あの時の姿ではない。戸郷がそれを証明する。
「過去のことなので。新しい記憶でね、いいものを出せたらいいなと思います。勝ちがまだ1個もついてないので、その日の100%を出せれば一番かなと思う」
因縁のマウンドに、32日ぶりに上がる。今季初めて敵地で先発した4月11日・広島戦は3回1/3で被安打10、自己最悪10失点で敗戦。屈辱のKO直後に2軍降格が決まった。「あまり寝られなかった。こんなに打ち込まれて2軍に落ちるのは初めて」と語った悲劇の一日を乗り越え、前回5日・阪神戦(東京D)で1軍復帰。今は心の火も完全に戻り「全く何ともないですね。(開催が)1年に1回とかだったら多少あるでしょうけど、マツダは何回もやる球場。広島とも何カードも対戦する。マイナスな気持ちは全くない」と力強い。
「投」の柱としても負けられない。不動の4番・岡本が左肘じん帯損傷で長期離脱。主砲を欠くチームは2カード連続負け越し中の現状だ。シーズン143試合、投手、野手のどちらかが苦しむ時は必ずある。「助け合いの中で苦しい時こそ投手が粘って勝ちにつなげてあげられればお互いの奮起になる。選手一人ひとりが思っていることはたくさんあると思う」。開幕投手を務めた3月28日・ヤクルト戦(東京D)では打線が最大5点差をひっくり返してくれた。「打」の柱の不在は、エースがカバーする。
開幕から4戦で0勝3敗、防御率8・31。6回3失点だった1軍復帰戦から中7日で迎える。12日も入念なキャッチボールを行い「状態を高めるために、よりいいものをつくり出そうと1週間やってきた」。最速152キロと直球の威力も戻ってきた背番号20。
(堀内 啓太)