俳優の吉沢亮が歌舞伎俳優役に挑戦した主演映画「国宝」(李相日監督、6月6日公開)が18日(現地時間)、南フランスのカンヌで開催している第78回カンヌ国際映画祭の監督週間で公式上映され、横浜流星、渡辺謙、李監督と出席した。

 吉沢は上映前に「ボンジュール! 本日は映画に携わっている者にとっての憧れの地で、世界中の皆さまに、日本の伝統芸能である歌舞伎を題材とした映画をお届けできることを非常に光栄に思います」とあいさつ。

「僕と流星が1年半かけて歌舞伎というものと向き合って、どうにか完成させた作品です。皆さまがどのようにこの作品を見てくださるのか、非常に不安もありますが、すごく楽しみにしております。今日は最後までお楽しみください」と呼びかけた。

 吉沢、横浜、渡辺、李監督は820人の観客と鑑賞。上映が終わると、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれ、歌舞伎の大向こうさながらに「KIKUO!」の声が響いた。約6分間にわたる熱狂的なスタンディングオベーションが続き、いつまでもなりやまない拍手と歓声に4人は互いに手をとりあい、高く上げ、感謝を表現した。吉沢と横浜は熱く抱き合い、李監督と渡辺は握手。お互いを称えあい、喜びを分かち合っていた。

 吉沢は「我々がこの作品に込めた熱量みたいなものをしっかり受け取ってくださって、これだけの盛り上がりを見せてくださり、すごく胸に来るものがありました」と感慨深げ。横浜は「見終わった後の鳴りやまない拍手、あの光景はこれから先も忘れないと思いますし、本当に役者をやっていてよかったなと思える瞬間でした。ありがとうございます」と思いを込めた。

 渡辺は「最後に喜久雄(吉沢)が見た風景を僕らみんなで見させてもらった、そんな気がしました。

ちょっとやっぱりここ(胸)が震えました」。李監督は「(上映の)最後の最後で、ものすごくちゃんと我々が込めたものがすべて届いている、伝わっているという感触がダイレクトにあって、震えが来る感じがしました」と興奮気味に語った。

 吉沢ら4人全員が目に涙をにじませ、観客に感謝。ロビーを去る際にも大きな拍手が起こった。現地の観客は「とても面白かったです。私が予想していた以上のものでした。この映画は歌舞伎と日本文化に対してのいい発見になりました」「シンプルにとても素晴らしくて、美しい日本文化の発見がありました。映画の持つリズムのおかげで、私たちも歌舞伎役者になっているような気分で鑑賞し、とても素晴らしい3時間の体験でした」などと好意的に受け止めていた。

 ◆「国宝」 任侠(にんきょう)の家に生まれながら、上方歌舞伎の大物俳優・花井半二郎(渡辺)に引き取られ、女形の花井東一郎として芸の道に人生をささげる立花喜久雄(吉沢)の壮大な一代記。喜久雄は半二郎の息子・花井半弥(大垣俊介=横浜)と切磋琢磨(せっさたくま)していく。血筋と才能、歓喜と絶望、信頼と裏切り、もがき苦しむ壮絶な人生の先にある感涙と熱狂を描く。2時間55分。

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