今年3月の初公判で、起訴内容を否認した斉藤被告。
初公判では“同意があった”主張で全面対決に
有名人の裁判で度々使用されてきた、東京地裁429号法廷。静寂に包まれた法廷にドアの開閉音が響くと、その奥から斉藤被告が入廷してきた。前回の公判と同様に、着込んだ風合いのヨレた黒色のスーツに、紺色のネクタイ姿。傍聴人を見渡すことなく、弁護側の横に用意された椅子に腰をかけた。初公判で斉藤被告は「私の行為にAさんが同意してくれていると思っていました」と、検察側の見立てを否定していた。
この裁判の争点は、①性的暴行があったのか否か、②斉藤被告は被害者のAさん(20代・女性)が同意していないことの認識(故意)があったのか否か、の2点。
検察側は、斉藤被告がAさんに路上に停車中のロケバスの車内で、3つの場面において性的暴行を加えたとして起訴した。起訴罪名の成立について、検察側はこのように指摘する。
「Aさんが斉藤被告からの突然の性的行為に恐怖や驚愕を覚えたうえ、ロケ中だったため時間に余裕がなかったことや、斉藤被告の芸能界での影響力から行為を断ると自身の不利益になると考え、同意しない意思を表明することが困難な状況にあった。そのことを斉藤被告も認識しており、故意も認められる」(検察側冒頭陳述より)
対する弁護側は、一部の起訴内容を完全否定したうえで、Aさんの「ありがとうございます」などの具体的な発言内容に触れた。そして犯行当時、斉藤被告はAさんに対して、強引な行為をしておらず、性的行為も受け入れられていたと認識していたとして、故意がないと反論した。
「斉藤さんに言い渡されるべき判決は無罪判決です」(弁護側冒頭陳述より)
番組ディレクターが証言台へ
今回の第3回公判の場面に戻ろう。この日の裁判では、検察側の有罪立証のために、事件当日に撮影していた番組のディレクターが出廷した。主に、番組制作や犯行前後にあった出来事について証言された。一方の斉藤被告は証人尋問中、今後の裁判に備えてなのだろうか。机の上にメモ用紙とペンを置いていた。
証人請求をした検察側から尋問がはじまった——。
斉藤被告は「人気者」、被害者は「一般の方」と証言
まず、斉藤被告らの出演者が決まった経緯について紐解かれた。検察側は、Aさんが性的行為を断りづらかった要因である「斉藤被告の芸能界での影響力」を確かめようとしたのだろうか。番組に出演した経緯について説明を求めた。「(斉藤被告は)やはり人気者でしたから、出ていただきたいという思いがありました。MCができる方を各芸能事務所にあたったところ、スケジュールが空いていたこともあり、被告人になりました」
一方で、過去に番組に出演した実績があることや、SNSでインフルエンサーとして活躍していたことから、Aさんにも白羽の矢が立ったという。
そんな中、検察側がAさんの「芸能人との差」について質問すると、証人はこう示した。
「我々からすると、SNSで活躍する一般の方という印象でした」
ロケバスは「楽屋のような場所」だった
続いて、事件当日の話になった。証言によると、この日のロケには約10名のスタッフが参加。ロケバスも2台用意され、1台に斉藤被告とAさん、そして証人であるディレクターが乗車したという。Aさんが斉藤被告と同乗することになった理由は、「他の出演者の送迎などの関係から」とのこと。証人は「Aさんから斉藤被告と同じロケバスを希望されたこともない」と断言した。
事件現場と化したロケバスの車内では、Aさんの後ろの座席に斉藤被告が座っていた。これは、Aさんの証言と同じだ。そして事件当日は、ロケバスが「楽屋」として使われていたという。
「被告人も人気者ですから、(カフェなど)わざわざ人目につくところに休憩しに行くことはないかなと思います」
事件は休憩中に発生した。証人を含むスタッフが、ロケの準備をするためにロケバスを降車した後に行われたと検察側は指摘している。
番組は「お蔵入り」に…
「ロケが終わり、編集をしている最中の、ロケから6日後でした。私とAさんの共通の知人から、Aさんが性被害に遭ったという連絡を受けたと聞きました。知人(筆者注:業界関係者)から連絡があった後に、AさんからもLINEがきました。すぐに上の者である番組プロデューサーに連絡をしました」
そしてこの事件を受けて、今回撮影したは映像はお蔵入りに……。
「いわゆる『お蔵入り』という形になりました。基本的に私たちや技術スタッフ、ロケバス、運転手さんのギャランティーやお店で飲食した経費など、損害になっているかなと思います」
弁護側は証人が“被害に気づかなかった”点を追及
一方で、検察側の有罪立証を崩そうとする弁護側は、証人に番組の出演者として候補に挙がった芸能人の名前を書かせるなど、細かく番組制作の事情について質問していた。さらに、Aさんから被害申告を受けた際の印象について尋ねた。「信じられませんでした。まずロケでそういうことに遭うこと自体、前代未聞ですし、はじめてのことだったので信じられなかったです」
弁護側はAさんが性的行為に「同意していたこと」を引き出そうとしたのだろうか。こんな質問をしていた。
「ロケ中、Aさんの体調や気分、様子がおかしいと思ったことはなかったんですね?」
証人は「Aさんの様子がおかしいような印象はなかった」と認めたうえで、そのことからも「事件が信じられない」と振り返っていた。
Aさんの証人尋問では生々しい証言も
第2回公判でのAさんの証人尋問では、検察側の有罪ストーリーに沿うような証言ばかりだった。例えば、「斉藤被告に故意がある」との主張を裏づけるようなものだ。
「斉藤からディープキスをされて胸を触られました。唇や歯で(斉藤被告の)舌が侵入してこないようにしたんですが、それでも舌がねじ込まれてしまいました」
さらに、起訴罪名の中で法定刑が最も重い「不同意性交等罪」が問われている“口腔性交”については、本記事では記載できないほどに細かく証言されていた印象だった。
「(斉藤被告から陰部を見せられて)すごくびっくりしたのと、本当に恐怖で身体が動かなかったです。
次回の公判は「5月13日」に指定
徐々に証拠や証言から裏づけられていく犯行。見通しは裁判で明かされていないが、今後の審理では、弁護側は証人尋問や被告人質問などで検察側の有罪ストーリーを崩していくものと思われる。次回の公判は、来週の5月13日(水曜)に指定された。まだまだ司法判断が下るまでには時間がかかりそうだ——。
取材・文/学生傍聴人
【学生傍聴人】
傍聴歴7年、傍聴総数1000件超。 都内某私立大の大学院に在籍中の現役大学院生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴をはじめ、有名事件から万引き事件など幅広く傍聴している。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行なっている。
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