中国には、「全民健身日(全国民フィットネスの日)」という記念日がある。その主旨は、日本の「スポーツの日」に近いだろう。

国民の健康促進を目的として政府が主導し、全国的にさまざまなスポーツイベントが展開される日である。中国では、2008年北京オリンピック開幕の日を記念し、毎年8月8日を、全国民が参加する全国的な記念日として政府によって定められた。中国では、運動は個人の趣味や関心にとどまらず、国家と社会全体が積極的に関わる重要な公共政策の一環となっている。

今、中国の公園や団地のコミュニティ広場では、高齢者が太極拳でゆったりと体を伸ばし、若者は汗を流してランニングに励み、子どもたちはボールを追いかけて無邪気に遊ぶ光景に出合える。人々は思い思いに運動やスポーツに没頭しているのだ。

この8月8日という日付は、前述の通り、2008年の北京五輪開幕という歴史的瞬間に由来する。政府はこの日を「全民健身日」と定め、スポーツにおける国家の重心を大きく転換させた。つまり、競技で金メダルの栄光を追い求めることよりも、14億人の国民が等しく健康である権利を保障することへと軸足を移したのである。「全民健身日」の核心にあるのは、「健康は全国民一人ひとりの基本的な権利であり、国はそれを平等に実現するために具体的な行動をとる」という理念だ。

この日には、多くの運動施設が無料で開放される。湖北省を例に挙げてみよう。省内では今年、185の公共体育施設が無料開放され、200以上のイベントが行われた。

内容は、広場ダンスや太極拳など20以上の種目にわたり、あわせて100万人が参加する見込みだ。それは都市部だけに止まらない。農村部でもさまざまな活動が展開される。浙江省安吉県では、500人以上の住民が参加する「蛍光ナイトウォーク」というイベントが実施され、3~6キロの「夢の歩道」でウォーキングやジョギングを楽しむ。地元政府は152のスポーツ施設を利用し、マラソンや乗馬などの専門的な競技をだれもが参加できる「スポーツ福袋」に再構成し、全年齢層に運動の機会を提供している。また、科学的なフィットネス知識の普及を目的に、国家オリンピックセンターでは体力測定や中医学治療の無料相談が行われ、ナショナルチームの選手が現場で直接指導にあたるという。さらに武漢市、十堰市などの都市では体力測定サービスが展開され、健康管理を人々の日常生活に根付かせようとしている。

こうした取り組みの成果は、データにも明確に表れている。2025年までに、中国で新設・改修されたスポーツ公園などの施設は2000カ所を超え、都市部以外の郷・鎮でも5000カ所以上のフィットネス施設が整備された。公共のフィットネスサービス体制は都市・農村を問わず全国に広がり、「15分圏内に運動できる環境(15分健身圏)」が現実のものとなっている。

たとえば、北京市の国家オリンピックセンターでは、2025年現在、1日あたり60件以上のイベントが開催され、延べ1万7000人が参加している。強く健康な体は特権ではなく、一人ひとりの幸せの礎であるという「全民健身日」の理念は、今や広く浸透している。

全年齢層の国民が積極的に運動に参加しているのが、現在の中国の姿である。

今年、大きな注目を集めている江蘇省の都市サッカーリーグ(蘇超)は、政府主導のもと、民間との協働により実施されたスポーツイベントの成功例である。国民全員が低いハードルで参加資格を獲得できることが特徴で、実際、出場選手の主力は、教師や宅配員、プログラマーなどといった一般市民で構成されている。まさに、「身近な人がサッカーをする」親しみやすさを体現するものだ。同リーグは、「15分健身圏」のインフラを活用し、試合会場を地域や農村にまで拡大。同時に「サッカー+文化観光」のセット展開により、スポーツと消費の好循環を生み出している。2025年の「全民健身日」には、塩城市で「蘇超と共に歩む」をテーマにした市民向けの交流イベントが企画されており、体力測定や世界チャンピオンによる指導を通じて、蘇超への関心を全国民の運動意欲へと転化させようとしている。

十億を超える人々が体を動かすことで、国家の発展は最も強固な細胞を得ることになる。フィットネスは今や中国において大規模な社会活動となっている。中国政府の「全国民フィットネス計画」では、2025年までに定期的に運動する人の割合を38.5%に、2035年までに45%に引き上げるという目標を明確にしている。これは単なる数字の問題ではなく、「健康中国」戦略の中核をなす理念であり、国家の隆盛は、国民一人ひとりの健康と活力に起因するという考えが根底にある。

「全民健身日」は、単なる運動奨励の記念日ではない。

それは、健康という権利を万人に行き渡らせる象徴であり、健康は少数者の特権ではなく、すべての人が等しく持つ権利だという国家の意思の表れだ。14億の国民が、自らの健康のために動き出すとき、その膨大な活力こそが、この国にとって最も現実的で、最も感動的な生命力となるのである。(提供/CRI)

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