※なお、本稿は個人が特定されないよう、相談者のエピソードには変更や修正を加えている。
■お見合いで一発NGを食らう「臭い問題」
結婚相談所の婚活において、重要視されるのは、年齢、年収、学歴、ルックスなど、その条件は大事であるが、それ以前に大事なことはいくつかある。
その中の一つが、「臭い」問題である。
お見合いやデートで一発アウトになるのが、相手に不快な印象を与える「臭い」だ。鼻が曲がりそうになるほどの口臭や体臭を放つ相手からは、一刻も早く離れたくなる。
特に、GW明けの気温が高くなる季節から梅雨、そして夏には、「臭い」が原因でお見合い不成立や交際終了が頻発する。洗濯物の生乾き臭は、細菌が原因と言われているが、あの鼻につく臭いはたまらないし、時間がたった汗からは、高校時代の運動部男子部室のような臭いがする。
これは、男性側だけでなく、女性側にも起こりうることだ。
「急いでいらしたのか、汗びっしょりで汗臭くて、目も合わせることができなかった」
「きれいな格好なのに、彼女の口はドブのような臭いだった」
「前夜に焼き肉だったのか、スーツからひどい悪臭がした」
「彼のTシャツが、洗濯物の生乾き臭で、一刻も早く離れたかった」
「お見合いの席待ちで、横に並んでいる相手がヤニ臭くて、お見合いせずに帰りたかった」
これらは、実際にこの夏に寄せられた「臭い」にまつわる婚活者の声である。
婚活には「清潔感が大事」と言われて久しく、男性陣は徹底的に清潔感を意識している方が大多数だが、「くっさ~い」臭いの落とし穴にはまる可能性は、誰にもあるのだ。
■“ぽっちゃり男性”の婚活は苦戦しやすい
40代男性、大卒、建築設備工事士、年収600万円。身長172センチ、体重は100キロに限りなく近い。
子供のころから太っていて、彼女なし歴イコール年齢。そんな彼が、結婚相談所で婚活を始めた。結婚相談所では、健康面からも太った男性は避けられる傾向が強く、彼の婚活には苦戦が予想されていた。
プロフィールには、資産状況の記載欄はあるものの、あくまでも現在の名義人は彼の親。
となると、結婚相談所では、40代で年収が600万円くらいの男性は、中央値くらいの印象で、資産欄までチェックされなければ、体重が95キロと記載されていると、肥満と認識され、お見合いを組むのも容易ではない。
恋愛経験がないから、女性に気の利いたセリフを言えるはずもないし、まれにお見合いできてもなかなか交際にもならない。
■手応えを感じたお見合いでフラれてしまう
だが、彼には「清潔感は婚活には何より重要」ということは口を酸っぱくして伝えてあるし、彼自身が自分の体型は認識しており、汗をかきやすい体質から、常日頃から自分の体臭には、気を付けていた。
出かける前には、シャワーで汗を流すのは当然のこと、洗い立てのシャツを身に着け、出先で汗をかいたときのために、制汗シートは彼の必携品。口臭対策も万全で、念入りな歯磨きや、小袋入りのマウスウオッシュもポケットに忍ばせてある。
彼にとっては、成立したお見合いは貴重で一件一件、全力で臨む。
なにしろこれまで組めたお見合い4件、連敗中。先方からのお断り理由は、「写真より実物のほうが太っていた」「一方的におしゃべりされた」「会話が弾まなかった」「結婚をイメージできなかった」であった。
過去のお断り理由を教訓に、今度こそ! という気持ちは誰よりも強い。決まったお見合い相手は、体重80キロのぽっちゃりとした体型の39歳の女性で、並ぶとお似合いな印象になりそうな相手である。お見合いが済んで、彼からの報告が入る。
「うまくいきました! こちらが話しすぎることも、沈黙もありませんでした。交際希望します!」
今までより手ごたえがあったという明るい電話だった。ところが、先方からの返事はお断りであった。
■敏感すぎる…「柔軟剤の香り」がアウトになることも
お断りの理由には『香水の臭いがキツくて』と記載されていた。
あまりにもお断りばかり続いて、まさか香水までつけてお見合いに行ったのだろうか? 香水なんか、彼にはまるで似合わないのに。
「香水をつけてお見合いに行ったの?」彼に質問すると
「香水などというものは、人生のこれまで一度も付けたことはございません」との回答。
なぜだ? 香水の原因を突きとめたくて、彼を呼び出した。
そこで「香水」と言われたものの原因を知ることとなる。それは、「柔軟剤」の香りであった。彼から、洗濯したての柔軟剤の香りがして、これを香水だと勘違いされたのだ。汗臭い体臭はいやだが、洗濯で使う柔軟剤までもに、婚活の場面では注意が必要であるということを初めて知ることとなった。
こうした臭いによる、婚活の失敗は、本人が意識していけば解決できることである。
ではこの臭い問題についてどのように対策をしたらよいのか。
まずは「口臭」について。
毎日の念入りな歯磨きは前提として、歯科の定期診断を受けること。歯が痛いとかの事情がない限り、日本人は歯科医に行かない方が多いが、定期的に歯科に行き、歯槽膿漏や虫歯チェックと同時に、歯のクリーニングを行うこと。前日にニンニクやネギなどの臭いの強いものを食べないこと。
喫煙者は禁煙を心がけること。
■すべてが完璧でも、臭いで台無しになってしまう
「体臭」については、身体の清潔は言うまでもないが、使う石鹼やシャンプー類も、香りの強いものは避けること。
衣類は、洗濯、クリーニングしたては当然、洗濯物の柔軟剤にも無香料を選ぶこと。自分が着た服の臭いをチェックしてから出かけること。
汗は時間が経つと嫌な臭いを発するので、こまめに汗を拭くようにし、時間に余裕があれば、現地に着いてから、制汗シートなどで汗を拭きとり、汗がひくのを待つこともできるので、ゆとりを持って出かけること。日ごろから、適度な運動や、野菜や海藻などを取り入れた食生活で、腸内環境を整え、おならの発生を抑制すること。
年齢、年収、学歴、見た目、すべてが完璧だとしても、臭かったら何もかもが台無し。
お見合いやデートで、相手によりよく自分を見せたいのは当然だが、どんなに素敵な装いも、ダイエットで手に入れたスタイルも、体臭や口臭はすべてを奈落の底に突き落とすパワーを持っている。
だから臭い対策の大事さは言うまでもない。
臭い問題は、汗をかく夏だけに起こることではない。季節を問わずリスクはある。デート先で訪れた店が、靴を脱ぐ店で、強烈な足の臭いに100年の恋も冷めたという話はあちらこちらで聞く。
臭い問題は、男女ともに目を背けてはならない課題なのである。
加えて婚活の場面では、男女ともに、香水はつけないことも併せておすすめしたい。好きな香りは十人十色。どんなにお気に入りの香水も、相手には不快な香りである可能性もある。
臭いケアは、婚活の場はもちろん、人と関わる際のすべてにおいての必須マナーなのである。
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大屋 優子(おおや・ゆうこ)
結婚カウンセラー
1964年生まれ、株式会社ロックビレッジ取締役。ウエディングに特化した広告代理店を30年以上経営のかたわら、婚活サロンを主宰。世話好き結婚カウンセラーとして奔走。著書に『余計なお世話いたします 半年以内に結婚できる20のルール』(集英社)がある。
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(結婚カウンセラー 大屋 優子)