阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング)系の金融会社アント・フィナンシャルは、外貨送金の英国大手ワールドファーストを約7億米ドル(773億円)で買収する意向という。外電を引用して中国の経済メディアが26日、一斉に伝えている。
アント・フィナンシャルは、今年1月に米国の大手送金会社マネーグラム(テキサス州ダラス)の買収について米・外国投資委員会(CFIUS)の認可が得られないことから断念。自力で国際送金システムの開発をめざしていた。

 「ワールドファースト」は、オンライン販売者向けに国際送金と外国為替ソリューションを組み合わせたサービスを提供している。2004年に英ロンドンで創業し、現在までにオランダ、米国、香港、オーストラリア、シンガポール、日本に拠点を設けてワールドワイドに展開。世界中の資金移動の専門家として、12万を超える人々や小規模ビジネス、 オンライン販売業者を顧客とし、2004年以来の移動金額は総額650億イギリスポンド(約9兆1000億円)を超えている。

 中国では2008年からサービスを提供開始。中国の越境Eコマース業者向けに米ドル、ユーロ、ポンド、円、カナダドルなど外貨の受取サービスを提供している。中国の輸出業者、5万社以上から外貨集金業務を請け負った。今年7月、出資先現地企業の越蕃商務信息諮詢(上海)有限公司を通じ、中国人民銀行から決済業務ライセンスを得ている。

 アリババ・グループのメイン事業といえるマーケットプレイスでは、あらゆる国籍の様々な企業が参加し、従来よりも低い調達コストで商品やサービスをやり取りしている。外貨取引が必ず介在し、従来の銀行を経由した外貨決済に対して、圧倒的な低コスト(費用、時間など)で外貨の交換ができる国際送金サービスは、マーケットプレイスの競争力を維持するためにも不可欠なツールになっている。

 アント・フィナンシャルは2017年1月に米国のマネーグラム社が買収提案を受け入れる決定をしたため、買収手続きを進めていたが、18年1月にCFIUSが不認可の決定をしたことで断念した。
マネーグラムは、当時、200カ国以上、約35万拠点の取引ネットワークを持っているといわれ、これらをつなぐ巨大な送金ネットワークをもっていた。CFIUSは不認可の理由を明らかにしていないが、マネーグラム社が保有する大規模な米国の個人情報の取扱いに関する懸念が原因と推測された。

 マネーグラム買収を断念したアント・フィナンシャルは、独自の海外送金システムの開発に注力した。今年6月に、ブロックチェーン技術を活用し、スマホで指示すれば数秒で送金が完了するサービスを、香港とフィリピン間で実現している。

 今回、買収を進めているワールドファーストは、アマゾンマーケットプレイスの国際決済サービスでも利用されている。米国が中国の大手企業と中国政府との関係性に対して厳しい態度で臨んでいる現在、米国と緊密な同盟関係にある英国企業の買収がこのまま進むのかどうか注目される。(イメージ写真提供:123RF)


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