―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―

「このままではひきこもりになってしまうのが怖い」――中学校に通えなくなり、自衛隊に7年間在籍。現在は通信制大学に通う25歳女性から一通の相談が届く。
そうした悩みに、”外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報・外交のプロ・佐藤優が、自身の体験もふまえて答える!

このままではひきこもりになってしまいそうです

「ひきこもりになるのが怖い」25歳女性に伝えたいこと…韓国で...の画像はこちら >>
★相談者★タチバナ(ペンネーム) 大学生 25歳 女性

 私は中学校に通えなくなり、通信制高校を卒業し、ASDを治すために自衛隊に7年いました。でも無能な自衛官だったと思います。今、通信制の大学で学んでいますが、見通しがつかなくて困っています。机に向かう習慣がなく、奇跡的に合格できたのは自動車運転免許と自衛隊の入隊試験だけです。このままではひきこもりになってしまうのが怖くて死にたくなります。

佐藤優の回答

 無理して働くことを考えなくてもいいと思います。あなたは十分努力しています。その自分を肯定的に評価することです。自動車運転免許を取得できたのは立派なことです。私は外交官試験に合格後、外務省の人事課から「入省するまでに必ず運転免許をとっておけ」と言われたので、大学院(同志社大学院神学研究科)2年のときに教習所に通いましたが、仮免許で路上に出るまでほかの人の3倍くらい時間がかかりました。車庫入れが苦手で、本当に苦労しました。大学院入試や外交官試験よりも難しかったです。この例でもわかるように人にはさまざまな個性があります。


 人間の社会はASD(自閉症スペクトラム)の人たちを含む、さまざまな人がいるという多様性によって成り立っているのです。ひきこもりになるのが、何か悪いことなのでしょうか。私はそう思いません。コロナ禍の’20~’21年にかけては、政府が率先して国民に「ひきこもりになれ」と奨励していたではないですか。

 実は、日本以外でもひきこもりがたくさんいる国があります。

〈韓国では、経済的、精神的に自立できず、同居親に依存する子どもたちを「カンガルー族」と呼ぶ。日本でいうパラサイトシングルだ。2010年頃に登場した表現で、OECDの調査によると、働いている人も含め、親と同居する子どもの比率は20代で81%と世界でワーストだった(中略)ちなみに2位はイタリアで、比率は80%。イタリアでは、同居親に依存する30代前後のシングル男性を「バンボッチョーニ(bamboccioni大きな赤ちゃんの意)」と呼ぶ。カトリック教徒が人口の80%を超えるイタリアでは家族の結びつきが重視され、親と一緒に住むことは親孝行ともされているため、社会問題として表面化しにくい側面もある。〉(『韓国消滅の危機』165頁)

 ひきこもりの人たちを養っていく力が日本にも韓国にもイタリアにもあると理解したらいいと思います。また、家族の支援を得ることができなくなれば生活保護を受給することを考えればいいです。
人間は誰であっても生きているだけで意味はあるのです。社会の基準に振り回される必要はありません。そう考えると気持ちがラクになると思います。

 あなたの場合、障害者手帳の受給を考えればいいと思います。認定を受ければ、それほど負担のない仕事を紹介してもらえます。また、障害の程度によっては年金を受けることもできます。

 あなたは今のままでまったく問題ありません。このペースで生活を続けることをお勧めします。

★今週の教訓…… あなたは努力している。自分を肯定しましょう

「ひきこもりになるのが怖い」25歳女性に伝えたいこと…韓国では20代の81%が親と同居、あなたは十分努力している/佐藤優
出生率0.75、釜山が消滅危険水準、38度線に接する最前線部隊が解体――。急激な人口減で危機に瀕する韓国の内実と人々の声を現地記者がリポート。’25年刊
※今週の参考文献『韓国消滅の危機──人口激減社会のリアル』(菅野朋子 角川新書)

―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―

【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。
’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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