首位の阪神は、178得点と121失点がともに12球団トップで、盗塁数も楽天の54に次ぐ42。すでに昨季の41を上回った。

19~23年は盗塁数5年連続リーグトップで、昨季はリーグ5位。1年でV字回復した要因は―。阪神担当の直川響記者が「見た」。

 阪神の“盗塁改革”がすごい。52試合消化時点で42。昨季の41を超えた。過去3年の同試合消化時は22年は36、23年は27、24年は17で例年以上のハイペースだ。成功率も昨季の53・9%から80・8%に良化し、リーグトップ。現役時代に5年連続盗塁王のOB赤星憲広氏が「(成功率)7割から7割5分を超えないなら、盗塁しない方がいい」と助言した基準をクリアしている。リーグトップ11盗塁の近本が「藤川監督が走っていこうと掲げている」とサインが増えたことも要因だが、それだけではない。

 盗塁王5度の近本、中野を筆頭に走れる選手は多い。ただ、今季はひと味違う。

筒井外野守備兼走塁チーフコーチは「『僕は(盗塁は)関係ない』という選手をつくっていない」と力説する。クリーンアップの3人は昨季0だが、佐藤輝は5で大山は3、森下は1。佐藤輝は13本塁打、37打点がリーグトップで、球団史上初の本塁打王&2ケタ盗塁の可能性がある。昨季10人の成功者が15人に。ミーティング量も増え、高い意識が全員に浸透している。

 1年目の21年に30(失敗2)で盗塁王に輝いた中野は、昨季わずか6盗塁で失敗が7度。帰塁がうまく、新人年にリード幅を広げたことで、16年のヤクルト・山田と並ぶ盗塁王の歴代最高成功率93・8%だったが「年々、スタートを切る勇気がなくなっていた」と、メンタル面が課題だった。今季はリーグ4位タイの7盗塁(失敗2)。筒井コーチは「どうすればチームの勝利に貢献できるかを深く考えられるようになった。(盗塁に)挑戦しないとアカンとなっている」と、成長に目を細める。春季キャンプで臨時コーチの赤星氏にメンタルの重要性を説かれた中野も「技術は変わっていない。1年目に近い感覚でスタートを切れている」と胸を張る。

 みんなが走る。走れる選手はもっと走るのが藤川阪神。積極的な盗塁が交流戦でも猛威を振るいそうだ。

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