今年は現在放送中の連続ドラマ2本を含む、ゲスト出演も合わせてすでに5作品に出演。5月10日からは約10年ぶりとなる舞台『リチャード三世』に立っている。
そんな中越さんが、「他人と比較してしまって辛かった」という過去を告白。また、熱い地元愛や、へんてこ人形作りの素顔を聞くうちに、「みんなと一緒じゃなくていい」という自分軸を育んできた姿が伝わってきた。
朝ドラ後、周りと自分を比べ続けてしまった「一番きつかった時期」
——ご活躍中のみなさんの「B面」を伺っています。中越さんは、これまでを振り返って、お芝居の仕事を辞めようと思ったことはありますか?中越典子(以下、中越):朝ドラを卒業して、月9の『プライド』(2004)に出させてもらいました。その辺からですかね。みんなが自由にお芝居をやってるように見えて。主演の木村拓哉さんや、竹内結子さんとか、みんな、本当にすごい役者さんだと思うたびに、自分が惨めに感じるようになってしまったんです。それまでは、自分で役を考えて、どこのセリフの感情でどう動くか……と掘り下げる癖がなくて、行き当たりばったりでお芝居をしていました。そのことに気づいた時間だったというか。だからとても弱かったですね、心が。
——『プライド』の少しあとに出演された、『サラリーマンNEO』(2006~2007)も個人的にとても好きでした。
中越:それこそ、いろいろともがいていた時期です。生瀬勝久さんとかすごい方たちばかりで、毎回心が折れていました(苦笑)。長回しで、5カメぐらいで一気に撮るんです。間合い重視というか、その場の空気を大事にしていく演出で。いつも変な汗をびっしょりかいていました(笑)。とても楽しかった半面、すごく不安ばかりで。OKと言われても「絶対これ本当はOKじゃないよな」「みんな面白くないって思っているんだろうな」みたいなことをずっとずっと思っていました。
子育てと向き合い生まれた「自分は自分なんだ」という核
——どうやって乗り越えていったのでしょうか。何かきっかけはありましたか?中越:子供を産み、自分以外のものに対して一生懸命になったことで、自信がついたのだと思います。自分は別にどう思われようと、「お芝居できない人だね」と思われたとしても、別にそれでもいい。とにかく一生懸命にやりさえすれば「自分は自分なんだ」という、きちっとした核の部分ができてきたんです。安心感というか、「(それで)いいんだよ」という。
中越:8年~9年、子育てメインで生きてきました。テレビをつければ「いいな」と思うし、舞台を観れば「やりたい」と思うけれど、それよりももっと大事な命を守らなければと。毎日、怪我しないようにとか、泥に入らないようにとか、たったそれだけのことなんですけど、ものすごく大事で。それを続けたことによって、自分自身が図太くなったんだと思います。「何を言われようといい。私は命を守って生きてきたんだから」みたいなところが、自分を強くしてくれました。
——仕事への向き合い方も変わったのでしょうか。
中越:「別にみんなに好かれなくてもいい」と割り切るって、根本に触れることですよね。特に私の仕事だと、仕事が来ないとそれだけで「嫌われているんだ」とつい思ってしまうんです。でも今は、「私は私でちゃんと生きている、胸張っていいんだ」と思える。求めてくれた人がいたら「じゃあそこに全力で返そう、今は目の前のお芝居に集中しよう」と。無駄なところに力を入れずに、大事な部分に注力できるようになったんじゃないかと思います。
ひとりで甲子園球場の応援席へ
——プライベートの話も聞かせてください。中越さんといえば、地元愛も知られています。昨年の夏、京都での撮影中に母校・佐賀北高校の試合の応援のために、甲子園まで足を運ばれていました。中越:試合の日が、ちょうど休みだったんです。「これはもう絶対に行く!」と決めていて。一番上のフェンスのところで見ていました。
——Instagramに載せられていましたが、記事にもなっていましたね。完全におひとりで外野席の一番上から応援していたのですか?
中越:そうです。高校生が頑張っていることは素晴らしいことだから投稿したくて。意外と些細なことを記事で取り上げてくださったりするんですよね。ありがたいなって(笑)。
20年経っても変わらぬ地元愛
中越:はい! 少し前にも20年ぶりくらいに、中学の器械体操部のメンバーとか同じ中学の友達など女子5人で、東京で集まったんです。みんなすっごいエネルギッシュで、よく笑って、よく飲んで。
30年前から続ける「骸骨人形」づくり
中越:すごく挫折をしております(笑)。なかなか絵が描けなくて。なので今は人形作りに励んでいます。鳥人間みたいな、虫人間みたいな、へんてこ人形を作って。
——え?
中越:メキシコの骸骨、死者の祭りとかで飾っていそうな感じの人形です。砂の粘土で、ちっちゃいものにチャレンジしているんですけど、何体か作って。30年ぐらい前から着手していたんですよ。
——30年!それは完全にオリジナルで?
中越:本当に勝手に、自由に作っています。蝶々みたいな虫の人間みたいな。
——へんてこ人形の絵本、ぜひ見てみたいです。テーマは決まっているのでしょうか。
中越:「みんなと一緒じゃなくてもいい」ということを謳えたらなって。「あの人はあれをやっているけど私はこうなんだ、あの人はこうだけど私はこうなんだ」って。それを信じてやってきた自分自身があるので。子供向けにするのか大人向けにするのか、まだ迷っているんですけどね。
約10年ぶりの舞台へ。吉田羊への憧れも
中越:ずっと舞台はやりたいと考えていましたが、子育てメインだったこともあり、なかなか挑戦できない状態でした。それが最近になって、ようやく少しずつ自分に没頭できる兆しが見えてきたんです。そのタイミングと重なって、「ちょっと具体的に、実際足を踏み入れてみよう、もう一度」と。
——それがシェイクスピア劇『リチャード三世』になったと。
中越:私も「なぜ?」と思ってはいるんですけど(笑)。もうちょっと、セリフだけでも困らないようなものを選べばよかったんですが。でもタイミング的に、バーン!と来た瞬間だったので、ここだなと。しかも主演が吉田羊さんですから。素敵な女優さんですし、九州の方でもありますし。羊さんと演出の森新太郎さんは『ジュリアス・シーザー』『ハムレットQ1』に続くタッグですが、おふたりが熱を入れてきたシリーズに飛び込んでみたいなと。
——森さんの稽古はハードだと言われているそうですね。(取材時は稽古開始前)
中越:至るところからそう聞きます(笑)。でも約10年ぶりの舞台だからこそ、その厳しい、みっちりとご指導いただける森さんとご一緒できたらいいなと思って、覚悟を決めました。怖くて、稽古に入る前からもう何度も夢に見ているんですけどね(苦笑)。でも自分自身、すごく楽しみです。
<取材・文・撮影/望月ふみ ヘアメイク/大須賀昌子 スタイリスト/岡本純子>
【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi
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