『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが3月の連載を激論!
『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!
希代のストーリーテラーのふたりが3月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。
***
―今回の「先月の肉トーク」テーマ―
第523話 反撃の極寒地獄!!の巻 (3月2日更新分)
第524話 冴えわたる冷血面!!の巻(3月9日更新分)
第525話 神候補VS魔界のプリンス!!の巻(3月16日更新分)
第526話 見逃された火トカゲ!!の巻(3月30日更新分)
あらすじ
世界各地で同時開催された五大刻との一大決戦。
爪切男(以下、爪) 単行本の92巻が出ましたけど。その表紙が...。
燃え殻(以下、燃) そう! 真ん中はテリーマンだけど、左にスカイマンの姿が! この画の下描きがXにアップされた時に「スカイマンが描かれてる!」と思って。
爪 そんなに(笑)?
燃 そりゃそうでしょ。令和の時代にスカイマンだよ?
爪 この表紙、敵キャラがひとりもいなくて、全員テリーマンに関わるキャラクターなんですよね。ジェロニモ、キン骨マンとイワオ、スカイマン。
燃 そう、テリーマン視点の表紙なんだよね。
爪 今回出てきた時の、読者の反響も大きかったですもんね。これはもう、スカイマン主人公の読切が描かれる可能性が、濃厚になってきたんじゃないですか? スカイマンが闘うところ、観たいじゃないですか。
最新JC92巻時点では、解説として空からテリーマンを見守る。
燃 うん......でも、スカイマンでもつかなあ。
爪 もつでしょ(笑)。たとえばスカイマンが子供たちにルチャ・リブレを教えるとか。
燃 そうか、ルチャの世界で言ったら、スカイマンのマスクをかぶった小さい子供たちがいて......。
爪 メキシコの社会が荒れているから、スカイマンが子供たちを救うっていう。
燃 スカイマンの昼間の仕事は神父さん?
爪 そうそう、よくあるやつ。
燃 フライ・トルメンタみたいな(※自らが経営する孤児院のためにプロレスラーになった神父)。それで子供たちを試合に招待して、みんなが神父を応援する。
爪 で、その孤児のひとりが、牧師の後を継いでプロレスラーになるんですよね。
燃 それほんとにフライ・トルメンタじゃん、一番いい話! とにかく僕は、スカイマンが表紙にいることに感動しました。
爪 令和の今、92巻で出てくるっていうのがね。
燃 でも、スカイマンのことは、やっぱり読者みんな気にしてたと思うんだよね。
爪 それはそうですね。スカイマンだけじゃないけど......。
燃 そう、スカイマンとかカレクックみたいな、脇役ともいえるキャラクターにまで実は歴史がある、っていうのを......たとえば映画でも、モブキャラが普通にちゃんと話してるシーンがあると、「あ、これ、いい映画だな」っていうの、あるじゃない?
爪 あるある。この映画は信用できるな、と。
燃 それと同じで......モブのキャラを細かく描いているけど、そいつらに人格はない、みたいな漫画が今は多いと思うけど、ゆでたまご先生は違う。これまでの一連のスピンオフ作品もそうだけど、モブにも歴史ありっていうことが、しっかり描かれている。
爪 だから『キン肉マン』の作品としての強度も上がる。そういう意味でも大事ですよね、スカイマンが表紙にも出ているのは。
燃 ザ・マンリキとかもそうだったけど、こうして物語に出てくることが、「みなさん忘れていませんよね? 作者は忘れていませんよ」っていうメッセージにもなっている。だから読者も反応する。
スカイマン同様、ザ・マンリキもウォーズマンVSぺシミマン戦の解説を務め、話題になった(JC88巻より)
爪 うん。なんか、最近よく言われている「優しい社会」の実現みたいな。
燃 そうだよね。
爪 あと、やっぱり我々、「超人オリンピック」に出てきた超人たちには思い入れがありますよね。ティーカップマンとかも然りだし。
燃 ああ、確かに。
爪 ああいうシンプルな超人には、どうしても、すごく思い入れがあるんですよね。スカイマンもシンプルじゃないですか。
燃 そうだよね、元ネタのまんまだもんね。『キン肉マン』の世界の中でも、ガチガチの戦闘型の超人とは別に、キャラクター寄りの超人がいるじゃない? キューブマン、タイルマン、ベンキマンとか。
爪 はいはい、キャラ先行の超人ね。
燃 そんな超人にも歴史があって、試合をやると、けっこういい試合をする。
「普通こんなの試合にならないだろ」って思わせるカードを、しっかりいい試合にする。それがすばらしいっていうか。たとえば、スプリングマンvsウルフマンとか、「この組み合わせ、どうすんの?」っていう感じじゃない?
爪 そうですよね。バネと横綱超人。どうするんだろうと思ったけど、まさかスプリングマンがウルフマンの身体を八つ裂きにする試合になるとは。
燃 まさかの展開で、しかも両方のキャラが活かされた試合になった。
爪 スカイマンの試合、観たいですよね。
燃 今回は寸前で止められちゃったからね。
爪 僕は、スカイマンとスクリュー・キッドの試合が観たい。
燃 (笑)。でも、リアルに考えて、スカイマンと試合したら合うのは誰か、って考えると、難しいよね......あ、マリポーサとか?
爪 ああ、ルチャドール同士で。
燃 だからルチャ・リブレの、空中殺法の試合をね。でかい会場じゃなくて、後楽園ホールぐらいで......いや、新宿FACEかな。
爪 FACEの距離の近さなら、楽しいでしょうね......いいかげん連載の話をしないと(笑)。
【アシュラマン、シングル初勝利の行方】燃 まず、第523話でアシュラマンが手のひらからサンシャインを出したのには、びっくりした。
爪 ああ、「こんなに便利な形になって生きてたんや、サンシャイン」と思いました(笑)。でもこれで、サンシャインのファンを救ってますよね。
燃 あとサラマンダー、ここまで悪役っぽい悪役って久しぶりじゃない? いいよね。
爪 それによって、アシュラマンがひたすらカッコよく見える。出す技がすべてサラマンダーの上を行くし。
燃 阿修羅稲綱(いづな)落としとかね(第524話)。
爪 これもまたいい技ですよね。両膝から生えた指みたいなので、相手のくるぶしをロックして、地面にぶつける。
燃 やってたやってた。
JC50巻での、VSジャスティスマンで見せた阿修羅稲綱落とし
爪 サタンクロスの時も使ってたし。
燃 でも次にサラマンダーが出した、サラマンダージェニュインテラーもいい技だよね。漫画でしかありえないけど、画としてすごくいい。
爪 それに対してのアシュラマンの返し技、三藐三菩提(さんみゃくさんぼさつ)エプロン、前垂れが伸びてサラマンダーを覆うこれ、初めて? 前にも出てきましたっけ?
燃 いや、俺、見たことない。
爪 ねえ、初ですよね。これで落下速度を速くすることによってサラマンダーの炎を消す、そうすると腕も消える。冷血面やから、冷静にそういうことを考えられるんですね。そこからの阿修羅(あしゅら)バスター、何度観ても、つくづく完璧な技ですよね。
燃 で、最後に、失神したサラマンダーの顔をグシャッと踏みつける。ひどいね(笑)。
爪 うん、悪魔の勝ち方で。いいなあと思ったのが......またスカイマンの話になっちゃうけど、勝ったアシュラマンの姿を見ながらスカイマンとテリーマンが会話するシーンで、(525話の)2ページも使っているじゃないですか。
燃 そうだよね(笑)。
爪 これ、テレビだったら、スカイマンがしゃべってても、カメラが抜かないと思うんですよね。
ご存じのファンの方も多いと思いますが、テリーマンとスカイマンの関係には、第20回超人オリンピック1回戦で闘ってから、という永き歴史があることを一応お伝えします(JC3巻より)
燃 収録だったら編集で切られるよね(笑)。
爪 そう。それをちゃんと生かすのも、『キン肉マン』のいいところですよね。
燃 あ、そうだ! アシュラマン、シングル戦では初勝利じゃん!
爪 ああ、そうだった! 前々回のこの対談でも話題になったけど、実はシングル戦では一回も勝ったことがなかったんですよね。
燃 そうだよ、「初勝利おめでとう!」って言ってあげないと。テリーもキン肉マンも、誰も言ってくれないから。
爪 うん、せめて我々だけでも。
シングル戦に限ると、黄金のマスク編でテリーマンに引き分け、キン肉マンに敗北。王位編でサタンクロスと引き分け。さらに完璧超人始祖編でジャスティスマンに敗北という状況だった
燃 あと今回、もうひとつ言っておきたいのは、第525話の最後のページ。
爪 アシュラマン、テリーマン、スカイマンが「"刻の神"だ!」って言っているコマ?
燃 このページのスカイマンを見て、身体、立派だなあと思って。
爪 (見直す)ほんとだ。
燃 テリーマンと同じぐらい、いい身体してるよね。
爪 ジュニア・ヘビーだけど身体がごっつい。
燃 獣神サンダー・ライガー的なね。そこにはちゃんと気がついてほしいな。
爪 スカイマンを見直しましょう、と。最後もスカイマンの話(笑)。
●燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、『明けないで夜』(マガジンハウス)など多数の著作がある。最新著は『これはいつかのあなたとわたし』(新潮社)、『ブルーハワイ』(新潮文庫)。ラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:30~27:00)もチェック
●爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』も発売中。ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化。最新刊は、『愛がぼろぼろ』(中央公論社)
取材・文/兵庫慎司 ©ゆでたまご/集英社

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