「東野圭吾文学創作と国際的影響を考える追悼座談会」が17日、東京都内で開かれた。日中両国の研究者や出版・メディア、コンテンツ産業の関係者、文学愛好家らが集まり、先ごろ死去した作家、東野圭吾氏をしのんだ。

作品の中国での受容や映像化を振り返るとともに、国際的な文化発信、人工知能(AI)時代の文学創作、国際著作権取引などについて意見を交わした。

座談会は東京学術フォーラムが主催し、日本華人教授会議が協力した。清華大学教授で映画プロデューサーの崔保国氏、講談社「現代ビジネス」編集長の阪上大葉氏、東北文化学園大学教授の王元氏、日本華文女性作家協会会長の王一敏氏、杏林大学客員教授の劉迪氏らが出席し、発言した。

東野氏は今年7月23日に68歳で死去した。『白夜行』『容疑者Xの献身』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』など数多くの作品を発表し、日本だけでなく中国をはじめとするアジア各国でも幅広い読者を獲得した。作品は多くの言語に翻訳されている。

東野作品の中国での出版や映像化に長年携わってきた崔氏は、自らの経験を交えながら、著作権の導入から翻訳・出版、映画化に至る過程を振り返った。中国では東野作品が文学出版の枠を超え、映画など多様なコンテンツへと展開したと説明。3年連続で中国のベストセラーランキング首位となるなど、文学、出版、映像が相互に連動する形で広がったと指摘した。

日中の文化関係者、東京で東野圭吾氏を追悼

『容疑者Xの献身』は韓国や中国などで映画化された。2017年公開の中国版は興行収入が4億元(約80億円)を超えた。出席者からは、同じ物語を異なる社会で映像化する際には、原作の精神と著作権を尊重する一方、登場人物や舞台設定、物語の表現を現地の文化や社会に合わせることが重要だとの意見が出た。

日本の小説がなぜ言語や国境を越え、中国をはじめアジアの読者に受け入れられたのかについても議論した。東野作品は推理小説としての巧みな構成や娯楽性だけでなく、家族関係や社会生活の重圧、人間関係の疎外、善悪の選択や倫理的葛藤といった現代社会に共通する問題を描いているとの見方が示された。現代人が抱える問題と人間性への洞察が、作品の国際的な受容を支える一因になったという。

文学作品の翻訳、出版、映像化を通じ、各国の読者や観客は登場人物の生活や感情、選択を手がかりに異なる社会への理解を深めることができる。こうしたコンテンツの往来が、日中両国を含むアジアの文化交流に新たな可能性をもたらしているとの指摘もあった。

日中の文化関係者、東京で東野圭吾氏を追悼

生成AIが文学やコンテンツ産業に与える影響も主要なテーマとなった。生成AIは翻訳や編集、脚本制作、映像制作などの手法を変え、言語を越えた作品流通の可能性を広げる一方、作品の独創性や著作者の権利、国際的な著作権取引など新たな課題も生んでいる。技術が文学の制作・流通方法を変えても、生活への観察や社会への理解、人間性をめぐる問いは文学にとって引き続き重要だとの認識で一致した。

出席者は、東野作品の中国やアジアでの広がりは、作家を追悼するだけでなく、日中文化交流のあり方を考える一つの事例になると指摘した。1冊の小説の翻訳・出版から映像作品の国際共同展開、さらにAI時代の創作や著作権協力へと文化交流の形は変わりつつある。文化的な違いを尊重しながら共通する感情や価値への関心を見いだし、アジアの文化的価値を改めて捉え直すことが、今後の交流の課題になるとの意見が出た。(取材/紀雅琦)

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