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▼第2位 「日本人のコンビニ離れ」が止まらない…「高いのは嫌、でもおいしい弁当が食べたい」大人たちが向かった先
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「コンビニ弁当が高すぎる」そう感じるビジネスパーソンは少なくない。経済評論家の鈴木貴博さんは「その感覚は実に正しい。コンビニ商品にあたる『生鮮食品を除く食料』の値上がり率は、2023年以降の平均で年率6.2%。全体の2倍のペースで上がっている」という――。
■セブンの成長が止まった日
新宿区百人町の昼過ぎ、歩道を埋め尽くす大量の語学留学生たちがセブン‐イレブンの前を素通りしていきます。昼休みの稼ぎどきにレジに配置された3人の店員は手持ちぶさたな様子です。
セブンの一人負けが起きているという記事が昨年2月のBEST記事に入りました。コンビニ3社の中でセブン‐イレブンだけが2023年9月頃から憑き物でもついたかのように売上の成長が止まりました。
実は客数ではコンビニ3社とも苦戦しています。インフレで生活防衛のためにコンビニを利用しない消費者が増えているのです。冒頭の語学留学生たちにとっても割高なコンビニ弁当はちょっと手を出しにくい様子です。
しかしファミマとローソンは逆境でも客単価を右肩上がりに増やしていきました。
その後、セブンはどうなったのか、今回、追跡記事を書きます。
■「うれしい値!」という判断ミス
前回の記事で指摘したセブンの経営判断ミスとは、コンビニから消えた庶民を「うれしい値!」に代表されるコストカット商品で呼び戻そうとしたことです。しかし彼らは実質賃金が増えない限りはもう帰ってはきません。
その反対に、残された中流層以上の顧客に対してこれまで以上に「価値ある商品」を開発して提供しようとしたファミマとローソンが客単価だけは右肩あがりの業績をキープできたのです。
この記事が出た後、セブンも状況を再認識したようで、戦略の変更が行われました。先行するファミマ・ローソン同様に既存顧客の満足度を上げる方針を徹底したのです。行ったことはセブンプレミアムの強化、総菜や弁当のリニューアル、サンドイッチや麺類の品質改良です。
「なんだ同じことをしたのか?」
と思うかもしれませんが同質化は業界トップ企業の戦略です。同じことを徹底すれば二位、三位企業よりも効果が出ます。
その観点で最も話題を呼んだのは増量キャンペーンでした。セブンでは2025年5月に「お値段そのまま!人気商品増量祭」でハムとたまごのサンドやミックスピザパンなどが増量されました。
さらに今年の5月には増量祭をさらに拡大して「50%以上増量」を明確に打ち出します。これはローソンの「51%盛りすぎチャレンジ」、ファミマの「40%増量作戦」への対抗策として機能します。
■「追いついた」それでも喜べない理由
その結果がどうなったのか、3社の月次比較をグラフでみてみましょう。まずは客単価の推移です(図表1)。
前回の「一人負け記事」の段階では客単価はローソンやファミマがセブンに3ポイントほどの差をつけ引き離していました。この差が2025年以降、セブンが後追いする形で縮まっていき、2026年に入ると先行2社の客単価が落ち込んだことで3社団子の状態になっていきます。
3社の月次売上の推移でもセブンが引き離された状態は解消されます(図表2)。
2023年11月から2025年9月までセブン‐イレブンは長い売上高の低迷期にありました。ファミマ、ローソンと4~5ポイントも売上で差をつけられてきたのが、今年に入って3社の売上は均衡しているように見えます。
この分析の段階で私は「セブンは復活したのか」と早とちりしたのですが、その結論だと日頃の観察事実からの違和感が大きくなってしまいます。最近のセブンの店頭は昔にくらべてかなりガラガラな感じがするのです。
月次売上高のグラフを見るとこの一年間、確かにセブンは改善方向に見えますが、混戦になった原因はファミマとローソンの売上が失速してきたことです。
■コンビニ離れが止まらない根本原因
そこでもう一段、分析を進めてみましょう。まずは客数の分析です(図表3)。
前回の「一人負け記事」でもコンビニ3社は月次の来店客の伸びが減少傾向にあったのですが、その後の一年半では客数がさらに減少していることがわかります。ファミマとセブンはほぼほぼ前年割れでローソンがなんとか1%プラスぐらいにとどまっていることがわかります。
コンビニ客数の減少はインフレが引き起こした現象です。我が国は長いデフレの時代が終わり、物価が毎月のように上がる時代に入りました。コンビニを回避する消費者が増え続けているのです。
2023年以降の消費者物価指数は平均で年率2.9%程度の上昇だと発表されています。しかしこの数字はみなさんの生活感覚と合わないのではないでしょうか?
実は消費者物価では食料が全体平均の2倍のペースで上がっているのです。消費者物価指数の細目で「生鮮食品を除く食料」という項目があります。これがほぼほぼコンビニの商品に相当するのですが、その値上がり率は2023年以降の平均で年率6.2%になります。これがコンビニが高い実感の裏付け数値です。
■平均客単価「過去最高」の本当の意味
これは3年続くと物価が1.2倍になるインフレです。以前なら200円で買えたカップヌードルが250円になり、150円で買えたツナマヨおにぎりが180円になるレベルの数字だというと、みなさんの生活感ともぴったり合うのではないでしょうか?
そこでインフレの効果を調べるために「生鮮食品を除く食料の消費者物価指数」でコンビニの客単価を補正してみます(図表4)。よく給料について「名目賃金は上がったけどインフレで実質賃金は下がっている」といいます。それと同じでコンビニの実質客単価はどうなっているのかを調べるのです。
結果は驚くべきものかもしれません。2025年はコンビニの平均客単価が743.8円と過去最高になったと報道されているのですが、インフレを補正するとコンビニ3社とも月次の実質客単価は過去3年以上にわたって対前年で100を大きく割り込んでいます。
つまり顧客がコンビニで購入する平均の品数は減り続けているということです。コンビニの現場で起きていることは客数現象だけでなく、コンビニを習慣で利用しているひとたちが、品目数を減らして生活防衛していたのです。
そしてもっと残酷な事実が出てきます。
■たどり着いたのは「3人負け」
客数(これはインフレ補正の必要なし)は先述したように一貫して増加率が低下傾向にあるうえに、インフレ補正した実質客単価がマイナスだということですから、当然ながら実質の売上高は月次でマイナスになります(図表5)。
前回の「一人負け記事」の時期まではローソンとファミマがなんとか実質売上の前年割れをマイナス1%程度にとどめていたところから、その後の一年半で3社とも一気に実質売上高が右肩下がりになっていることがわかります。
とはいえ一番大変だったのが昨年の夏から秋にかけての時期で、今年に入ってからはマイナスの度合いが弱まっていることが救いかもしれません。
こうしてインフレを補正してみると、コンビニ業態自体がマイナス成長産業になっていることがはっきりします。セブン‐イレブンが同質化戦略で改革してファミマとローソンに追いついてみたところ、たどり着いた場所は残酷なことに「三人負け」のゴールだったのです。
■お客はどこに消えたのか
ではインフレで国民の実質賃金が低下する時代の勝者がどこになるのかというと、有力な候補は「まいばすけっと」に代表されるミニスーパーです。
コンビニとそれほど違わないぐらいの広さのミニスーパーが都内に激増しています。過去にもミニスーパーという業態は何度か挑戦されてきたのですが「売上が小さいせいで店舗運営コストが高くなる」という問題があって伸びなかったものです。
ところがまいばすけっとはイノベーションでこの問題を解決しました。簡単に概略だけ説明すると肉や魚を店内で加工しないこと、総菜も店内で調理しないこと、野菜も肉も魚も売れ筋商品しか置かないことなどコストが上がらないように基本フォーマットを設計します。そのうえで直営店だけで運営し、オペレーションを標準化し、イオングループのPB商品や物流網を最大限に活用することで、小さいスーパーがカネを稼げるようにしたのです。
そうなると時代がミニスーパーに向かいます。「毎日少しずつ買う」「徒歩圏で買い物したい」というニーズからこれまではコンビニを利用していた高齢者や共働き世帯、単身者までが、インフレ時代に入りミニスーパーへと流れ始めたのです。これがまいばすけっとがコンビニキラーと呼ばれる理由です。
ただまいばすけっとにも弱点はあります。
■ミニスーパー戦争を制する“有力候補”
お弁当が美味しくないのであればコンビニとミニスーパーは共存するかもしれないと思われていたところに、思わぬ形で参入してきたのがトライアルGOです。
トライアルは西日本で大きな勢力を持つ総合スーパーで、西友を買収したことで東日本にも勢力を広げることになりました。ここで西友の店舗を旗艦店として周囲にサテライト型のミニスーパーを展開しようとするのがトライアルGOです。
まだ開店から半年ちょっとでまいばすけっとと比較すると集客に苦戦している感じはありますが、なんといっても強みになりそうなのがお弁当や総菜です。
実は私は西友がトライアルの傘下に入って以降、西友の弁当を購入する機会が激増しました。西日本に出張するたびに利用していたので知っているのですが、トライアルの弁当は美味しいのです。
そしてこの点は今後店舗数を拡大していく際にはトライアルGOの最大の強みになるはずです。まだ首都圏のミニスーパー戦争は始まったばかりなのです。
■食品スーパーに「ドンキ」も参入
もうひとつミニスーパーの可能性を挙げさせていただきます。
ドンキが新業態のロビン・フッドで食品スーパージャンルに新参入しました。いまのところ愛知県のロビン・フッド一号店は巨大な店舗でミニスーパーとは一見関係がなさそうに見えます。
しかし「驚楽の殿堂」を名乗る「楽」に関するロビン・フッドの商品はコンビニと利用者がかぶりそうです。具体的には精肉売り場で人気のそのまま焼ける「レモンペッパーチキンステーキ」や「プルコギ」などの半調理品、総菜売り場に並ぶ78円~のおにぎりや399円のロースかつ丼などの商品群を開発しています。
ドンキはトライアルと同じ武器を持っています。その前提でドンキは最近買収したオリンピックをロビン・フッドに業態転換させる方針ですが、さらにその周囲にミニスーパーを展開させればロビン・フッドもコンビニキラーになりえます。
結局のところコンビニがこれまで繁栄してきたのは、日本経済が強かった時代に生まれ、その後、長く続いたデフレ時代のおかげでコンビニの価格の高さを消費者が気にすることがなかったからではないでしょうか。
2020年代になって日本がインフレと実質賃金の低下の時代に入ったことで、コンビニ事業が利益を上げることが難しい時代になったのです。
■業界不調のなかの唯一の救い
最後にもう一枚グラフを見ていただきます(図表6)。
これはセブン‐イレブンの国内コンビニ事業のセグメント営業利益が四半期ごとに前年同期比でどう推移しているのかを示したグラフです。
「基本的に前年比100を超える四半期もあるからいいじゃないか」
と考える方もいるかもしれません。しかし投資家は利益が成長することを期待しています。そのペースとしては長期的に年率5%を超えて利益成長しなければ評価されません。
つまり今のセブン‐イレブンの国内事業はその成長性の低さから投資家に相手にされない水準にまで落ち込んでいるのです。
いいニュースとしては、もうセブンアンドアイを買収しようという敵対的な相手が当分出てきそうにないということぐらいなのかもしれません。
(初公開日:2026年6月24日)
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鈴木 貴博(すずき・たかひろ)
経済評論家
経済評論家。未来予測を得意とする。経済クイズ本『戦略思考トレーニング』の著者としても有名。元地下クイズ王としての幅広い経済知識から、広く深い洞察力で企業や経済を分析する独自のスタイルが特徴。テレビ出演などメディア経験も多数。
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(経済評論家 鈴木 貴博)

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