◆JERA セ・リーグ 巨人6-4阪神(7日・東京ドーム)

 巨人・坂本勇人内野手(36)が4番・岡本離脱の緊急事態を救った。不振による2軍調整から緊急昇格し、4回に決勝の適時二塁打。

吉川を第92代4番に据えた打線が、9安打6得点と機能した。山崎伊織投手(26)は2回に今季初失点し、開幕からの連続イニング無失点は36回で止まるも、5回4失点でリーグトップタイの5勝目。チームは本拠での開幕からの阪神戦連敗を5で止め、首位に並んだ。岡本が再検査の結果、左肘じん帯損傷で全治3か月程度の重傷だったことが判明したが、チーム一丸で乗り越えていく。

 見慣れていたはずの光景が、目にしみた。坂本にとって昨年8月以来のヒーローインタビュー。その瞳に、オレンジタオルを掲げるファンの顔が映った。「久々に1軍の舞台で歓声を受けられてうれしいです」。オープン戦と2軍戦を含め計107打席目で初の長打が、決勝の適時二塁打。増田陸、泉口、浦田ら若手がベンチに残り、G党とともに帰ってきたヒーローの姿を目に焼き付けた。

 2―2の4回2死一塁。内角低めに入ってきたスライダーにやや泳がされながらも体の前でさばき、左翼線へ運んだ。

「きれいなヒットでもないですし、まだまだかなと思うんですけど。僕らしいレフト線のツーベースだったのでもっと打てるように」と代名詞の二塁打が、復活ののろしとなった。二塁上で2度、ガッツポーズを見せる姿も「らしい」シルエットだった。

 前日6日の阪神戦(東京D)で岡本が負傷離脱。自身は無期限の2軍調整を続ける中で「(昇格が)『あるな』と思ってました。巨人軍の4番で1人ですごい背負いながら戦っている姿を見てましたんで。和真の代わりにはなれないですけど、何とか全員でカバーしながら帰ってくるまで頑張ります」。名門の看板を背負うプレッシャーを分かち合える後輩には試合前に連絡。もう1人の千両役者が、巨人を救った。

 恵みの雨から復調への光明が差し込んでいた。イースタン12試合で放った全9安打が単打。いい角度で上がった打球も「全部、外野フライだから」と、スタンス幅や打席の立ち位置を調整しながら試行錯誤を続けていた。

打球に力強さを生み出すために数々の助言を受けるなかで、雨天でG球場の室内調整となった6日の練習中に、踏み込む左足の使い方に好感触を得た。電撃昇格となったこの日は、試合開始7時間前の午前11時ごろに野手一番乗りで球場入り。左翼方向へ引っ張りまくるフリー打撃を見た関係者は「10年若返った」と目を丸くした。

 背番号6に復活の一打が飛び出した4回にチームは一挙4得点。今季、東京Dの阪神戦6試合目で待望の初勝利。NPB通算460本目の二塁打、通算777本目の長打は、特別な1本となった。「通算は過去のことなので、これからまだまだ打てると信じてやっている。ファンの方からの期待は裏切ってますけど、もっと打てるようにやっていきます」。坂本が打てば巨人は乗る。チームに大きな力を与える一打だった。(内田 拓希)

◆高橋由伸Point 空気変えた!一挙4点呼んだ

 調子うんぬんではなく、坂本が気持ちで打ったタイムリーだ。岡本がいなくなり、自分が呼ばれた。

その意味を十分に分かっていたはず。4回2死一塁のカウント1―1から、打てる球を連続してファウル。まだ、頭の中のイメージと実際にズレがあるようだが、この場面はそんなの関係ない。フルカウントからスライダーに食らいつき、何とか先端で拾ってみせた。では、肝心の状態はどうなのか。本人の中では強く打とうという意識があるのか、トップから振り出す時にやや力みを感じ、ミートポイントに力を集約できていない。しかし、そんな中でもチームの空気を変えた。この日は阿部監督の期待通りだった。(スポーツ報知評論家・高橋 由伸)

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