2025年6月1日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版は、ミャンマーで盛んにレアアース採掘が行われている一方で、その手法が環境汚染を招くものであることを報じた。

記事は、ミャンマーのカチン州でここ数年レアアースの採掘量が急増していることを紹介する一方で、採用されているインシチュリーチングという手法が環境破壊を招いていると紹介。

硝酸アンモニウムなどの化学物質を注入してレアアース鉱物を抽出するインシチュリーチング法では化学溶液が地下を流れるため川の水が汚染され、かつて緑豊かだった山々が「非常に醜い姿」に変わってしまっているとした。また、採掘場付近からは「30分も滞在できないほど」の異臭が漂っており、現地住民の生存にも大きなリスクを生んでいると伝えた。

さらに、劣悪な労働環境による人権問題も生じていると指摘し、会社が適切な防護措置を提供せず、鉱山労働者が手袋やマスクなどの保護具を装着しないまま作業を行い、病気にかかれば解雇されるという不当な扱いを受けているとも指摘した。

記事によると、ミャンマーで採掘されるレアアースは多くが中国に輸出されており、国際NGOグローバル・ウィットネスの報告では、ミャンマーからの重レアアース元素の中国への輸入量は2021年の1万9500トンから23年には4万1700トンに急増し、23年の取引額は14億ドル(約2000億円)と推定されたという。トヨタや日産、フォルクスワーゲンなど主要自動車メーカーや風力発電会社の調達元となっている中国の永久磁石企業はミャンマーからレアアースを調達しているとのことだ。

ミャンマーの環境保護活動家や人権活動家は、現地で行われている採掘プロセスが国際的が広く認知された上で支援を受けられるようにすること、国際社会が責任ある方法でレアアースを調達することを強く訴えているという。

記事はさらに、カチン州でのレアアース採掘が独裁政治や内戦といった政治的な影響を強く受けていることにも言及。18年には文民政府がレアアース輸出を禁止したものの、21年の軍事クーデター後に採掘や中国への輸出が再開されたとした。

また、昨年末にはカチン独立機構(KIO)が中央政府から鉱産資源地域の掌握権を奪って以降も、監督管理が行われていない採掘活動によって環境破壊が進み、生態系や人類の健康への脅威が日増しに高まっている状況だとする環境保護団体の報告を紹介。環境活動家らが採掘政策に対する国民の監督強化、国際機関や各国政府による支援のもとでのガバナンス強化の必要性を訴えていることを伝えた。(編集・翻訳/川尻)

編集部おすすめ