日本のポップカルチャーは世界でも有名だ。ただ、文学となると中国で有名なのは、村上春樹や太宰治など、近現代の作家が中心だ。
中国の動画メディア好看の一条チャンネルが「日本の文化を語る上で、欠かせないもの」と題し、俳句について取り上げている。特に記事は松尾芭蕉と小林一茶を取り上げ、「俳句を知らなければ日本文化について何も語れない」とまで述べている。

 記事は、台湾の詩人である陳黎氏のインタビューで構成されている。陳黎氏は俳句の翻訳なども手掛けている。陳黎氏の両親は日本統治下の台湾で生活したこともあって、陳氏自身も日本語が馴染み深い環境で育ってきた。歳を取り、改めて松尾芭蕉や小林一茶の俳句を鑑賞し、その深みに驚いたという。

 俳句は、575の全部でたった17文字の詩。しかし、その短い文章の中に自然、人生、宇宙を感じ取ることができる、という。俳句を鑑賞すると、一瞬のうちに静寂が訪れ、その後言葉と言葉が化学反応を起こし火花が散る、特異な体験ができるとも述べている。

 松尾芭蕉の俳号は、「桃青」という。実は、この俳号は芭蕉が敬愛した唐代の「詩聖」李白(梨白)をもじってつけたものでもある。確かに俳句は唐詩の影響を受けてはいるが、異なる高みを目指している、と述べる。
漢詩が美しく整然とした偶数の芸術なら、俳句は17文字で割り切れない奇数の芸術。完全さを追求するのではない、朽ちていくものの中に静けさや美を見出す、「わび・さび」の芸術だ、と評した。

 台湾の花蓮に住む陳黎氏は、大地震で被災したという。そんな時、芭蕉や一茶の俳句を思い出し慰めを得たという。「俳句の“自然のうつろいに身を委ねる価値観”を思い出すうちに、自然と地震で失ったもののことはあまり気にならなくなった」と述べている。

 陳氏は結論として「情報過多の今の時代にこそ、短い言葉の中に人々の喜びや悲しみを描き出す、美しい日本の芸術”俳句”に、ぜひとも触れて欲しい」と訴えている。(編集:時田瑞樹)(イメージ写真提供:123RF)
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