも考慮した上で仕事を進めていく。だからこそ、想定外のトラブルにも対応できるのです。
「段取り八分、仕事二分」という言葉があります。「仕事の8割は準備(段取り・ダンドリ)で決まり、実際に作業にかかるのは残りの2割である」という意味です。実行段階がスムーズに進むかどうかは、事前準備の段階で決まります。そこまで準備していても、不測の事態、予想外のことが起きるのですから、計画が甘ければうまくいく可能性はますます下がってしまいます。
■すぐに作業に着手するのは「逃げ」
仕事をうまく進められない人は、すぐに作業に着手しがちです。目の前の作業はイメージできるので、すぐに着手して、あとの作業については「そのときになったら考えればいい」と思ってしまうのです。

つまり「やってみたけど終わらなかった」というのは、「そもそもわかっていないにもかかわらず、手を動かし始めてしまった」「終わり時間を適当に見積もってしまった」のほうが、実態に近いのです。
すなわち「いつ終わるかちゃんとわかっていなかったのに、計画として決めてしまった」。そしてその「適当な見積もり」がいつの間にか「計画」になってしまったのです。
どれほど適当な見積もりでも、上司やお客さんに伝えていれば、それは「期限」になります。それでは終わる計画がないままにスタートしていることになってしまいます。
私がかつて働いていたコンサルティング会社では「作業に逃げるな」という表現がよく使われていました。目の前のわかりやすい作業に飛びついてしまうのは、全体像を「考える」ことを避けています。すなわち、すぐに手を動かすことは「逃げ」だとされていたのです。作業に逃げると、期限に間に合わなくなったり、間に合わせるために品質が低いまま提出せざるを得なくなったりします。
■計画の速さが仕事の速さを決める
私は、仕事が速い人は「計画を高速で立てられる人」だと考えています。
そのスピードの源泉は経験からくる場合もあれば、仕事を「分解」する力からくる場合もあります。要するに「こうすればうまくいくよね」と思えるレベルまで準備するのが速いのです。
高速で精密な計画を立てることができれば、実行段階で迷うことなく進められます。
「終わる計画を作る」計画モードは、ここで使います。終わるように、つまり最後までたどり着けるように計画を立てるための技術が計画モードです。この準備が整ってこそ、次の「実行モード」で迷うことなく、集中して作業を進められるようになります。
計画モードをうまく使いこなせるようになれば、仕事のスピードは確実に上がります。作業の速さだけで2倍3倍の差がつくかというと、そこまでの差はつかないと思います。ですが、私の感覚では「計画モード」の速さは簡単に10倍ほどの差がつきます。仕事の速さは、実は「計画モード」での準備の速さで決まるのです。

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萩原 雅裕(はぎわら・まさひろ)

経営アドバイザー、Prodotto代表

1974年群馬県生まれ。慶應義塾大学卒業。米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院(MBA)修了。NTTデータ、ベイン・アンド・カンパニー、日本マイクロソフトを経て、LINE WORKS(旧ワークスモバイル)の立ち上げに参画。2021年にProdottoを設立し、現在はベンチャー・中小企業の事業成長支援に携わる。著書に『「今日も仕事が終わらなかった」はなぜ起きるのか?』(ダイヤモンド社)、『たたき台の教科書』(東洋経済新報社)がある。

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(経営アドバイザー、Prodotto代表 萩原 雅裕)
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