男性のなかには、性欲を知的に分析する能力に長けている者もいる。
この尊敬すべきリストに新たに名を連ねた男性セレブこそ、音楽プロデューサー・ミュージシャンのマーク・ロンソンだ。ロンソンは、英民間放送局ITVの朝番組『グッドーモーニング・ブリテン』で自らがサピオセクシャルだと果敢にもカミングアウトした。
ロンソンによる一大カミングアウトは、フランスの女性権利大臣を務めるマーレーヌ・シアパが自らをサピオセクシャルと表現したことに対してオンエア中にジャーナリスト・作家のニキ・ホジソンがコメントしたのをきっかけに、番組司会者のベン・シェファードとケイト・ギャラウェイが引き出したものだ。オンエア中にホジソンも自らをサピオセクシャルだと認め、「私はいままで男性、女性、トランスジェンダー、ありとあらゆるジェンダーの人と付き合いましたが、ようやく自分がバイセクシャルだと気づきました。いままで付き合った人の共通点は、知性です」とつけ加えた。
バックステージで番組を見ていたロンソンが会話に加わると、ロンソンも自らの性的指向を認めた。「初めて聞く言葉だけど……そうだね、僕は自分がサピオセクシャルだと思う」とロンソンは言った。
いまの時代、サピオセクシャルであるのはイケてるのか? 答えはイエスだ。だが、ホジソンやロンソン的な定義とは少し異なる。サピオセクシャルという言葉はLGBTQコミュニティではなく、出会い系サイトOKCupidから生まれたものだ。OKCupidが性的指向のリストに「サピオセクシャル」を追加したのをきっかけに、この単語が話題になった。
それ以来、サピオセクシャルという言葉はメインストリーム文化を通じて世間に広まり、ニューヨーク・タイムズ紙でも特集記事が組まれたほどだ。
その後、自称インテリが出会い系サイトで自らをサピオセクシャルと表現することが徐々に一般的になった。そのほとんどが、作家デヴィッド・フォスター・ウォレスや水出しコーヒーが好き、という感覚にすぎないのだが。だが、セクシャリティを専門に研究するデビー・ハーベニックらは、サピオセクシャルは性的指向ではなく、性的嗜好であると異議を唱え、こうしたカテゴリー化はアウトサイダー的なセクシャルアイデンティティの持ち主の軽視につながりかねない、と主張する。その他にも、サピオセクシャルを自称することはエリート主義、または最悪の場合、必要な知性レベルを備えていないのを理由に、身体障害者差別につながりかねないと主張する人もいる。
Twitterでは、大勢の人がロンソンの勇気ある「カミングアウト」に対し、本当はそんなことを告白するのに勇気なんていらないのでは? とツッコミを入れた。
どっちにしろ、注目を浴びるのが大好きな男性セレブとして果敢にカミングアウトしたマーク・ロンソンにおめでとうの言葉を送ろう。