ロサンゼルス経由シカゴ出身のバンド、OK Goは、約20年前にパンチの効いた楽曲「Here It Goes Again」に合わせて予算控えめのトレッドミル・パフォーマンス動画を公開して以来、音楽と同じくらい映像作品でも知られる存在となった。しかし、ルーブ・ゴールドバーグ・マシン(「This Too Shall Pass」)やトロンプルイユの錯視トリック(「The Writing's On the Wall」)、マペッツのカメオ出演などを取り除いてみれば、そこにはしっかりとしたパワーポップ・バンドの姿が浮かび上がってくる。
OK Goの人気ミュージックビデオ。関和亮が監督を務めた「I Wont Let You Down」はPerfumeのカメオ出演も話題に
『And the Adjacent Possible』は、2014年の『Hungry Ghosts』以来となるフルアルバムであり、ロックフォードのチープ・トリックや、コロンビア・カレッジ出身のマテリアル・イシューといった先人たちが築き上げた理想を21世紀的に爆発させたOK Goの音楽が、視覚的に派手でなくとも十分キャッチーであることを示している。
とはいえ、彼らが映像表現を完全に捨てたわけではない。新作のリードシングルであり、恍惚としたサイケ・ポップ「A Stone Only Rolls Downhill」は、64台のiPhoneで撮影されたミュージックビデオとともに発表された。iPhoneはマトリクス状や滝のように配置され、断片的でありながら一貫性のある映像世界を形づくっている。この曲は一見ゆるやかで軽やかだが、実はひそかに陰を帯びている。バックボーカルは「きっと大丈夫」「全部うまくいく」といったポップの定型句を繰り返すものの、それはフロントマンのダミアン・クーラッシュが「そんなこと、本心では言えない」と嘆くのに応じたものだ。食いしばったような笑顔は、パワーポップという形式にも、現代の気分にもぴったり合っている。
『And the Adjacent Possible』には、驚きと人生の重みが共存している。
アルバムの締めくくりとなる「Dont Give Up Now」は、「人が受けるにはあまりに大きな痛み」を抱えた相手へと差し出される、ゆっくりと咲くような慰めの歌だ(ダミアンはNMEの取材で、この曲をバンドの友人——がんを宣告された人物——のために、ベーシストのティム・ノードウィンド、ギタリストのアンディ・ロスとともに書いたと語っている)。やがてこの曲は言葉を手放し、ハーモニーだけが浮かぶ賛歌へと姿を変える。ダミアンとメンバーたちは、楽器の音を重ね合わせながら、痛みを遠ざけるように音楽でそっと抱きしめる。現実の停滞や苛立ちに対して、創造力という楯を掲げてきたこのバンドにとって、これ以上ない別れの言葉だろう。
「Love」MVは1テイクで撮影。バンド、29体のロボット、60枚以上の鏡が複雑な振り付けを披露し、無限の反射と人間スケールの万華鏡が織り成す、まばゆいばかりの、そして深く感動的なスペクタルが繰り広げられている。
From Rolling Stone US.

OK Go
『And the Adjacent Possible』 (アンド・ジ・アジェイサント・ポッシブル)
配信中:https://sym.ffm.to/andtheadjacentpossible
国内盤CD:2025年4月25日(金)リリース
FUJI ROCK FESTIVAL '25
2025年7月25日(金)、26日(土)、27日(日)
新潟県・湯沢町 苗場スキー場
※OK Goは7月25日(金)出演
公式サイト:https://fujirockfestival.com