「最後の来日公演」のはずだった前回のジャパン・ツアーから約3年を経て、KISSのアンコール来日公演が決定。11月30日(水)に東京ドームで一夜限りの「大千秋楽」が開催される。
【動画を見る】YOSHIKIとの共演も実現、KISSの前回ジャパンツアーを振り返る
以下、音楽ライター・増田勇一氏による公式テキストをお届けする。
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「日本のファンのみんなにサヨナラを言いに来た」
2019年の師走、KISSは史上12回目となるジャパン・ツアーを実施。仙台、東京、盛岡、大阪、名古屋を巡演しながら、ポール・スタンレーは各会場のステージ上からそう呼び掛けていた。このツアーは2019年1月31日にカナダのヴァンクーヴァーで開幕した『END OF THE ROAD WORLD TOUR』の一環としてのものであり、同ツアーの終了は文字通りKISSのツアー活動の幕切れを意味する。実際、詳細までは明かされずにいたものの、一時は2021年7月のニューヨーク公演が”最後の最後”になるとの情報も公式に発信されていた。だが、世界的パンデミックがすべてを変え、彼らの物語の流れにまで変化を生じさせることになった。
コロナ禍において通常通りのライヴ活動が不可能になったのはこの”地獄の軍団”にとっても同じことで、彼らは2020年3月半ば以降に予定されていた全公演の延期を余儀なくされている。ただ、同年の大晦日には前代未聞のスケール感を伴うカウントダウン配信ライヴをドバイにて開催し、全世界のファンにその健在ぶりをアピールし、2021年に向けての希望を届けている。その後、規制緩和により2021年の夏にツアーが再開された以降もたびたび公演を延期/中止せざるを得ない事態には見舞われてきたが、2022年4月の南米ツアー開幕以降、彼らは従来通りの公演頻度で世界各地の巨大アリーナのステージに立ち続けている。
そうした日常の中で、彼ら自身の意識のあり方にも少なからず変化が生じてきたのかもしれない。KISSは前述の配信ライヴや、『OFF THE SOUNDBOARD』と銘打たれたライヴ・アーカイヴ・シリーズ作品の発売に際して、パンデミックが続く状況下においてもプレス対応の機会を設けてきたが、そうした際に彼らが匂わせていたのは日本再上陸の可能性だった。しかも彼らの発言の端々には「日本に行きたい」というシンプルな願望ではなく「もう一度行かねばならない」といった使命感に近いニュアンスが感じられたものだ。
2019年末のジャパン・ツアーは、パンデミック発生の時期を踏まえれば”滑り込みセーフ”のような時期に実現したわけだが、その後の不安定な時期を経ていく中で、KISSがいかに求められているか、人々が健全な生活を送るうえでエンターテインメントがどれほど不可欠なものであるかを、彼ら自身も改めて実感してきたに違いない。そこで、1977年以来の深い所縁があり、アメリカ以外で最初にKISSを認めた国ともいえる日本を今一度訪れたい、この国のファンともう一度向き合いたいという動機が高まることになるのは、ごく自然なことともいえるだろう。
2022年11月、KISSが改めて日本のオーディエンスに「サヨナラ」を告げにやって来る。再会の場所として選ばれたのは東京ドームであり、彼らにとっては同会場での史上5回目の公演ということになる。ただ、誤解して欲しくないのは、これがいわゆる引退宣言撤回のような性質のものではないということだ。あくまでコロナ禍の影響により『END OF THE ROAD WORLD TOUR』が途中から仕切り直しになったからこそ組まれた、いわば奇跡的ともいえる機会だということを忘れずにおきたい。過去にはフェアウェル・ツアーを経たうえで継続を決めたこともあるKISSではあるが、その当時とは彼ら自身の年齢も違えば今後に向けてのヴィジョンも違う。かつて70歳でのステージ引退を仄めかしていたジーン・シモンズはすでにその年齢を超え、この8月25日には73歳になるが、最近では「バンドが50周年を過ぎても続くことはない」と断言していたりもする。KISSが結成されたのは1973年、デビュー・アルバムが世に出たのは1974年2月のことだ。タイムリミットが間近に迫りつつあることは間違いない。
KISSが日本初上陸を果たしたのは、1977年3月18日のことだった。トレードマークのメイクを施したままパンアメリカン機を降りた4人は、入国審査のため素顔になり、ふたたびメイクをした姿で、羽田空港の到着ロビーで待ち受けていた1,000人を超えるファンの前に姿を見せている。
以降、1978年、1988年、1995年、1997年、2001年、2003年、2004年、2006年、2013年とコンスタントに来日公演を重ねてきたKISSは、2015年の来日時には2001年以来となる東京ドーム公演を実現させ、ももいろクローバーZと共演。そして2019年12月の同会場での公演時には、KISSに対するリスペクトを公言してやまないYOSHIKIが登場するというサプライズも起きている。
現在のKISSには、オリジナル・メンバーであるエース・フレーリーとピーター・クリスは不在だが、このバンドの存続が現メンバーであるトミー・セイヤーとエリック・シンガーの貢献あってこそのものであることは改めて説明するまでもない。実際、ポールは「ジーンと僕がすべてを取り戻すことができたのも、トミーやエリックの献身があったからこそ。彼らの存在無しには現在まで前進し続けることはできなかった」と言い切っている。
生ける伝説であると同時に、常に現在進行形であり続けてきたKISS。彼らはいつでも彼らにしか体現することができない至上のロックン・ロール・サーカスを人々に提供し続けてきた。そんなKISSにとっての”ロードの歴史”が終着点へと近付きつつあった中、過去に例のないパンデミックによる事態急変を経て、彼らのライヴ・バンドとしての歴史の最終章も書き換えられることになった。ポールは「KISSが活動を終えるのなら、その時点で”これまで誰が最高のショウをやってきたか?”という議論が起こる余地のないようにしたいんだ。だから自分たちがこれまでやってきた中でもベストのショウを見せつけなければならない」とも発言している。日本のオーディエンスの記憶に残り、永遠に語り継がれていくべき決定的なロック・ショウが、2022年11月、東京ドームで実現する!
文:増田勇一
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KISS END OF THE ROAD WORLD TOUR
2022年11月30日(水) 東京ドーム
17:30開場/19:00開演
チケット(税込)
SS席 ¥25,000
SSバルコニー席 ¥25,000(1ドリンク・軽食付き/専用トイレ/専用入場ゲート)
S席 ¥20,000
A席 ¥15,000
Ultimate KISS Army VIP Experience ¥400,000
KISS VIP Silver Package ¥150,000
KISS VIP SOUNDCHECK PACKAGE ¥20,000 ※公演チケット別
来日公演特設サイト:https://endoftheroad2022.udo.jp
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以下、音楽ライター・増田勇一氏による公式テキストをお届けする。
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「日本のファンのみんなにサヨナラを言いに来た」
2019年の師走、KISSは史上12回目となるジャパン・ツアーを実施。仙台、東京、盛岡、大阪、名古屋を巡演しながら、ポール・スタンレーは各会場のステージ上からそう呼び掛けていた。このツアーは2019年1月31日にカナダのヴァンクーヴァーで開幕した『END OF THE ROAD WORLD TOUR』の一環としてのものであり、同ツアーの終了は文字通りKISSのツアー活動の幕切れを意味する。実際、詳細までは明かされずにいたものの、一時は2021年7月のニューヨーク公演が”最後の最後”になるとの情報も公式に発信されていた。だが、世界的パンデミックがすべてを変え、彼らの物語の流れにまで変化を生じさせることになった。
コロナ禍において通常通りのライヴ活動が不可能になったのはこの”地獄の軍団”にとっても同じことで、彼らは2020年3月半ば以降に予定されていた全公演の延期を余儀なくされている。ただ、同年の大晦日には前代未聞のスケール感を伴うカウントダウン配信ライヴをドバイにて開催し、全世界のファンにその健在ぶりをアピールし、2021年に向けての希望を届けている。その後、規制緩和により2021年の夏にツアーが再開された以降もたびたび公演を延期/中止せざるを得ない事態には見舞われてきたが、2022年4月の南米ツアー開幕以降、彼らは従来通りの公演頻度で世界各地の巨大アリーナのステージに立ち続けている。
そうした日常の中で、彼ら自身の意識のあり方にも少なからず変化が生じてきたのかもしれない。KISSは前述の配信ライヴや、『OFF THE SOUNDBOARD』と銘打たれたライヴ・アーカイヴ・シリーズ作品の発売に際して、パンデミックが続く状況下においてもプレス対応の機会を設けてきたが、そうした際に彼らが匂わせていたのは日本再上陸の可能性だった。しかも彼らの発言の端々には「日本に行きたい」というシンプルな願望ではなく「もう一度行かねばならない」といった使命感に近いニュアンスが感じられたものだ。
2019年末のジャパン・ツアーは、パンデミック発生の時期を踏まえれば”滑り込みセーフ”のような時期に実現したわけだが、その後の不安定な時期を経ていく中で、KISSがいかに求められているか、人々が健全な生活を送るうえでエンターテインメントがどれほど不可欠なものであるかを、彼ら自身も改めて実感してきたに違いない。そこで、1977年以来の深い所縁があり、アメリカ以外で最初にKISSを認めた国ともいえる日本を今一度訪れたい、この国のファンともう一度向き合いたいという動機が高まることになるのは、ごく自然なことともいえるだろう。
2022年11月、KISSが改めて日本のオーディエンスに「サヨナラ」を告げにやって来る。再会の場所として選ばれたのは東京ドームであり、彼らにとっては同会場での史上5回目の公演ということになる。ただ、誤解して欲しくないのは、これがいわゆる引退宣言撤回のような性質のものではないということだ。あくまでコロナ禍の影響により『END OF THE ROAD WORLD TOUR』が途中から仕切り直しになったからこそ組まれた、いわば奇跡的ともいえる機会だということを忘れずにおきたい。過去にはフェアウェル・ツアーを経たうえで継続を決めたこともあるKISSではあるが、その当時とは彼ら自身の年齢も違えば今後に向けてのヴィジョンも違う。かつて70歳でのステージ引退を仄めかしていたジーン・シモンズはすでにその年齢を超え、この8月25日には73歳になるが、最近では「バンドが50周年を過ぎても続くことはない」と断言していたりもする。KISSが結成されたのは1973年、デビュー・アルバムが世に出たのは1974年2月のことだ。タイムリミットが間近に迫りつつあることは間違いない。
KISSが日本初上陸を果たしたのは、1977年3月18日のことだった。トレードマークのメイクを施したままパンアメリカン機を降りた4人は、入国審査のため素顔になり、ふたたびメイクをした姿で、羽田空港の到着ロビーで待ち受けていた1,000人を超えるファンの前に姿を見せている。
日本武道館での昼夜二回公演といった事態にまで至る大盛況となったこの初来日公演の模様は、NHKの『ヤングミュージックショー』でも放映され、このバンドの破天荒なライヴ・パフォーマンスはお茶の間にまで届き、それが多くの少年少女たちにとってのロック初体験の機会となった。
以降、1978年、1988年、1995年、1997年、2001年、2003年、2004年、2006年、2013年とコンスタントに来日公演を重ねてきたKISSは、2015年の来日時には2001年以来となる東京ドーム公演を実現させ、ももいろクローバーZと共演。そして2019年12月の同会場での公演時には、KISSに対するリスペクトを公言してやまないYOSHIKIが登場するというサプライズも起きている。
現在のKISSには、オリジナル・メンバーであるエース・フレーリーとピーター・クリスは不在だが、このバンドの存続が現メンバーであるトミー・セイヤーとエリック・シンガーの貢献あってこそのものであることは改めて説明するまでもない。実際、ポールは「ジーンと僕がすべてを取り戻すことができたのも、トミーやエリックの献身があったからこそ。彼らの存在無しには現在まで前進し続けることはできなかった」と言い切っている。
生ける伝説であると同時に、常に現在進行形であり続けてきたKISS。彼らはいつでも彼らにしか体現することができない至上のロックン・ロール・サーカスを人々に提供し続けてきた。そんなKISSにとっての”ロードの歴史”が終着点へと近付きつつあった中、過去に例のないパンデミックによる事態急変を経て、彼らのライヴ・バンドとしての歴史の最終章も書き換えられることになった。ポールは「KISSが活動を終えるのなら、その時点で”これまで誰が最高のショウをやってきたか?”という議論が起こる余地のないようにしたいんだ。だから自分たちがこれまでやってきた中でもベストのショウを見せつけなければならない」とも発言している。日本のオーディエンスの記憶に残り、永遠に語り継がれていくべき決定的なロック・ショウが、2022年11月、東京ドームで実現する!
文:増田勇一
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KISSのジーン・シモンズに日本で直撃 「最後の来日公演」は本当にラストなのか?
ポール・スタンレー、KISS最後の日々とファイナルツアーの展望を語り尽くす
KISS END OF THE ROAD WORLD TOUR
2022年11月30日(水) 東京ドーム
17:30開場/19:00開演
チケット(税込)
SS席 ¥25,000
SSバルコニー席 ¥25,000(1ドリンク・軽食付き/専用トイレ/専用入場ゲート)
S席 ¥20,000
A席 ¥15,000
Ultimate KISS Army VIP Experience ¥400,000
KISS VIP Silver Package ¥150,000
KISS VIP SOUNDCHECK PACKAGE ¥20,000 ※公演チケット別
来日公演特設サイト:https://endoftheroad2022.udo.jp
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