こんにちは、シューフィッターの佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。

Amazonで靴を買う人が増えています。すぐ届き、種類も多く、実店舗より安い商品も少なくありません。

スニーカーならナイキやアディダス、革靴ならリーガルなどの有名ブランドで、過去に履いていたことがある、店頭でも試したことのあるモデルを安く取り寄せるなら、かなり賢い買い方でしょう。

一方でAmazonには、街の靴店ではほとんど見かけない、知名度の低いブランドの格安靴も大量に並んでいます。しかも、レビューは星4以上。「軽い」「履きやすい」「値段以上」と絶賛されていると、つい信用したくなります。

しかし靴は、足を入れた瞬間の柔らかさや軽さだけでは判断できません。長く歩いたときに足が安定するか、濡れた路面で滑らないか、靴底がすぐ削れないか。こうした部分は商品写真や高評価レビューだけでは、なかなかわからないのです。

そこで今回は、「Amazonで5000円以下、レビュー評価が5段階中4以上の靴」を5足、自腹で購入しました。ウォーキング系3足、ビジネスカジュアル1足、革靴風1足です。

Amazonランキング1位でも屋外ではおすすめしにくい

Amazon「星4以上・5000円以下」格安シューズを5足買...の画像はこちら >>
1足目は、購入時2999円だった「gitzing」の超軽量スニーカー。28cmで片足約200gと、たしかに軽量です。
履き口にはパッドが入り、インソールも取り外せる。3000円以下としては、一見よくできています。

ただ、致命的な問題は靴底です。一般的なスニーカーには、地面に触れる部分へ耐久性とグリップを担うゴム製のアウトソールが貼られています。ところがこの靴には、それがまったくありません。底に凹凸模様はあるものの、クッション材がそのまま地面に触れる構造です。

これなら軽く、安く作れます。しかし削れやすく、濡れた床や路面では滑りやすい。低評価レビューにも「1か月もたなかった」「外で滑る」といった声がありました。「完全に室内限定で履く」ならまだしも、ウォーキング用・通勤用としては全くおすすめできません。

見た目は個性的だが足がまったく安定しない

Amazon「星4以上・5000円以下」格安シューズを5足買って検証。靴のプロが履いてわかった“当たりとハズレ”
筆者私物。XXG スニーカー
2足目は、購入時2798円の「XXG」スニーカー。靴底が「ねじれパン」のような形で、似たデザインをSNS広告などで見た方も多いでしょう。ニット状のアッパーは通気性がよく、スリッポンのように脱ぎ履きできます。


しかし、かかとを支える芯がほぼありません。履いて体重をかけた瞬間から足が左右にぐらつき、靴ひもを締めても改善しませんでした。クッションも手で簡単につぶれるほど柔らかく、短時間は気持ちよくても、長く歩けば足が疲れやすい構造です。

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簡単に捻れてしまう
そもそもちょっと力を加えただけでこれだけ捻じれては、お話になりません……。もはや靴という名のオブジェ。さらにアウトソールもなく、室内でも滑りを感じました。商品説明にはグリップや耐久性をうたう記載がありましたが、実物から受けた印象とはかなり違います。つま先の反り上がりも少なく、小さな段差でつまずきやすい点も気になりました。ウォーキングやランニング目的なら、個人的には「完全にナシ」です。

4444円のムーンスターは文句なしの当たり

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筆者私物。ムーンスター 晴雨兼用ウォーキングシューズ
3足目は、ムーンスターの晴雨兼用ウォーキングシューズ。購入時4444円でした。これは結論から言えば、かなりよくできています。

かかとの芯がしっかりしており、履き口とベロにも十分なパッドがあります。
くるぶしに当たりにくいよう、履き口の内外で高さを変えているのも丁寧です。靴ひもを通す部分は足を面で包みやすいループ式ですが、負荷が集中する一番上だけは金属のハトメで補強されています。

もちろん靴底にはゴム製アウトソールがあり、曲がるべき位置には屈曲溝も入っています。クッションは柔らかすぎず、長時間歩行向き。洗面台でつま先へ「2分間」かなり強めの水をかけましたが、内部への浸水はありませんでした。完全防水ではないものの、日常の雨には十分対応できそうです。

ただし幅は4Eで、かなり広め。細い足の人には合いません。またサイズも大きめなので、できれば試着をおすすめします。条件が合う幅広の方なら、今回の5足で最も安心してすすめられる一足です。

仕事用なら3850円のハンズフリー靴もアリ

4足目は「SOARHOPE」の防水スニーカー。購入時3850円で、立ったまま履けるハンズフリー仕様です。表面は革らしく見えますが、実質的には合成皮革。
革特有の経年変化は期待できない一方、軽い雨を弾き、汚れも拭くだけなので仕事用には扱いやすいでしょう。

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筆者私物。SOARHOPE 防水スニーカー
履いてみると、かかとの収まりやクッションは価格以上。インソールも外せます。弱点は、靴底の大部分でクッション材がむき出しになっていること。毎日長距離を歩くなら耐久性には不安がありますが、1年程度で履きつぶす仕事靴と割り切るなら「アリ」です。

3980円の革靴風シューズは用途限定

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筆者私物。Foxsense ビジネスシューズ
最後は「Foxsense」のビジネスシューズ。こちらも革靴カテゴリーでAmazonランキング1位でした。購入時3980円で、見た目は革靴ですが素材は合皮、底は軽いスポンジです。ハンズフリーで脱ぎ履きでき、硬い革靴のような慣らしも必要ありません。

ただし、これもアウトソールがなく、毎日歩けば底の消耗は早いでしょう。インソールも接着されていて外せません。また、「革靴」を謳っておきながら「100%合皮」というのも引っ掛かりました。
毎日の通勤靴にはすすめませんが、冠婚葬祭など年に数回しか革靴を履かない人なら選択肢にはなります。サイズはかなり大きく、目安としてスニーカーより1cmほど下げる必要がありました。

*  *  *

今回わかったのは、Amazonの高評価がウソだらけということではありません。購入直後に「軽い」「柔らかい」「履きやすい」と感じれば、星5を付ける人がいるのも理解できます。

ただし、その評価と、長時間安全に歩けるか、雨の日に滑りにくいか、長持ちするかは別問題です。格安靴を選ぶときは星の数だけでなく、かかとに芯があるか、靴底に別素材の滑り止めが付いているかを、商品写真で確認してください。写真で靴底がよく見えない商品は、それ自体をひとつの警戒材料にしていいでしょう。

安さには理由があります。削っていいのは値段であって、安全に関わる構造ではありません。

<文/佐藤靖青>

【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。
靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』。著書『予約の取れないシューフィッターが教える正しい靴の選びかた』
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