※本稿は、山本久美子(じママ)『人生が圧倒的にラクになる! 夫婦ONE TEAM思考』(講談社)の一部を再編集したものです。
■誰よりも最優先すべきはパートナー
ワンチームの夫婦はパートナーを最優先に考えます。それができると、意見のすり合わせが円滑になるだけでなく、結果として子どもや実家、友人に対する時間配分や優先順位のつけ方、物事の判断が非常にシンプルになり、家庭内が安定していきます。
そして「自分のことを一番に考えてくれている」というパートナーに対する絶対的な安心感と信頼関係が生まれます。心が安定し、お互いに耳を傾け合えるので、円滑な話し合いもできるようになるのです。
帰省した時、夫が実母を優先し、「悪いけど折れてくれ」と言われた妻がモヤモヤするケースは、よく耳にすると思います。
これは、その場を円満に終わらせようとする小手先の対策なので、誰も幸せになれません。実の親を大切にしたい気持ちもわかりますが、誰よりも耳を傾けて大切にしないといけないのは、人生100年を共に生きていく、いま隣にいるパートナーです。
この状況では、「自分の味方をしてくれない」と信頼関係が薄れていき、やがて相手の両親に優しくできなくなっていくという負の連鎖が起こっていくでしょう。
これは男性側だけの問題ではありません。
■義実家へ行く頻度や距離感も見直していい
妻が毎週末、なんの予定もないのに実家に遊びにいくのが嫌だとか、妻の両親が頻繁に孫を見にきて疲れるという声も聞こえてきます。
しかし、「親が子育てを助けてくれるから」と妻に言われると、何も言えなくなってしまうし、娘をサポートしてあげたいという義父母の善意もわかるからこそ、断ることに後ろめたさを感じてしまうのです。帰省問題も同様です。
誤解してほしくないのは、親子の関係を断絶せよと言っているのではなく、頻度や期間の見直しなど、できることをしましょうということです。大事なのは、パートナーの本音を聞いて、その意見を最優先に受け止めること、そして歩み寄る姿勢を持つことです。
特に日本人は他人を重んじる風習があるので、すべての人に良い顔をしてしまいがち。そのため、他人との関わりに対しても優先順位をつけていくことが苦手です。だからこそ「パートナーを最優先に考える」というルールができていると、物事はとてもシンプルかつスムーズに進むようになります。
そしてもう一つ、夫婦間で問題になりがちなのが「パートナーの趣味」です。
■うまくいく夫婦はお互いの意見を一番に聞く
週末は家族で過ごしたい、子どもの面倒を一緒に見てほしいと思う一方、独身時代から続けているフットサルや釣り、友人との飲み会等に出かける夫、推し活やママ会に奔走する妻……と、家庭内にモヤモヤがたまっている家庭も少なくありません。
この問題の解決法も至ってシンプル。「パートナーの意見を最優先に聞く」ことです。
独身時代のルーティンを貫くことに、夫婦共に心の底から合意できているならば問題ありませんが、どちらかが納得いっていない場合は見直す必要があります。
趣味に限らず、会いたい友人がいたり、息抜きしたいと思うこともあるでしょう。行きたい理由を説明し、パートナーの納得が得られればなんの問題もありません。多くの場合、パートナーの趣味そのものが嫌なのではなく、話し合いがなされていない中で、当たり前のように継続されていることにモヤモヤを抱えているだけなのです。
うまくいっている夫婦は、夫婦が最優先という前提のもと、「月に○回は行ってもいいけど、その代わり日曜日は家族の時間にあててね」等の夫婦会議をして、落とし所を見つけているケースが多いようです。
■夫婦でも100%察することはできない
夫婦ワンチームの我が家には、「察することを求めない」というルールがあります。「言わなくてもわかってほしい」「気づいてほしい」をやめて、何かしてほしいことは必ずその場で口に出して伝えることを徹底しています。
夫婦でも、相手の思っていることを察して100%理解するのは難しいです。ここで、ある共働きの「察して夫婦」のやりとりを見てみましょう。
〈帰宅前〉
夫(今日は特に疲れたから家でゆっくりしたいな)
妻(重要な仕事が残っているから、夫に子どもの寝かしつけを代わってほしいな)
〈帰宅後〉
夫「あー、今日は本当に疲れたなぁ」
妻(疲れてそうで言いにくいなぁ。でも私の仕事もあるし……イライラモヤモヤ)
夫「あれ、なんか怒ってる?」
妻「別に……」
ここでの問題は、対話をせずに、表情や態度で「ゆっくりしたい」「手伝ってほしい」をアピールしていることです。それぞれの背景を説明しないことが原因で、コミュニケーションがうまくいかない結果になっています。
■やってほしいことは冷静に伝える
我が家の場合、どうしても時間が欲しい時は私がLINEし、その時間を作るための選択肢を夫に提供します。
例えば、①夫に早く帰ってもらって子どもの寝かしつけをしてもらう、②片付けがラクな食事を外で買う、③その他に良いアイデアはないか、というように、相手の時間を借りられるか、時間をお金で買ってもいいかを相談するという形です。
それに対して夫が「今日は早く帰れそうにないから②にしよう」と返事が来ると、お互いが納得した状態になります。相手に対して手伝ってほしい、代わってほしいという気持ちは、多かれ少なかれ誰にでもありますが、それはあくまでも自分目線の要望です。その瞬間に相手がどういう状況で、どんな気持ちなのかを確かめ合うことで、着地地点がより明確になっていきます。
しかしながら、違和感をその場で相手に伝えるというルールを定着させることは簡単ではありません。私自身もワンチームの夫婦を構築するにあたり、この作業が何より一番大変でした。
「察して」をやめるには、やってほしいことを面と向かって冷静に伝え、加えて、言われたことを受け止めなければなりません。この「本音を面と向かって伝える」ことが苦手だった私にとっては、そのことがストレスでしかありませんでした。
■まずはメールや手紙で少しずつ伝えていく
そんな私が「察して」をやめることができたのはどうしてか。
それは、まずはメールや手紙を用い文章に落とし込むことで、頭の中を整理して伝えることができるようになっていったからです。そしてそれを重ねていくにつれ、少しずつ対面で本音を言い合えるようにもなっていきました。
ストレスを感じなくなるまでに半年ほどかかりましたが、その後は結婚して約9年、本音を言う・伝えることに対してモヤモヤやイライラはほとんどありません。
そしてもう一つ大切なことは、「言われた言葉をその言葉通りに受け取ること」です。例えば、「ありがとう」と言われたら、感謝しているという意味でしかなく、「今の言い方は怒っているな」と言葉の裏側を勝手に推測する必要はありません。上司や友人との間では推測や察する作業も必要かもしれませんが、夫婦の間では不要です。
さらにもう一つ大切なのは、「後出しじゃんけんをやめる」ことです。「あの時こうしてほしかった」「あの時、本当はこう思っていた」というように過去の話を持ち出すことは厳禁。
過去のことは変えられないし、その時に言われないとどうにもできないことが多く、建設的な話し合いができなくなってしまうからです。
■具体的に言語化するとモヤモヤは軽減する
ある程度話し合える関係になったのに、なぜかモヤモヤが消えない、話が噛み合わないという夫婦は、「共通言語化」ができていないのかもしれません。
中でも厄介な言葉が「なんでもいい」です。本当になんでもいい場合は別として、大抵の「なんでもいい」の裏側には、「俺(私)の好みはわかってるでしょ」「察してね」という意味が込められています。
夫婦間では「希望を相手にわかりやすいように言語化し、共通認識を持つこと=共通言語化」を意識することが重要です。
では具体的に「共通言語化する」というのは、どういうことでしょうか。それは、曖昧な言葉を使わず、相手がわかりやすい表現で伝えるということです。例えば、早く家を出たい夫が、化粧をしている妻に「いつ終わるの?」と聞き、妻が「もう終わるから」とイライラした空気になることはありませんか?
これは、「もう終わる」の時間の感覚が夫と妻とで食い違っているのが原因です。「あと10分」と「共通言語化する」ことで解決されます。10分とわかれば、待つ夫も自分の用事ができるかもしれないし、心構えもできます。
これを繰り返していくことで日々の険悪なムードやイライラモヤモヤをだいぶ軽減できるはずです。
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山本 久美子 (やまもと・くみこ)
ジーアンドアーク代表
1985年生まれ。「夫婦ONE TEAM」を目指すオンラインサロン「G's Community」や、生涯ワンチームでいられるパートナーに出会える結婚相談所「G's Agency」を主宰し、夫婦ONE TEAM思考の普及に努め、人生100年を夫婦で乗り切るためのコンサルティングを行う。「何でも話せる赤の他人のママ友」をキャッチフレーズに、夫婦ワンチーム思考や子育て情報を発信するInstagram(アカウント名:じママ/@gmamanoikuji)はフォロワー14.8万人(2025年3月11日時点)と子育て世代の夫婦から絶大な支持を集める。夫・小1の長男の3人家族。
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(ジーアンドアーク代表 山本 久美子 )