株式投資の銘柄選びにおいては「国策に売りなし」と言われる格言があるように、国の方針から投資先銘柄を考えるとよいとされている。資産億超えの個人投資家、結喜たろう氏は「政府は日本のアニメ、ゲーム、マンガ、音楽、映画などコンテンツIPに投資を行い世界的なコンテンツに育てることを画策している」と語る。
億超え投資家が着目する国策となったコンテンツIP関連銘柄にはどんな銘柄があるのだろうか。その視点をお届けする。
政府が「海外売上20兆円」を目指す日本のアニメ・ゲーム産業。...の画像はこちら >>


日本のIP、海外売上20兆円を目標に

資産億超えの個人投資家の結喜たろう氏。株式や為替を20年以上取引し、リーマン・ショックやアベノミクス相場も乗りこなしてきた。その投資手法は、市場にとって話題になる大きなテーマから銘柄を絞り込み、決算発表から好業績が見込まれる株を売買するという至極堅実な方法だ。

億超え投資家の結喜氏はDX関連、サイバーセキュリティ、フードテックなど政府が重点的に投資する国策銘柄に着目してきた。今回、結喜氏が見ている日本が誇るマンガ、アニメ、ゲーム、音楽などのコンテンツIPであるという。

「日本のアニメやゲーム、マンガは日本の成長を支える重要な輸出産業として位置付けられています。経済産業省は2033年までに日本発コンテンツの海外売上20兆円という目標を掲げている。そのために進める支援事業が『IP360』です。生み出された作品の海外向け翻訳やローカライズ、海外への流通や宣伝の強化のための支援です」

政府は単にアニメやゲーム作品単体への補助を出すのではなく、日本のコンテンツを世界に発信して継続的に利益を生む産業へ育てようとしているのだ。

「特に今回注目したいのは、政策が単なる構想に留まっていないこと。大型作品の製作支援、流通プラットフォーム拡大支援、海外展開支援など具体的な事業の採択結果を公表しており、大手企業だけでなくさまざまな制作会社やコンテンツ関連企業の名前が並んでいます」

コンテンツIPの本命銘柄とは?

では、実際に結喜氏はどんな銘柄を見ているのだろうか。
まずはIGポート(東S・3791)が業績的には良いと言う。

政府が「海外売上20兆円」を目指す日本のアニメ・ゲーム産業。億超え投資家が注目する「国策関連株」3銘柄
IGポート〈3791〉
「同社はアニメ制作を手掛けるプロダクション・アイジーやウィットスタジオを持ちます。プロダクション・アイジーは『攻殻機動隊』など、ウィットスタジオは『SPY×FAMILY』などの制作に携わってきました。両社がIP360の大型作品制作支援に採択されています。プロダクション・アイジーは、大型劇場作品の制作に向けた機材環境の更新や制作工程の効率化、クリエイターの制作環境改善などを計画しています。ウィットスタジオは、新作劇場アニメーションの制作において、作品の品質向上や制作環境の改善、クリエイターへの報酬確保を打ち出しています。単に作品を増やすだけでなく、日本のアニメ製作会社が高品質な作品を継続的に生み出せる体制を整える基盤を創るところに費用が使われる予定です」

足元の業績も好調だ。2027年5月期第一四半期決算では、売上高33.06億円、前年同期比7.9%増、営業利益3.42億円、前年同期比約74%増と大幅増益である。政府の制作支援を受ける会社が足元の決算でも好調なのは興味深いと結喜氏は言う。

もう一つ氏が気になると話すのは、『ヴァンガード』『BanG Dream!(バンドリ!)』など自社IPを多数保有しており、ゲームやライブなど多面展開をしているブシロード(東G・7803)である。

政府が「海外売上20兆円」を目指す日本のアニメ・ゲーム産業。億超え投資家が注目する「国策関連株」3銘柄
ブシロード〈7803〉
「ブシロードはトレーディングカードや、アニメ、ゲーム、音楽ライブなど幅広く手掛けています。大きな特徴は一つの作品をさまざまな商品やサービスへ展開できること。
今回、IP360では『BanG Dream! Ave Mujica prima aurora』の海外ローカライズ事業が採択されています。映画を12言語対応させて、SNSや海外展示会、広告を通じて海外ファンを増やす計画です。日本国内で人気がある作品でもそのまま海外で成功するとは限りません。言語の壁や宣伝、販売ルートの確立など乗り越えるハードルがある。それを政府が支援するわけです」

ブシロードの2026年6月期の業績は売上高578.23億円、前期比2.9%増、営業利益47.54億円、前期比2.3%減である。営業利益は小幅減益だが、売上高は過去最高。2027年6月期はこれを上回る売上と利益を計画しているのも注目ポイントである。

さらに隠れたコンテンツIP銘柄として、氏はGunosy(東S・6047)も挙げる。

政府が「海外売上20兆円」を目指す日本のアニメ・ゲーム産業。億超え投資家が注目する「国策関連株」3銘柄
Gunosy〈6047〉
「元々、ニュース配信アプリの印象が強い会社ですが、実はゲーム攻略サイト『Game8』を運営する100%子会社を保有しています。今回、政府のIP360 ではGame8の海外流通拡大事業が採択されました。日本のゲームタイトルについて英語特集記事を発信したり、海外向け広告を行う予定です。コンテンツ産業支援のなかにはアニメ制作会社やゲーム開発会社だけでなく、知ってもらうための発信にも予算が付くのです」

とはいえ、足元でGunosyの業績には注意が必要だ。


「10月14日に発表した2027年5月期第一四半期決算は売上高14.34億円、前年同期比14.5%減、営業損失4900万円となっています。営業利益は黒字から赤字に転落しているので、必ずしも好業績とは言えません。とはいえ、今後政府の海外展開支援が新しい収益機会に結びつくのかは注目です。ある意味で3銘柄のなかでは政策期待先行と言えるでしょう」

今回は政府のIP360で自社またはグループ企業の事業が採択された上場企業3社を取り上げた。しかしながら、採択されたからといって企業業績がそのまま伸びるわけではないのは留意が必要だ。支援対象の事業が会社売上に占める割合は異なる。投資を行うならば、今後の政府支援の内容や、作品の海外販売や配信、売上高の拡大までみておきたいところ。今後、どのように収益が伸びていくのか注目したい。

<構成/上野智(まてい社)>
※株式投資はご自分の判断と責任に基づいておこなってください。

【結喜たろう】
個人投資家・一級建築士/工学修士 建築設計事務所勤務を経て独立。 空間建築デザイン業務と並行しながら、個別株を中心に資産運用を実践。不況により事業が厳しい状況に追い込まれる中、趣味で続けていた投資が経営の立て直しに大きく貢献し、億トレーダーの仲間入りを果たす。
個人投資家グループや証券会社などからの講演依頼も多く、四半期成長率を重視した銘柄選定と、チャート分析に基づく論理的な売買手法に定評がある。著書『四半期成長率とチャート分析』(パンローリング社刊)は2024年ブルベア大賞を受賞。ラジオNIKKEI『きらめきの発想』準レギュラー。 パンローリング主催『ファクター分析投資スクール』担当講師。
X(旧Twitter):@tarouyuuki0322
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