「トランプ関税」で中国から機械を輸入し、米国内で生産設備の設置や拡張を目指すメーカーが特に切迫した状況に置かれている、と米ブルームバーグ通信が報じた。工場の建設・拡張こそがトランプ氏が関税政策の最終目標として掲げた「MADE IN USA」の復活に直結しているにもかかわらずだ。
ブルームバーグ通信によると、ここ数カ月で180社以上が1100件を超える関税除外の申請を提出。中国製機械の輸入を通じて米国内の産業計画を実現したいと望んでいる。
申請企業は米電気自動車(EV)メーカーのテスラや自動車メーカーのフォード・モーター、日立製作所の傘下企業といった大手から、工業用ミシンを扱うオハイオ州の中小企業まで多岐にわたる。多数の免除申請は関税に対する不満の広がりを見せている。
トランプ政権入りしたイーロン・マスク氏がCEOとして率いるテスラでさえ、3月31日に提出した申請4件のうちの1件に「米国内の製造能力を高めるため適用除外を求める」と記述。「製造設備への関税除外は米国の製造業や中国が戦略的関心を持つ可能性のある産業の発展を促進・加速させる」とも主張した。
フォードはミシガン州のバッテリー工場を来年までに稼働させるために必要な機械の輸入について、12件の関税除外申請を提出している。
米供給管理協会(ISM)が1日発表した4月の指数は製造業活動の縮小を示した。低水準の受注残と関税の影響が重なり、2020年以来で最も深刻な生産縮小となった。
政権側もメーカーに対する優遇措置や関税除外の必要性を認めている。ベッセント財務長官は米国内に建設した建物や施設の費用を全額控除できるような税制優遇を提案しているが、輸入する機械に関税が課せられればその効果も損なわれかねない。
全米製造業者協会(NAM)によると、米国への輸入品の約60%は製造用の部品や素材などだ。
工場稼働に必要な設備に関しては計画に不確実性が重くのしかかっていることを踏まえ、NAMで政策担当のマネジングバイスプレジデントを務めるチャールズ・クレイン氏は「適用除外は極めて重要だ」と訴えた。
シンガポールの研究機関ヒンリッチ財団の貿易政策部門責任者デボラ・エルムズ氏は「製造設備の輸入に対する関税除外は最終的には不可避になる」と予想。「米国の関税政策の目的の一つが製造業の国内回帰である以上、その達成を目指す企業の前に追加の関税という障害を設けるのは合理的ではない」とした。(編集/日向)