スクエアプッシャー(Squarepusher)の来日ツアーがついに実現。10月27日、渋谷Spotify O-EASTで開催された東京公演のレポートをお届けする。
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当初の予定より2年半、2度の延期と会場変更を経て、待望の開催となった単独来日公演。奇しくも当初の東京会場であった新木場STUDIO COASTが閉館となり、新たに会場となったのはSpotify O-EAST。そう、今回帯同する真鍋大度とのコラボレーションによるMV「Terminal Slam」の舞台であった渋谷だ。Warp Recordsのポップアップが設置された会場のロビーも「Terminal Slam」仕様に装飾が施され、期待を高める。
真鍋大度 Photo by TEPPEI
ハドソン・モホーク Photo by TEPPEI
ソールドアウトとなりオーディエンスで膨れ上がったこの日、最初に登場したのは真鍋大度。ダビーなブレイクビーツやドラムンベースを素材に、音の位相を立体的に組み上げていくようなDJプレイ。リズムで繋ぐというよりもサウンドのテクスチャーや景色により繋いでいく手さばきで、緊急参戦が決まったハドソン・モホークにバトンを渡す。
ハドソン・モホークはTNGHT名義のナンバーも織り交ぜながらLAの空気を会場に持ち込む。ニューアルバム『Cry Sugar』から「Intentions」の煌めくシンセのリフが鳴り響くと客席から歓声と拍手が巻き起こる。新作にはかつてなくソウルフルなフィーリングを感じていたが「Stump」の厳かな響きなど、DJプレイにおいてもその美意識は徹底されていた。猥雑さが加速していく後半に差し掛かると、フロアの熱気はコントロールできないほどで、彼もDJブースから手を上げて応える。極めつけは「Bicstan」、オールドスクールなハードコアのビートを新たに蘇らせたこの曲でフロアをレイヴ状態にすると、ハドモは満足そうにステージを降りた。
セットチェンジが終わったステージに、「Terminal Slam」のMVが映し出され、トム・ジェンキンソンが姿を現す。「こんばんは!」と超満員の客席にまずは挨拶。前半は手元のベースをコントロールしながら、未発表曲とおぼしきジャジーな高速ブレイクビーツを連発していく。ときにメタルやハードコアさえ連想させる激しいプレイや、ベースでオルガンのサウンドを出力したり、ネックを叩いて打楽器のようにプレイしたりと実に変幻自在だ。真鍋大度 / ライゾマティクスの映像も彼の鳴らすビートに反応し、モノクロのトーンから目がくらむような眩い色彩まで、カメレオンのように振幅を広げ変化していく。「Terminal Slam」のMVは街に溢れる広告に警鐘を鳴らすべく、AR/MRグラスにより風景を自由に書き換えることができる限りなく現実に近い近未来が設定されていた。明滅するド派手なライティング、そして映像と音の渦にまぎれていると、自分がそのグリッチまみれのヴィデオに入り込んだような気分になる。
スクエアプッシャー Photo by TEPPEI
構築したものを更地に変え、新たに進んでいく。作品ごとに表情を変える彼のサウンドとエナジーはのっけから新曲メインという挑戦的なセットリストでも遺憾なく発揮されていた。中盤はベースを置き、卓に向かってのセットだったが、ハードコア色そしてフリージャズ色を強め、トムはコンダクターのように髪を振り乱し、手を掲げ、何度も客席を煽る。破壊的なアンサンブルにフロアは爆発する。
再びベースを持つと、最新作『Be Up A Hello』のオープニング・ナンバー「Oberlove」のあたたかなメロディが会場を包みこむ。
スクエアプッシャー Photo by TEPPEI
鳴り止まぬアンコールの拍手のなか、再度ステージに登場したトムは、この日初めてマイクを持ち「どうもありがとう!」と挨拶。映像で共演した真鍋にリスペクトを送り、プレイするのは「Come On My Selector」。90年代後半一世を風靡した、あの荒々しいブレイクビーツのイントロを一度ストップさせ、盛り上がりが足りないとばかり叫び、この夜を締めくくった。スクエアプッシャーの鳴らす奔放なビートとクリエイティビティのもと、ステージとオーディエンスが一体となったセットだった。通して、過去曲のフレーズや初期のアシッド・ハウスを彷彿とさせるパーツを挿入する場面はあったものの、懐古的な印象はまったくない。テクノロジーを意識し、レイヴの狂騒にジャズ・ベーシストとしての技巧を重ね、エレクトロニック・ミュージックをライヴのダイナミズムで増幅させる稀有な存在であることをあらためて見せつけた。
【関連記事】スクエアプッシャーの超ベーシスト論 ジャコからメタリカまで影響源も大いに語る
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当初の予定より2年半、2度の延期と会場変更を経て、待望の開催となった単独来日公演。奇しくも当初の東京会場であった新木場STUDIO COASTが閉館となり、新たに会場となったのはSpotify O-EAST。そう、今回帯同する真鍋大度とのコラボレーションによるMV「Terminal Slam」の舞台であった渋谷だ。Warp Recordsのポップアップが設置された会場のロビーも「Terminal Slam」仕様に装飾が施され、期待を高める。
真鍋大度 Photo by TEPPEI
ソールドアウトとなりオーディエンスで膨れ上がったこの日、最初に登場したのは真鍋大度。ダビーなブレイクビーツやドラムンベースを素材に、音の位相を立体的に組み上げていくようなDJプレイ。リズムで繋ぐというよりもサウンドのテクスチャーや景色により繋いでいく手さばきで、緊急参戦が決まったハドソン・モホークにバトンを渡す。
ハドソン・モホークはTNGHT名義のナンバーも織り交ぜながらLAの空気を会場に持ち込む。ニューアルバム『Cry Sugar』から「Intentions」の煌めくシンセのリフが鳴り響くと客席から歓声と拍手が巻き起こる。新作にはかつてなくソウルフルなフィーリングを感じていたが「Stump」の厳かな響きなど、DJプレイにおいてもその美意識は徹底されていた。猥雑さが加速していく後半に差し掛かると、フロアの熱気はコントロールできないほどで、彼もDJブースから手を上げて応える。極めつけは「Bicstan」、オールドスクールなハードコアのビートを新たに蘇らせたこの曲でフロアをレイヴ状態にすると、ハドモは満足そうにステージを降りた。
セットチェンジが終わったステージに、「Terminal Slam」のMVが映し出され、トム・ジェンキンソンが姿を現す。「こんばんは!」と超満員の客席にまずは挨拶。前半は手元のベースをコントロールしながら、未発表曲とおぼしきジャジーな高速ブレイクビーツを連発していく。ときにメタルやハードコアさえ連想させる激しいプレイや、ベースでオルガンのサウンドを出力したり、ネックを叩いて打楽器のようにプレイしたりと実に変幻自在だ。真鍋大度 / ライゾマティクスの映像も彼の鳴らすビートに反応し、モノクロのトーンから目がくらむような眩い色彩まで、カメレオンのように振幅を広げ変化していく。「Terminal Slam」のMVは街に溢れる広告に警鐘を鳴らすべく、AR/MRグラスにより風景を自由に書き換えることができる限りなく現実に近い近未来が設定されていた。明滅するド派手なライティング、そして映像と音の渦にまぎれていると、自分がそのグリッチまみれのヴィデオに入り込んだような気分になる。
スクエアプッシャー Photo by TEPPEI
構築したものを更地に変え、新たに進んでいく。作品ごとに表情を変える彼のサウンドとエナジーはのっけから新曲メインという挑戦的なセットリストでも遺憾なく発揮されていた。中盤はベースを置き、卓に向かってのセットだったが、ハードコア色そしてフリージャズ色を強め、トムはコンダクターのように髪を振り乱し、手を掲げ、何度も客席を煽る。破壊的なアンサンブルにフロアは爆発する。
再びベースを持つと、最新作『Be Up A Hello』のオープニング・ナンバー「Oberlove」のあたたかなメロディが会場を包みこむ。
こんなメロディアスで切ない曲であるのだ、ということを再確認する。ビートが強烈だからこそ、メランコリーが浮き彫りになる。その切実さを生で感じられたのは得難い体験だった。スクリーンの映像もアルバムのアートワークで用いられた8bitのカラフルさをトランスフォームしたようなタッチに変わる。そのまま「Nervelevers」に続いていくのだが、メロウさをあえてぶち壊していくようなリアレンジもライヴならではの醍醐味だった。本編最後、ベースのネックを叩き暴力的なビートとノイズを放出する頃にはオーディエンスの熱気はピークに達し、トムは名残惜しそうに何度も客席にお辞儀をしてステージを去った。
スクエアプッシャー Photo by TEPPEI
鳴り止まぬアンコールの拍手のなか、再度ステージに登場したトムは、この日初めてマイクを持ち「どうもありがとう!」と挨拶。映像で共演した真鍋にリスペクトを送り、プレイするのは「Come On My Selector」。90年代後半一世を風靡した、あの荒々しいブレイクビーツのイントロを一度ストップさせ、盛り上がりが足りないとばかり叫び、この夜を締めくくった。スクエアプッシャーの鳴らす奔放なビートとクリエイティビティのもと、ステージとオーディエンスが一体となったセットだった。通して、過去曲のフレーズや初期のアシッド・ハウスを彷彿とさせるパーツを挿入する場面はあったものの、懐古的な印象はまったくない。テクノロジーを意識し、レイヴの狂騒にジャズ・ベーシストとしての技巧を重ね、エレクトロニック・ミュージックをライヴのダイナミズムで増幅させる稀有な存在であることをあらためて見せつけた。
(文:駒井憲嗣)
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