◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 いた。5月13日。

炎天下のジャイアンツ球場。坂本勇人は外野ポール間を、ひとり黙々と走っていた。故障離脱した岡本和真に代わって1軍に緊急昇格したが、5日間で2軍へ逆戻り。さすがにメンタルが…。だが、杞憂(きゆう)に終わった。

 10年ぶりに取材現場へ復帰した。巨人担当を務めたのが07~10年。社内勤務などを経て、また現場に出るようになったのが21年だ。今の仕事はYouTube。「報知プロ野球チャンネル」の企画や撮影、編集などを担当している。

 毎日通い詰めたG球場へ、また足を運ぶ日々。あの頃の選手はほとんど引退した。

ペンをビデオカメラに持ち替え、現場をウロウロしていると声をかけられた。

 「あれ? もしかして橋本さん? 何してるんすか」。声の主は坂本だった。21年5月。右膝負傷のためファームでリハビリを始めたばかりだった。

 当時、特に深い親交があったわけでもない。てっきり、もう覚えていないと思っていた。しかも体重も15キロ増。「ダメっすよ。お酒飲む時は食べ過ぎたら。橋本さんももう結構なベテ(ラン)でしょ? 僕も気をつけてますもん」と説教まで。あの勇人が…。

オフのイベントでスーツのネクタイが結べず、代わりに結んであげたこともあったっけ。あどけなかった青年は、球史に名を残すベテラン選手になった。

 「これからまだまだ打てると信じて普段からやっているんで」。先日のお立ち台でのセリフにはグッときた。まだまだ先になりそうだけど、いつかうちのチャンネルに出演を…。

 「イヤっすよ。めんどくさいっすもん」。そう言って断られそうだけど。(巨人動画担当・橋本純己)

 ◆橋本 純己(はしもと・じゅんき) 2002年入社。近鉄、阪神、中日などを経て巨人担当。

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