昨年、世間を揺るがせたTOEIC不正受験事件では、組織的な替え玉受験やカンニングが発覚し、中国籍の大学院生など解答役やリクルーターなどが逮捕される事態にまで発展した。
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 こうしたなか、国内では別の試験のカンニング業者が暗躍し始めた。
手口と実情を探るため、業者に接触した!

手のひらに忍ばせたスマートウォッチを袖口からそっと出して……

「7月JLPT、緊急救済、焦っている人、ラッキーな方法で合格」

「日本語能力試験」に横行する不正行為…暗躍する“カンニング業者”の卑劣手口を告発
中国系SNSにあふれる、カンニング業者と思しき宣伝や広告
 2月頃から、中国系SNSでこうした広告がいくつも見られるようになった。JLPTとは、日本語能力試験のこと。外務省の外郭団体など複数の団体で運営する、日本語を母語としない人を対象とした最大規模の語学検定だ。いったい、この広告はどういう意味なのか。中国事情に詳しいライターの広瀬大介氏はこう説明する。

「これはカンニング業者の広告です。JLPTは5段階のレベルがあり、日本で働く外国人にとって就職や国家資格への鍵となる、日本政府お墨付きの試験です。最近この手の広告が増えてきたのは、昨年10月に入管法が改正されたからでしょう。経営・管理ビザの資本金要件が3000万円に引き上げられたことに加え、JLPTのN2(上から2番目のレベル)以上の日本語能力が求められるようになったのです」

 近年、国民感情が「移民反対」へと傾くなか、在留資格の運用や高度人材の選別をより厳格化すべく入管法が改正された。その影響で、都市部のガチ中華やガチインドなど本格外国料理店が減るのではとも懸念されており、賛否が渦巻いている格好だ。

「入管法改正を受け、JLPTの受験者数は増えています。7月の試験については、申し込み期限を10日以上も前倒しして締め切ったほど。就職や待遇面で有利になる技能実習生や留学生のほか、日本語能力の怪しい経営・管理ビザ取得者などが申し込んだ影響だと見ていいでしょう」(広瀬氏)

日本の試験会場では身体検査はされない

 さて、話を冒頭の広告に戻そう。JLPTのカンニング業者の手口や実態はどうなっているのか。
小誌記者は受験者を装い、業者とやりとりしてみた。

 まず、中国系SNS「小紅書」で“合格保証”を謳い、集客していた業者Xにコンタクトを取ると、WeChat(中国版LINE)に誘導され、音声メッセージで詳細が送信されてきた。

「カンニングはスマートウォッチか小型イヤホンで行います。試験が始まってしばらくしたら、そこに解答を送ります。金額的には前者が安くてオススメですよ。費用はN1とN2は2万元(約46万円)。イヤホン方式はプラス1万元になります」

 Xによると、試験前に手付金として半額を支払い、試験後に残金を精算するという。「契約書も作るので安心して」と慣れた様子だ。

 イヤホン方式が高い理由について、業者は「専用の小型イヤホンを中国から取り寄せる必要があるから」と説明。カンニング行為について試験運営側も警戒しているはずだが、「日本の会場ではわざわざ受験生の身体検査まではしないから大丈夫」とのこと。

 加えて、Xはなんと「4月のTOEICでも多くの学生がスマートウォッチ方式で高得点を得ました」と言うではないか。昨年6月、大々的に報じられたTOIEC不正受験事件では、計803人の試験が無効化される大騒動となったが、Xはこの事件への関与を堂々と成果として誇っていた。


試験中に送られてきた「一枚の画像」の正体

 次に当たった業者Yは、一見すると学習塾を思わせる文言で宣伝していた。DMを送ると、説明が始まった。

「我々は11年間、点数保証プロジェクトをやっています。実は私たちは塾ではありません。あなたがスマートウォッチかイヤホンを試験会場に持ち込んで、試験開始後にこちらから答えを送信する形で点数保証をします。私たちはJLPTのほか、EJU(日本留学試験)、TOEICなど各種試験での合格を保証しています。最近は日本のビザに関する新規定の影響で、問い合わせが急増していますよ。今後、値上げは避けられませんが今予約すれば価格を据え置きで対応します」

 Yは信頼を得るためか、実績を誇るかのように過去の受験生とのチャット履歴や出入金明細をタイムラインに掲載していたが、さらに小誌記者にスマートウォッチを使って不正する実演動画まで送ってきた(写真参照)。Yは最後にこう言い残した。

「日本語能力試験」に横行する不正行為…暗躍する“カンニング業者”の卑劣手口を告発
業者から送られてきたカンニングの実践動画。袖からすっと小さなスマートウォッチを出す手法を紹介。試験監督スタッフの監視から逃れるためのテクニックが事細かに解説されていた
「私たちの顧客で、昨年12月にJLPTを受験した人がいるのですが、前日にしっかりテレビ電話で“訓練”し、無事に156点を獲得して合格しています。安心して」

 最後に当たった業者Zは、XやYとほぼ同じ営業トークを展開していたが、フォロワーにしか公開していないモーメントにあった画像に戦慄した。数字が並んだメッセージの文面は、昨年12月のマークシート方式のJLPTの解答番号だというのだ。しかも送信日時は当日の試験時間中だった。
一枚の画像があれば、全問題の正解がわかってしまう。スマートウォッチを使ったカンニングは想像以上に簡単なようだ。

より深刻な不正が疑われる海外の試験場

 接触した業者は、主に日本国内の受験生を対象にしていたが、実はJLPTは多数の海外試験場が存在する。ここにも問題があると広瀬氏は説明する。

「JLPTは世界約90か国以上、270以上の都市で受験が可能です。途上国においては、試験関係者への賄賂や、結託した人間を会場に潜り込ませやすい。一部の国では金属探知機検査や巡回監視の強化が行われているようですが、カンニング業者の関係者が試験官として潜り込み、不正に加担するケースもあると聞いています」

 実際、業者Yが投稿していた、中国国内の受験者とのメッセージのやりとり内容には「中国国内に提携している試験会場があります。試験会場の関係者に根回しをして、あなたの解答用紙を差し替えます。あなたはただ試験会場に行き、形だけ参加すればいい」と書かれていた。

 カンニングが大きな“地下産業”として存在する中国では、技術もどんどん進化している。最近では超小型イヤホンに加え、偽装型スマートグラスなども出現しており、発見するのはますます困難になっている。

「日本語能力試験」に横行する不正行為…暗躍する“カンニング業者”の卑劣手口を告発
最近、中国ではスマートグラスとAIを活用した最新のカンニンググッズも登場しているという(出典:中国ECニュースサイト「什么值得买」)
 7月の試験で不正行為が蔓延しそうなJLPTだが、運営団体はどう考えるのか。
「カンニング業者の宣伝については、「SNSなどの監視を通じ、問題があれば削除依頼等しかるべき措置を取っているが、個別の案件についての把握の有無は公表しておりません」と担当者は回答。防止策については「実施しているが、具体的な対策については回答しかねます」とのことだった(運営団体のひとつ、日本国際教育支援協会・試験運営課)

 不正がはびこり、たちの悪い移民が増えることがあってはならない。そして何より、真面目に勉強して受験する外国人にとっても大迷惑な話だ。試験まで約1か月、一刻も早く対策を講じてもらいたい。

<取材・文・撮影/SPA!「日本語試験カンニング問題」取材班>
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