裸のラリーズ
『Disque 4 -76 Studio et Live-』
リリース記念リスニング・パーティー
「Fall and Rise of Les Rallizes Dénudés Vol.7」
5/22(金) 代官山 晴れたら空に豆まいて
OPEN 18:00 / START 19:00@haremame
▼詳細
????https://t.co/pTjqQKNufO
Live Mix : 久保田麻琴
Flix & Pix :… pic.twitter.com/dhmkCnSYeC— Rolling Stone Japan (@rollingstonejp) April 21, 20265月22日(金)に新作『Disque 4 -'76 Studio et Live-』リリース記念リスニング・パーティーが開催、詳細は記事末尾にて
海を渡ったラリーズの神話
2014年12月、レッドブルの主宰する音楽情報サイト「Red Bull Music Academy Daily」にて、一本の記事が掲載された。タイトルは「In Search of Les Rallizes Dénudés」。マルセル・プルーストの遺した大長編小説をオマージュしたこの特集記事において、ライターのグレイソン・ヘイヴァー・カリンはかつて日本に存在していた「史上最も謎めいていて、人々を惹きつける」ロックバンドの影を、欧米圏の音楽ジャーナリストの言説を中心に追跡する。
途中、ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)で教鞭を執り、日本滞在中には実際にそのロックバンドを目撃したというアラン・カミングスは、自身もジャーナリストの一員として加担したというバンドのイメージの肥大化について反省しつつも、抗い難い彼らの魅力についてこう述懐した。
以前、私は確かに「神秘(mystery)」という言葉を使った。ただ同時に、裸のラリーズが築いてきたキャリアを考えれば、神秘化そのものが彼らのプロセスの一部でもあることは明らかだ。日本語圏でも、英語圏でもね。
「裸のラリーズ、そしてリーダーの水谷孝とは何者か?」。この問いに魅入られたのは彼らのみではない。靄がかった爆音に導かれ、抽象的なイメージは夜な夜な拡散されていった。「神秘化そのものが彼らのプロセスの一部」という形容は実に正しい。
ジュリアン・コープが2007年に著した日本のロック黎明期に関する研究書『ジャップ・ロック・サンプラー』でカルト・バンドの代表格としてフォーカスされ、熱心なリスナーの間ではヴェルヴェット・アンダーグラウンドの革新性とも比較されているラリーズ。LAを拠点にするインディーレーベル〈Temporal Drift〉が欧米でのオフィシャル・リリースを手掛けてきたこともあり、アメリカでの評価は特に高く、最近でもワイズ・ブラッドやMJ・レンダーマンなどがファイバリットに挙げているほか、2023年にシカゴで開催されたトリビュート・イベントには、Oseesのジョン・ドワイヤーや、翌年リリースの傑作『Diamond Jubilee』で知られるシンディ・リーも参加した。
LES RALLIZES DENUDES COVER BAND LIVE LES RALLIZES DENUDES COVER BAND (JOHN DWYER, DREW ST.IVANY, TOM DOLAS & BILL ROE)
Oseesのジョン・ドワイヤー率いるカバーバンドのライブアルバム『LES RALLIZES DENUDES COVER BAND LIVE』
近年のラリーズ再評価を象徴するのがギースだ。去年発表の3rdアルバム『Getting Killed』で絶賛を浴び、新世代のロックアイコンとして熱視線を集めている、NY生まれNY育ちのアンファンテリブル。そんな彼らが、今年2月に開催された初来日公演において、ラリーズの代表曲「夜、暗殺者の夜」をカバーしたのだ。その翌日にはYMOの「Firecracker」を披露したギース。少なくとも彼らにとって、ラリーズはYMOと同等の、共通言語となり得る「日本のバンド」という認識なのだろう。
海外アーティストの来日公演に携わるスタッフで、ギースやMJ・レンダーマンと交友関係を持つ関係者によると、中心人物のキャメロン・ウィンターは来日中、「メンバーだった方達とセッションしてみたい」と流暢な日本語で語っていたという。その偏愛っぷりについて、ギタリストのエミリー・グリーンも本誌のインタビューでこう説明している。
*
―裸のラリーズはどんなところが好きなんですか?
エミリー:そうだね……何カ月か前のある夜、YouTubeで裸のラリーズのライブ動画を観まくったことがあって、5時間くらい。
―5時間も?(笑)
エミリー:音質も画質もヒドいんだけど、最高にカオスで、抗い難くて、逆に瞑想的に感じた。他のラウドミュージックでは得られない感覚を、自分の中に芽生えさせてくれるよね。そこに魅力を感じてる。
*
「音質も画質もヒドいんだけど、最高にカオス」とエミリーが語るように、ラリーズという「神話」は、ブートレグ録音のローファイな音像によって不可抗力的なサイケデリアを獲得してきた。その身体感覚──つまり観客がフロアで体験した震えのようなもの──には一定の説得力があり、ラリーズの元メンバーで、オフィシャル・リリースのミックス/マスタリングを手掛ける久保田麻琴も、ブートレグのライブ音源に対しては「その音が正しいんですよね」と認めている(『ミュージック・マガジン』2023年8月号でのインタビューより)。
ただ、直近のオフィシャル・リリースが白眉なのは、こうしたラリーズが巻き起こした現象に対してごく真摯に向き合い、神話のエッセンスを守ったまま資料性と快楽性を引き上げている点にある。その契機となったのは2021年10月、突如として発表されたラリーズの公式サイトとそれらを管理するプロジェクト〈The Last One Musique〉の設立だ。
ラリーズの関係者によって立ち上げられ、「これまで20年以上にわたって流布してきた海賊盤よりも鮮烈な音/的確なプロダクションによって、水谷孝の音楽を提供していく」というステートメントを掲げた〈The Last One Musique〉。当時のトップページには「Takashi Mizutani 1948-2019」という一文が表示されており、神話の中核を担っていた人物の訃報に大きな注目が集まった。
そして〈The Last One Musique〉の尽力により、オフィシャル音源の発表や関係者への綿密なインタビューの実施など、急速に「神話」のアーカイブ化が進む2026年現在。靄がかった歴史に輪郭を与えられ、ラリーズのポテンシャルは再度提示されている。ここからは久保田が手掛け、正式な手続きを経た「オフィシャル音源」の幾つかを辿りながら、その歴史を垣間見ていきたい。
フィードバック・ノイズ×甘美なメロディの美学
裸のラリーズは60年代後半の同志社大学の学内で結成された。岡林信康やザ・フォーク・クルセダーズのはしだのりひこなど、関西のカレッジ・フォーク文化を代表するソングライターを擁していた当時の同志社にあっても、水谷孝の存在が異質であったことは疑いようがない。
『67-69 STUDIO et LIVE』は、そんな結成されて間もないラリーズを記録した貴重な一枚だ。水谷とギタリストの中村武志(※現在はフォトグラファーとして活動する中村趫)が発起人となり、当時楽器を触ったことすらなかったというベースの若林盛亮とジャズ・ドラマーであった加藤隆史が初期メンバーとして参加したバンドは、アルバムの冒頭を飾る「Smokin Cigarette Blues」に顕著なように、既にシグネチャーである轟音のフィードバック・ノイズを獲得していた。フリージャズからの影響も匂い立つものの、完全にオリジナルなトランス・ミュージック。この時点でラリーズ及び水谷の美学が確立されていたことが窺えるだろう。『ミュージック・マガジン』1991年11月号での、湯浅学氏によるファックスを介したインタビューで、水谷自身もこう綴っている「エレクトリック・ギターがフィード・バックした瞬間にとるべき方向は決まった」。
同時に「Les Bulles de Savon」や「記憶は遠い」のような素朴なナンバーからは、もう一つのシグネチャーである水谷の非凡なメロディセンスが聞き取れる。1969年から1970年にかけて録音された『MIZUTANI / Les Rallizes Dénudés』では、その人懐っこくもロマンティックな歌曲の側面をより強調したアコースティック・セットが収録。ここに水谷孝とカレッジ・フォーク文化の同時代性を読み取ることも可能であろう。
轟音のフィードバック・ノイズと非凡なメロディセンス。後にドリーム・ポップやシューゲイザーの諸作品が合流を試みた二つの次元は、ラリーズというワームホールを通じて1970年代の日本で既に接続されていた。
離合集散を繰り返しながらも、破滅的な音像を増幅させていく裸のラリーズ。70年代の中盤に行われたライブを記録した『拾得 Jittoku 76』と『77 LIVE』は、「神話」として伝播していったサイケデリック/ノイズ・バンドとしてのラリーズを象徴するような作品だ。特に『77 LIVE』は、先に挙げた『67-69 STUDIO et LIVE』と『MIZUTANI / Les Rallizes Dénudés』と共に、水谷孝本人がプロデュースを行って1991年に小ロットで販売されたCDのひとつであり、水谷の理想としていた音像に極限まで迫ったもののうちの一つだと言えるだろう。バンドの代表曲である「夜、暗殺者の夜」では、キャッチーなベースラインにディストーションの洪水が容赦なく覆い被さる。「夜より深く」に「夜の収穫者たち」といった楽曲のタイトルなど、漆黒を纏ったミステリアスなイメージが確立されたのも70年代中盤だ。
間章や阿木譲のリードによってスタジオ・レコーディングの計画が噂されるものの、長らく音源の発表には至らなかったラリーズ。その代わりに、バンドはライブでの異様な音像のみによってアンダーグラウンドでの評判を高めていった。2023年リリースの『CITTA93』は、1997年を最後に活動を停止するバンドが遂に到達した、透徹された美学を最大限にパッケージングしている。
そして裸のラリーズおよび水谷孝は沈黙の21世紀へと突入していく。本格的にブートレグ市場が賑わいはじめ、灰野敬二や非常階段などのミュージシャンが「ジャパノイズ」というマイクロ・ジャンルの代表格として欧米のインディーシーンで信奉されていったゼロ年代。極端にメディア露出の少ないバンドであったことも作用したのだろうか、「神話」が完成するのにそう長い時間はかからなかった。あのレディー・ガガが「Les Rallizes Dénudés」とプリントされたTシャツを着たのは2015年。耽美な美学の伝道師として、ラリーズは一種のアイコンになったのだ。
レディー・ガガ公式Instagramより引用
”幻の4作目”が証明するバンドの先進性
〈The Last One Musique〉は上記のような歴史の縦線を踏襲しつつ、ラリーズという文化遺産を後世へと受け渡している。中でもとりわけ重要であり、これまでのオフィシャル音源と一線を画すのが最新作『Disque 4 -76 Studio et Live-』だ。
1991年リリースのオリジナル・アルバム3部作(『67-69 STUDIO et LIVE』『MIZUTANI / Les Rallizes Dénudés』『77 LIVE』)の制作時に並行して作られていたものの、結果的に日の目を見ることのなかった”幻の4作目”。水谷は1976年当時のライブと並行して、リハーサル・スタジオでの演奏の様子を録音し、厳選したテイクを「No.4」としてパッケージングすることを画策していた。
『Disque 4 -76 Studio et Live-』
ユーマチックやオープンリール、DAT等の素材に記された「Disque - 4」「No.4」といった表記が、4作目のアルバム用音源であったことを示唆。A面・B面各20数分というアナログレコードの収録時間を意識して構成を試みた形跡も残されている(写真提供:The Last One Musique)
スタジオ録音作である『Disque 4』が浮き彫りにするのは、長尺のアシッドな狂騒に依らない、どこかポップな楽曲の骨子だ。水谷(Vo, Gt)に加えて中村武志(Gt)、楢崎裕史(Ba)、三巻敏朗(Dr)という、マニアの間でもとりわけ評判の高い『77 LIVE』と同じメンバーで録音された今作では、冒頭の「黒い悲しみのロマンセ 或いはFallin Love With」から、サイケデリックかつ抒情的なメロディをマキシマムに操るラリーズの妙味が炸裂している。クリアな音像を通して、激しく揺動するフェイザーを着飾ったファズ・ギターが、ゆったりと隙間を設けたバンドの演奏と対比的に描写。 虚脱的かつ思弁的なストーナー・ロックとして、まさに約半世紀後のギースとも接続されうる名テイクだ。
これまたローテンポな「夜明けの風」や貴重なダブル・ボーカルで録音された「夜、暗殺者の夜」など、鼻歌のようにキャッチーなベースラインを反復させてファズ・ギターが跳ね回るという手法は、ラリーズというバンドの怪物性を提示するのに格好の構成だ。まさに先述した轟音のフィードバック・ノイズと非凡なメロディセンスの合流である。
さらに興味深いのは、轟音の根底に見え隠れする繊細な世界観。深いエコーを伴ったムード歌謡のように響く「鳥の声」や「白い目覚め」が、ここでは水谷の歌唱が靄の中でこだましている。デカダンスの煤けた情景が浮かぶ「鳥の声」に、〈私の春が始まった時 あなただけしか欲しくなかった/風の通りすぎた後でも 私の心は揺れるの〉といったロマンチックな心理描写が紡がれる「白い目覚め」と、水谷の詞には今日におけるゴス表現のジェンダー越境性にも通じるような普遍の可能性が秘められている。こうしたニュアンスを想像できるだけの余地が新たに与えられるのも、巧妙なプロダクション作業による賜物だ。
そしてCD限定ボーナストラックとして、ラストに収録されているのは「The Last One_1976」。渋谷・屋根裏で録音されたという14分間のノイズ・セッション。その苛烈な演奏の前においては、もはや沈黙するほかない。
静謐さと隣り合わせのブルータルを、裸のラリーズは世界で最も早く感知したバンドの一つであった。どれだけ多弁に「神話」を語り重ねても、その功績が擦り減ることは決してない。むしろ言葉を重ねるほど、種々の文脈と照らし合わせるほど、ラリーズというバンドの先見性は強調されるばかりだ。この先の未来においても、彼らの美学は様々な角度から「再発見」されるだろう。夜のよく似合う、まだ名前のない場所で。
『Disque 4 -76 Studio et Live-』に関連する音源が収録されたDATやカセットテープ(写真提供:The Last One Musique)
【写真ギャラリー】生前の水谷が準備していたユーマチック、オープンリール、DAT、カセットテープ(記事未掲載カットあり)
裸のラリーズ(Les Rallizes Dénudés)
『Disque 4 -'76 Studio et Live-』
発売中
CD購入:https://store.tuff-beats.com/products/tbvc-0010
LP購入:https://store.tuff-beats.com/products/tbv-0111
リリース記念リスニング・パーティー
「Fall and Rise of Les Rallizes Dénudés Vol.7」
2026年5月22日(金)東京・代官山 晴れたら空に豆まいて
OPEN 18:00 / START 19:00
Live Mix : 久保田麻琴
Flix & Pix : 宇治晶、望月彰、中藤毅彦
Light : Overheads Classic + liquidbiupil
前売:¥3,500 / 当日:¥3,800(別途1ドリンク代¥700)
U-20割前売:¥2,000 / 当日:¥2,300(別途1ドリンク代¥700)
詳細:https://store.tuff-beats.com/blogs/news/lrd_event_v7
■ニュー・アルバム『Disque4』を始め、”76拾得や屋根裏のライブ音源など、特別に編集された90分以上のマスター音源を爆音再生。久保田麻琴がさらにライブでスペシャルミックス。Overheads Classic + liquidbiupilのサイケデリック照明を中心に、宇治晶編集によるライブ映像、中藤毅彦の写真もスライド映写される。
■当日は『Disque4』のLP、CDに加えて、12インチ「The Last One_1976』、オフィシャルTシャツの新作を会場にて先行販売。


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