JFL3位のヴィアティン三重の新戦力3選手を取材!実力者をそろえて三重初のJリーグ加盟へ
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日本フットボールリーグ(JFL)が中断期間を終えて今月31日に後期リーグ戦を再開する。三重県初のJリーグ加盟を目指すJFLヴィアティン三重は勝点30で3位に位置している。

昨季からJ3とJFL間の入れ替え制度が始まり、Jリーグライセンス保有チームが1位に入った場合はJ3最下位(20位)チームと自動入れ替えが行われ、同ライセンス保有チームが2位に入った場合はJ3の19位チームとホーム&アウェー形式の入れ替え戦が実施される(ライセンス未保有チームが1位で、ライセンス保有チームが2位入りの場合はJ3最下位チームと入れ替え戦を実施)。

現在同リーグの1位は高知ユナイテッドSCが勝点43で快走し、2位は今季関東社会人1部から昇格した栃木シティFCが勝点33で三重と勝ち星1差デッドヒートを繰り広げている。

今夏三重はJリーグ経験者4選手を含め計6選手を獲得し、後期リーグ戦に向けて戦力を増強している。新戦力を揃えた三重に取材へ赴き、新戦力の実力に迫った。

(取材・撮影 高橋アオ)

J1経験の実力派ストライカー

今夏にJ3のFC岐阜から期限付き移籍で加入したFW山内寛史はこれまで岐阜、セレッソ大阪FC町田ゼルビアモンテディオ山形でプレーしてきた大型ストライカーだ。J1でのプレー経験もあるベテランはサイドバックなどもこなせるユーティリティ性を誇り、昨季はJ3で20試合6得点とキャリアハイの活躍を見せた。

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間瀬秀一監督は「いままでヴィアティンにいなかった大型ストライカーですね。ボールを収めたり、起点作りからゴールを狙いにいく場面で力を発揮できる選手だと思うので期待しています」と太鼓判を押した。

相手の逆を突くオフザボールの動き出しを生かしたラインブレイク、難しい態勢からでもアクロバティックなゴールを狙える得点感覚、183センチの高身長を生かしたポストプレーや空中戦の強さと、万能型ストライカーの実力に期待が高まるばかりだ。

山内は「僕が前で時間を作ってチームのみんなに楽をさせたいですね。前向きに攻撃ができるように、前進できるようにと時間を作る部分が僕の特徴としてチームに貢献できるんじゃないかと思います。FWなので点を取るところで直接的に勝てるようにしたい。僕は昇格するために来たので、その部分で結果を残して貢献したいです」と意気込んだ。

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東海地方を愛する山内は、三重からのラブコールを受けてシーズン途中の期限付き移籍を決断した。真面目で献身的な選手がそろうチームにはフィットしてきており、新天地で情熱を燃やしながらプレーしている。

「これからこのチームが勝っていくために僕の力を還元しないといけないという思いが強いです。中断明けでもう1段階ギアを上げて、複数得点を取って勝つところは共通認識を持ってみんな練習をやれていると思う。得点を取るために僕は呼ばれたと思っています。得点を取って勝つところを僕のタスクとして表現できるようにやっていきたいです。僕が出場できる最初のチャンスはホームですから、直接ホームで(サポーターに)僕がどんな選手なのかを分かってもらえるように頑張りたいです」とデビューに向けて闘志をたぎらせていた。

身長161センチのアサシン

先月14日にJFLラインメール青森を双方合意の上で退団したMF青木駿汰は先月25日に三重へ加わった。JFL出場数は通算5試合と少ないが、運動量とスピードを併せ持ったアタッカーだ。相手の虚を突いた2列目からの抜け出し、マークを外す技術、ウイングバックやサイドバックもこなせるポリバレントな才能も持ち合わせる。

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練習中に素早い寄せを見せた青木駿(右)

指揮官は「駿汰はボールを受けるために何度もポジションチェンジや動き直しができる。見本になるような選手になると思います。小さい選手の強みをしっかりと持った選手なのでチームに貢献してもらいたいです」と期待を寄せた。

実直かつ真面目な人柄であり、攻守で手を休めるシーンはほぼ見られない。身長161センチとチーム最小サイズだが、相手からすれば対応しづらいサイズ差なためペナルティエリアに侵入されれば厄介極まりない。ゲームから消えるように動き出し、突如チャンスシーンに顔を出すプレーはアサシン(暗殺者、刺客)そのものだ。

青木駿は「背後の抜け出し、推進力が自分の武器。そこを何回も出して、複数得点に絡めればと思っています。この時期の加入なので求められていることは結果だと思います。チームが求める複数得点というところでも、どんどん絡んで勝利数を増やして、優勝・昇格に貢献できたらと思います」と意気込んだ。

三重といえばJFL屈指の熱いサポーターであり、統率の取れたコールリードやチャントはJリーグクラブのサポーターと比較しても負けない熱さがある。取材時は8月上旬と入団して間もなかった背番号23だったが、サインなどのファンサービスにも取り組んだ。

「サポーターの熱量をすごく感じて、温かいチームだと思います。選手もストイックで真面目な選手も多い印象を受けていて、毎日がすごくいい刺激になっています」と新チームでのプレーに喜びを嚙みしめている。

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三重の宿敵であるJFLアトレチコ鈴鹿クラブには金沢星稜大(石川)時代に北信越大学1部リーグで競い合ったMF濱名真央(J3松本山雅FCから期限付き移籍、松本大出身)が在籍している。


「大学時代からライバル的な関係でしたね。三重に2つのチームがあるので、本当の意味でライバル的な関係性だと思う。リスペクトしつつもしっかり勝って倒したいです」と宿敵からの白星奪取を誓った。

ブラジル帰りのチャンスメイカー

今月5日にJ2モンテディオ山形から育成型期限付き移籍で三重に加入したFW荒川永遠(とわ)は、今年1月からブラジル4部CRアトレティコ・カタラーノへ期限付き移籍していたブラジル帰りのチャンスメイカーだ。縦の突破に定評があるプレースタイルであり、敵陣を切り裂く推進力あふれるドリブルとスプリントに優れている。相手の接触があっても崩れないボディバランスとゴール前でのチャンスメイクも秀逸だ。

JFL3位のヴィアティン三重の新戦力3選手を取材!実力者をそろえて三重初のJリーグ加盟へ
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間瀬監督は「彼の経歴からしても海外に行っていたこともあって、日本のサッカー界だと簡単にはいないタイプ。周りとはリズムが違ったり、感覚が違う部分がある。もちろんチームとしての方向性・決め事はあるものの、そういう自分らしさを思い切ってヴィアティンで発揮してもらいたいですね」と攻撃のアクセントを期待している。

CRアトレティコ・カタラーノ復帰時に山形のリリースを通じて「正直この半年間はいままでで1番辛かったし、何度も折れそうになりましたが、その分選手として、人として確実に成長した半年間でした」と話すように、ブラジルでは挫折も経験したという。興国高(大阪)時代は技術、身体能力に定評のあった逸材だったが、ブラジル挑戦は一筋縄でいかなかったようだ。

「人生で1番苦しんだ半年間でした。

向こうの選手はいい意味でリスペクトがないし、日本人を潰してやろうという選手が多かったです。練習からすごく厳しいし、服の引っ張り合いや胸ぐらつかみ合いだったりと、いろいろ経験しましたね。日本とはサッカーも違いますし、能力も違いを感じました」と経験を吐露した。

JFL3位のヴィアティン三重の新戦力3選手を取材!実力者をそろえて三重初のJリーグ加盟へ
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それでも異国で得た新しい武器がある。志半ばで日本へ帰還したが、ブラジルでの挑戦を失敗とは言わせない。新天地三重では南米で成長した実力をピッチ上で証明する。

「ブラジルで人をはがす力も付けましたし、そこからドリブルで運んで強引に持っていくプレーも身に付けました。正直ブラジルで結果を残して、レベルアップして山形に帰って活躍したい思いがあった中で、帰国することになりました。その中で、自分を必要としてくれるチームがあったことにすごく感謝しています。責任を持って自分がチームを勝たせる思いで試合に臨みたいです。ここで(三重を)J3に昇格させたい思いがあります」と言葉に力を込めた。

上記選手以外にJ3奈良クラブから期限付き移籍でMF桑島良汰、関東社会人1部ジョイフル本田つくばFCから完全移籍でMF青木竣、J3テゲバジャーロ宮崎から期限付き移籍でFW上野瑶介を獲得した。

桑島はJ3・FC今治時代にセンターフォワードを務めて2020シーズンに32試合5得点2アシストを記録し、現在は攻撃的MFやウイングを主戦場とする技巧派アタッカーだ。青木竣は左サイドバックを主戦場とする両利きサイドバックで、つくばの主力として昨季地域チャンピオンズリーグ出場へ導いた実力者。上野は順天堂大でセンターバックからセンターフォワードへコンバートし、身長180センチの高身長と身体能力を生かしたダイナミックな攻撃に定評がある。

攻撃に特徴がある6選手を加えた三重は、攻撃の改善に努めて後期リーグ初戦の栃木シティ戦(31日午後6時、三重・東員町、LA・PITA東員スタジアム)に臨む。首位と勝点13差を付けられ逆転優勝の道は険しいが、三重県初となるJリーグ参入を目指すチームは困難なミッションを達成する覚悟を持っている。ここから反撃を見せる三重の逆襲から目が離せない。

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