2026年9月29日、韓国・ハンギョレ新聞は「ソウル市が高齢者の都市鉄道無料乗車の対象年齢を65歳から70歳に引き上げる案を進めている」と伝え、日本の同様の制度「シルバーパス」と比較する記事を掲載した。

東京都に住民登録している満70歳以上の高齢者は「東京都シルバーパス」の対象となり、都営交通や都内民営バスなどを年間最大1万2000円で利用できる。

所得が少なく住民税が非課税の人や、年間所得が135万円以下の場合は、1000円で利用できる。2023年時点で、シルバーパスの発行者は103万人に上る。これは東京都の70歳以上の高齢者の41%に相当する。同年、シルバーパスに充てられた東京都の予算は190億円、利用者の負担額は30億円規模だったという。ハンギョレ新聞の記事は「少なくない費用がかかるものの、シルバーパスの効果は大きい」と指摘した。

東京都が実施したシルバーパス利用者に関する調査で最新の資料となる「2018東京都シルバーパス関連調査」によると、高齢者は買い物(62.3%)、通院(56.4%)、趣味活動(38.4%)、地域活動(13.3%)など、さまざまな目的でシルバーパスを利用していた。都には、「母は元気なのに家にいる時間が増えていた。シルバーパスを受け取ってからは、毎日のように楽しそうに外出している。この良い制度を末永く維持してほしい」といった声も寄せられるという。記事は「高齢者への交通支援は、単なる移動手段として高齢者の生活を支えることにとどまらない」と強調している。

厚生労働省は2024年の「介護予防・日常生活支援総合事業」指針で、「高齢者が自立した日常生活を送るためには、移動や外出への支援が重要であり、特に社会活動への参加は、高齢者に生きがいを与えるとともに、社会的な介護予防にもつながる」としている。移動能力の低下によって外出が減れば、社会的孤立や身体機能の低下につながり、高齢者本人だけでなく社会全体の負担も増えるという考え方だ。

こうした背景から、一部の地方自治体では支援対象となる年齢を引き下げ、高齢者をより幅広く支援しようとする動きが出ている。記事は秋田市、名古屋市などのこうした取り組みを紹介している。

一方、札幌市や京都府のように、人口減少や少子高齢化、世代間の公平性などを理由に、支援対象年齢を70歳から75歳へすでに引き上げた、あるいは段階的に引き上げている自治体もあると伝えている。

日本より速いペースで超高齢社会に入った韓国でも、「65歳以上の高齢者を対象とした都市鉄道の法定無料乗車制度」が始まって40年以上が経過している。1980年の施行当初は70歳以上の高齢者に地下鉄などの交通料金を50%割引する制度だった。1982年から対象年齢が65歳に引き下げられ、1984年には地下鉄の割引率が100%に引き上げられるなどの変遷を経て、現在は65歳以上の高齢者が都市鉄道を無料で利用できる制度となっている。

しかし、最近ではソウル市が日本のように対象年齢を65歳から70歳へ引き上げる案を進めているという。都市鉄道の運営赤字を縮小するとともに、削減した財源を活用して70歳以上の高齢者にバス料金の一部を支援する考えだと、市は明らかにしている。

ソウル市によると、高齢者、障害者、国家有功者などを対象とした無料乗車による損失は、昨年時点で少なくとも3833億ウォン(約444億7450万円)に達している。また、大邱(テグ)市では2023年に、無料乗車の対象年齢を現在の65歳から2028年までに段階的に70歳へ引き上げることを決めている。代わりに、市内バスの無料乗車対象年齢を現在の75歳から毎年1歳ずつ引き下げ、2028年には70歳以上を無料とする方針を取ったという。

高齢者への交通支援を、単純に「無料乗車による赤字」という論理だけで捉えるべきではないとの指摘もある。

ソウル研究院は2021年に発表した、地下鉄無料乗車制度に関する資料の中で、「無料乗車制度によって高齢者の基本的権利である移動の権利が保障される。また、余暇・経済活動の増加、自殺・うつ病の減少、医療費の削減などにより、2020年基準で3650億ウォン(約422億円)の便益が生じている」と分析している。

高齢者への交通支援は、普遍的福祉か選別的福祉かという問題や、世代間の負担のあり方とも深く関わっている。ニッセイ基礎研究所の主任研究員、金明中(キム・ミョンジン)氏によると、「韓国では無料乗車制度の導入当時、国民年金制度が施行されていなかったため、高齢者の移動や生活を支えるうえで無料の交通福祉は重要な役割を果たしていた」という。

この記事に、韓国のネットユーザーからは「無料は廃止にすべき。割引でいいと思う」「政治家や権力者が血税を使って海外に行くのは惜しくなくても、高齢者の交通費は惜しいのか?」「福祉はいいことだが、必要な人に恩恵を与えるべきだ。無条件で無料にするよりも、日本のようにパスを入手すれば恩恵を受けられるようにすればいい」「韓国は地下鉄無料を廃止にすべき。そもそも地下鉄がなくて利用できない高齢者も地方には多い。一定の金額を交通費として一括支給するのがいいのでは?」「60歳以上は50%引きにすれば、赤字がある程度解消できるし、今まで無料で乗ってた人も反対はしづらいだろう」など、さまざまな意見が寄せられている。(翻訳・編集/麻江)

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