3月18日に配信リリースしたコンセプトEP『C.U.T』をひっさげ、5月6日の札幌から全国を回ってきた「yama C.U.Tリリースツアー "羽化"」が5月31日、東京・Zepp Hanedaでファイナルを迎えた。今回のツアーに「”羽化”」というタイトルを冠したのは、それこそが2026年のyamaのテーマだからなのだそうだ。


サポートバンドが登場のSE代わりにジャズファンクなインストナンバーを奏でる中、観客の拍手に迎えられ、yamaがオンステージ。そして、すうっと深く息を吸い、アカペラで歌い始めると、客席が水を打ったように静まり返った。1曲目に選んだのは<もうとめられないや Fly so far>という歌詞とともにyamaの”これから”をリスナーに期待させるように、『C.U.T』の最後を飾っていたソウルフルなポップナンバー「蛹」。その「蛹」を1曲目に持ってきたのは、『C.U.T』からの連続性を、観客に感じてもらうのと同時に今回のツアーでは前述した”これから”を存分に見てもらいたいと考えていたからなんじゃないかと想像が膨らむ。

観客の気持ちをいきなり鷲掴みにするという意味では、見事なオープニングだった。度肝を抜かれ、メランコリーを湛えたyamaの歌声にじっと耳を傾けていた観客達は、バンドがyamaの歌にグルービーな演奏を重ねると、緊張が解けたように徐々に体を揺らし始める。そんな観客の気持ちをさらに解き放ち、ハンドクラップさせたのが、そこからたたみかけるように繋げていった「TWILIGHT」「憧れのままに」「midnight」というグルービーで、バウンシーなポップナンバーの数々。「midnight」ではyamaのリクエストに応え、観客全員が一斉にワイプするというクライマックスを思わせる壮観な景色が早くも目の前に広がった。

yamaがZepp Hanedaで明かした孤独の終わり、羽ばたき始めたツアーファイナル


「ファイナル、ソールドアウトってことでありがとうございます!」

歓声と拍手を浴びながら、開口一番、観客にうれしい報告をしたyamaは続けて、ソファーとテーブルとランプが並んだセットがリビングルームを表現していることと、サポートバンドが今回のツアーはこれまでのギター、ベース、ドラム、キーボードのカルテットに加え、キーボードをもう1人、さらにコーラスを2人迎えた総勢7人になっていることを説明すると、改めてこの日のライブの意気込みを語る。

「(最初、1人で音楽を作り始めた)ワンルームから広がっていった世界を、ライブに落とし込みたいと思って、みんなを自分のリビングにお招きして、特別な編成でお届けします!」

そして、全身で歌声を響かせ、観客を圧倒した「End roll」から見せつけていったのは、より深いyamaの歌の世界。ギターのカッティングがボサっぽいリズムを刻みながら、4つ打ちのリズムで観客を上下に揺らした「TORIHADA」、歌声に凄みを滲ませたyamaに応えるようにバンドの演奏が白熱した「rain check」、未来的なシンセの音色とともにトラックメイキングをバンドサウンドに落とし込んだような演奏が印象的だった「UPSIDE DOWN」、軽やかにステップを踏みながら、ラップも披露した「偽顔」、手数の多いドラムの複雑なビートが人力ドラムンベースなんて言葉も連想させた「マジカルシンドローム」、そしてミックスボイスの魅力を存分に印象づけたバラードの「クリーム」。yamaの歌声はもちろんだが、yamaをバックアップするバンドの演奏も聴きどころが少なくない。


「いろいろなツアーやってきて、(ツアーが終わる時は)毎回、名残惜しいんだけど、今回はいつも以上に名残惜しい。それぐらい1公演1公演が心地いい。(前半が終わった)今の段階で、あたたかい、いいエネルギーをもらっていると思いながら歌ってます。ツアーファイナルはツアーの集大成を見せなきゃとプレッシャーを感じるんだけど、ステージに立って、うれしそうな顔で見てくれているみんなを見ると、プレッシャーが吹き飛ぶ。みんなの笑顔は力がある。助けてもらっています」

yamaがZepp Hanedaで明かした孤独の終わり、羽ばたき始めたツアーファイナル


そんなMCからも今回のツアーがいかに充実していたかが窺える。その成果は……いや、それについてはライブの終盤、yama自ら語っているから、まずは曲順通りに、さらに深い歌の世界を見せつけていったyama曰く”しっとりゾーン”の見どころを振り返っていこう。

ともにバンドサウンドだった音源を、それぞれにピアノ、ギターだけの伴奏で歌い上げた「Oz」「光の夜」は、その意味で見どころだったと思う。そこから一転、ともにバンドサウンドで繋げていった「それでも僕は」と、4年ぶりにVaundyに提供してもらったフォーキーでアンセミックな新曲「飛ぼうよ」の2曲では、全身を使ってビブラートした前者のエモーショナルな歌声、ハイトーンに頼らずに伸びやかに歌いあげた後者の中音域の歌声というボーカリストとしてのポテンシャルを遺憾なく発揮してみせる。因みに”しっとりゾーン”の4曲を歌う直前にyamaは「じっくり聴いてください」と言ったけれど、4曲それぞれに胸が熱くなったり、ザワザワしたりして、心穏やかに聴いていられなかったのは筆者だけではないはず。それはさておき、てっきり羽ばたくことを歌った「蛹」からの「飛ぼうよ」という流れなのかと思いきや、実は、たまたまだったのだというからちょっとびっくり。

「たまたま「飛ぼうよ」が『C.U.T』のメッセージと繋がって、おかげで思い入れのある状態で歌えています」と語ったyamaは自ら曲を作り始めたきっかけの1つに、Vaundyからの勧めがあったことを語ると、「ネタバラシ」と言いながら、”しっとりゾーン”の4曲について、内省的だった「Oz」から、「飛ぼうよ」にかけて、段々開いていった自分の変遷を落とし込んだと明かす。
中でも初めて自ら作詞・作曲した「それでも僕は」は、自分の作る曲や観客に対して語る拙い言葉に自信が持てなかった時期の「張り裂けそうな自分」を閉じ込めているせいか(だから、聴きながらあんなにも胸がザワザワしたのか)、以前は歌うことがしんどかったという意味で、セットリストの肝心(キモ)になったようだ。

「今の自分ならみんなに届けられるかなと思って、セトリに入れてみました。”羽化”を意識しながら、自分で勝手に作ってた殻や檻みたいなものが徐々に崩れていくツアーだったと思っています」

そんなyamaの変化を祝福するように観客が大きな拍手を送ってからの後半戦は、「Remember」から「マスカレイド」「a.m.3:21」とスタイリッシュなシンセの音色とともにアーバンな魅力を持つポップナンバーの数々を繋げ、今一度、観客の気持ちを解き放ちながら、一気に盛り上げていく。ノンストップでなだれこんだ「あるいは映画のような」ではメンバー紹介を兼ねたソロ回しに観客が沸き、フロアの盛り上がりは最高潮に……いや、そこからさらに盛り上がったのが、ポストパンク/ニューウェーブ的なサウンドに歌謡曲を思わせるメロディーを落とし込んだ、「飛ぼうよ」と対になるVaundyの「飛ぶ時」カバーから繋げたメランコリックなシティポップナンバー「春を告げる」だった。2020年4月に配信リリースしたyama名義初のオリジナル曲である「春を告げる」のヒットによって、シンガーとしてのyamaのキャリアが開けていったことは、改めて言うまでもないだろう。

yamaがZepp Hanedaで明かした孤独の終わり、羽ばたき始めたツアーファイナル


「一緒に歌ってください!」

yamaのリクエストに応え、観客のシンガロングが響き渡る。その瞬間、ステージと客席がさらに一つになった。観客の歌声を聴き、快哉を叫ぶ。

「とてもきれいな歌声で、いっぱいエネルギーをもらえてうれしかったです!」

そして、『C.U.T』から秦基博に提供してもらった「Hanamushiro」を披露する。春の訪れを歌った曲の次が春の終わりを歌った曲というところが興味深い。セットリストの肝心(キモ)だと思うので、ちょっと長くなるけれど、それについて語ったyamaのMCを記しておきたい。

「秦さんからもらった曲を聴きながら、「春を告げる」でたくさんの人に知ってもらえて、囚われているつもりはなかったけど、春に置き去りにされていると言うか、時間が止まったままになってたのかもしれない。
みんながキラキラしていることや、新たな関係が始まって、どんどん変化していくことに馴染めなかった自分は春という季節が好きじゃなかった。「春を告げる」では、そういうことを歌っている。そういう曲がたくさんの人に届いたおかげで、縮こまっていた自分が人前に出られるようになって、世界が広がっていった。たくさんの仲間ができたし、たくさんの君達がライブに来てくれた。「春を告げる」では、<ここには誰もいない>と歌ってるんだけど、実はひとりじゃなかったことに気づいた。だって、ここにはこんなにたくさんの人がいて、歌ってくれたんだから」

そう思えたところにこそ、今回のツアーの一番の成果があったんじゃないか。

yamaがZepp Hanedaで明かした孤独の終わり、羽ばたき始めたツアーファイナル


「今回のツアーのおかげで、あとは飛んでいくだけの状態になれた気がする。みんなが花だとしたら、一生懸命羽ばたいて音楽を届けていきたいと思ってるから、これからもがんばります!」

その「Hanamushiro」がこの日のラストナンバーだった。

「この曲の余韻のまま帰って欲しいから正真正銘の最後の曲です」

その言葉通り、もちろんアンコールはなし。メランコリックなバラードだが、そこには痛々しさは感じられない。リラックスしたyamaの歌には、代わりに聴き手を包み込むようなやさしさがあった。歌っているyamaの心はきっと凪いでいたに違いない。


「羽化」というタイトルとともに、より一層力強く羽ばたき始めた姿を印象づけた今回のツアーのファイナルにZepp Hanedaほどふさわしい会場はなかったと、会場に入る直前、ゴーッと音を立てながら、頭の上を飛んでいった飛行機を思い出しながら思った。そんなところも含め、とことんコンセプチュアルなツアーだった。

このレポートから、進境著しいyamaの今を感じ取っていただければ幸いです。

yamaがZepp Hanedaで明かした孤独の終わり、羽ばたき始めたツアーファイナル


セットリスト
1. 蛹
2. TWILIGHT
3. 憧れのままに
4. midnight
5. End roll
6. TORIHADA
7. rain check
8. UPSIDE DOWN
9. 偽顔
10. マジカルシンドローム
11. クリーム
12. Oz.
13. 光の夜
14. それでも僕は
15. ⾶ぼうよ
16. Remember
17. マスカレイド
18. a.m.3:21
19. あるいは映画のような
20. ⾶ぶ時
21. 春を告げる
22. Hanamushiro

Official HP:https://www.sonymusic.co.jp/artist/yama/
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