13歳のときにOFF WHITE/Louis Vuittonのデザインを手がけるヴァージル・アブローと出会い、そして彼からのフックアップを契機に若きファッションアイコンとして注目を集めてきたYOSHI。

昨年から音楽活動にも積極的に身を投じ始めた現在17歳の彼の目に映っているもの、その鋭敏な感性の羅針盤が指し示しているものについて聞いた。


─新型コロナウイルスの影響で今年予定していたプランの変更などもあったと思いますが、どうですか?

YOSHI:いろいろ決まっていた予定が飛んでしまってショックな部分もあったんですけど、言い方は難しいけど、よい面もありました。

─それはどういう部分で?

YOSHI:そもそも自分は自分自身のことが一番好きなんですね。毎日自分の本質というか、「自分ってどんな人間なんだろう?」って考えながら生きてるんです。そういう意味で、この期間に考える時間ができたからこそ、新しい自分を発見できたと思います。

あとは、コロナ以降に思ったことは海外にアプローチしづらい状況になっているからこそ、日本のマーケットでどう攻めるかということ。今までは海外を強く意識して、そのあとに日本のマーケットを考えるという順番だったんですけど、そこは変化しましたね。


YOSHIが発見した「新しい自分」とは?

─新しい自分の発見とは?

YOSHI:自分はみんなに「ポジティブだね」って言われることが多いし、そういうイメージが強いと思うんですね。「太陽みたいな人だね」とか言われることもあるし。でも、本当は全然そんなことなくて。本来の自分は太陽よりも月みたいな、すごく弱い人間なんですよ。ポジティブかネガティブかだったら150%ネガティブなんですね。

─意外に思う人のほうが多いでしょうね。


YOSHI:絶対にそうですよね(笑)。でも本当の自分はむしろネガティブすぎるんです。までは自分でも「俺は太陽みたいな存在だ。ポジティブでしかない」って思ってたんです。でも、歳を重ねて大人になってきていることもあって余裕が生まれたりして、自分の本質を見つめられるようになって分かりました。

あと、僕は70年代から90年代にかけてのカルチャーが好きで、その影響を強く受けてアーティスト人生を送ってるところがあるんですが昔は今の時代よりもっと努力してないと生き残っていけなかったと思うんです。
社会の問題と向き合わなければなんとなくハッピーに生きられる今のような時代だと物事の本質は見つけずらいと思っていて、僕はネガティブな思考でいるときのほうが本質的なことと向き合える感覚があるんです。だから、自粛期間で家から出ることなく一人で考え込んだり、絵を描いたりしながら自分と向き合えた時間は自分にとって有意義な時間でもありました。あとは家から出ないようになって、自分が東京にいる意味みたいなことも考えました。

─というのは?

YOSHI:結局、自分がなんで東京にいるのかって考えたら、今の東京が好きな街ではないからだと改めて思ったんです。たとえば90年代の原宿ってファッションカルチャーにしてももっと刺激的な街だったように思うんですよ。ファッションと東京の不良が結びついていたり。


「一番好きなのはロック」

─裏原文化とか?

YOSHI:そう。裏原からUNDERCOVERとかNUMBER(N)INEとかパリコレに進出するようなブランドが出てきて一気に東京のファッションの熱が生まれていったんですよね。僕が普段遊んでる友だちは4、50代の人も多くて、当時のファッションカルチャーの面白い話とかよく聞かせてもらうんです。それで思うのは、今の原宿は一つの大きな商業施設みたいになってしまったんだなということ。90年代の原宿ってあそこだけ治外法権というか、独特のトゲがあったと思うんです。

音楽も含めて今の日本のカルチャーを見ているとそのトゲが少ないと思う。
音楽にしても僕が好きなニルヴァーナとかリンキン・パークとか、もっと昔だとセックス・ピストルズや7 Secoondsとかはトゲだらけの魅力があると思うんですね。僕はヒップホップも好きなんだけど、一番好きなのはロックで、ロックってアーティストの魂が憑依したものだと思うんです。だから本質的なロックはトゲだらけだし、刺激的で。でも、そこでアーティストがファンビジネスに寄せてしまったら、アート自体が潰れちゃうと思う。それがすごくイヤで。

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今の日本の音楽シーンには特にそういうムードを強く感じるんです。
日本人はもともと優れた職人気質が尊重される文化があるし、その技術とアーティストの魂が憑依したトゲが融合したらもっと面白い音楽シーンができていくんじゃないかと思っていて。あと、日本人は世界のどこよりも愛情深い国民性があると思うし、本当はインターネットでディスりあったりすることが似合わないと思うんです。もっと日本独自のカルチャーを作っていって、本質的なラブ&ピースを育んでいくことができると思う。だから、今の日本はもったいないと思うし、好きと思えない東京の街を変えていきたいと思うんです。

─そういうことは中高生のときから考えてましたか?

YOSHI:感じていたとは思います。誰とも共有してなかったですけど。学校でも先生としか話が合わなかったので。

─好きなファッションや音楽の感覚を共有できる同世代の友人はいなかった?

YOSHI:ほとんどいなかったです。みんなから気持ち悪いって言われていたので。「なんだ、おまえのファッション、やりすぎだろ」みたいな。でも、自分にとってそれは快感でもあったんです(笑)。もともと人に簡単に理解されたくないという気持ちが強いんですよね。

孤独感もプラスに捉える

─孤独感はなかったですか?

YOSHI:多少はありました。小学校2年から5年生までずーっといじめられていたので、授業が終わって遊びに行こうとしたらクラスのイケイケ集団みたいなやつらに囲まれて「なんだよ?」って言われるみたいな。何もしてないし「何がなんだよ」って感じですけど(笑)、面白い世界だなと思いながら毎日生きてました。でも、ファッションが好きになって、すごく素敵なものに出会えたなと思えました。

ちなみに音楽は中学2年くらいから掘り始めて、レゲエ、ロック、メタル、ハードロック、R&B、ポップス、テクノ、レイヴミュージック──そのころから嫌いな音楽ジャンルってないんです。

─新曲含め、YOSHIさんの音楽性も多面的かつニュートラルですよね。トラップもパンクもエモもポップスも同一線上にある。

YOSHI:新曲の「WEEKEND」はポップミュージックとしてみんなを楽しませるというテーマ。「YAKINIKU GANSHIT feat. NastyC, MIYACHI」は遊びながら作った感覚。

音楽ジャンルとかは関係なく、僕が自分の生き方や音楽で表現したいのは、”人を楽しませたい、みんなをハッピーにしたい”というよりは、明日が見えなくなるくらい今の世の中にある現実的な問題と向き合う視点を持ってもらいたいということ。

─2020年の残り数カ月と2021年に向けてどんな展望を描いてますか?

YOSHI:今はとにかく焦りすぎずに焦って、楽しく生きていこうという気持ちです。僕はファッションの人って見られることが多いので、もっと音楽と向き合ってるということを伝えるためにレコーディングをいっぱいしていきたいと思ってます。現時点ではエモい曲ばっかり生まれてます。基本歌うとエモい曲になっちゃうんですよね。楽しみに待ってもらえたら嬉しいです。

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17歳のYOSHIが語る、ロックの本質はファンビジネスではない

「WEEKEND」C/W「YAKINIKU GANGSHIT feat. Nasty C, MIYACHI」
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