記事は、安倍首相、岸田文雄外相、甘利明内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)らが午後0時20分に伊勢神宮に到着し参拝したことと、安倍首相が神社境内で記者会見を開いて今年の政府の仕事について説明したと紹介。
日本の首相が伊勢神宮を参拝するのは慣例であり、民主党の海江田万里党首も安倍首相に先立って参拝したと解説した。
一方で、安倍首相が2013年10月2日に行われた式年遷宮の儀式「遷御(せんぎょ)の儀」に参列したことも紹介。同儀式への首相の参列は戦後初めてであり、「日本の世論は憂慮している。憲法違反の疑いもある戦前への回帰の道を歩んでいるとの批判もある」と報じた。
安倍首相の伊勢神宮に反対する声として、日本キリスト教協議会靖国神社問題委員会の坂内宗男委員長と、児童文学作家の山中恒氏の意見を紹介した。
伊勢神宮については批判的な書き方をせず、「日本の三大神社の首位で三重県伊勢市の観光の中心。日本の神道で最も重要な神社で、天皇の祖先を祭っている」、「大部分の日本人にとって相当に重要な存在」などと紹介した。
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◆解説◆
日本の政治における主要人物を紹介する同記事は、共産党の了解を経て発表されたと考えるのが自然だ。
中国は、靖国神社にはA級戦犯が祭られているという理由で、同神社そのものに反発し、政治家が参拝した場合にはさらに猛烈に反発する。しかしこれまで、日本の神社や神道を批判したことはない。天皇についても批判したことはなく、むしろ日中友好を強調あるいは演出したい場合に、天皇陛下の訪中に向けて動いたりしたことがある。
安倍首相を強く批判すること自体は従来通りであり、伊勢神宮を批判しているわけではないが、安倍首相の伊勢神宮参拝を批判したことで、読んだ者の伊勢神宮に対する反感、ひいては神道そのものや天皇家に対する反感をかきたてかねない内容という点で、中国としても異例の記事だ。
中国人が「大きな問題」を解決する際にみられる方法のひとつに「すべての原因を個人または特定のグループに押しつける」やり方がある。その場合、責任を負わせる対象は、できるだけ猛烈に非難しておいた方が、後任者と関係を修復しやすくなる場合がある。
中国は靖国神社を参拝した小泉純一郎首相を猛烈に批判しつづけた。しかしその一方で、両国関係を速やかに修復できるよう、「次の首相就任後の日中の文化交流事業」なども周到に準備をしていた。
中国は小泉首相の後任となった安倍首相(第一次内閣)に対しては、相当に好意的な姿勢で接した。安倍首相も、第一次内閣で首相を務めていた時期には靖国神社参拝を見送った(後に、「痛恨の極み」と発言)。
尖閣諸島を巡る情勢や安倍首相の2013年12月26日の靖国神社参拝で、日中関係は国交樹立以来「最も冷え込んだ」状況になった。中国は安倍首相在任時の両国関係の改善は不可能と見切りをつけ、「多少のリスクはあっても機会があるごとに安倍批判を繰り返し、その後に備える」方法を選んだ可能性もある。(編集担当:如月隼人)
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