◆58年9月19日(後楽園)
現役時代の長嶋茂雄さんは、抜群の勝負強さでファンの記憶に刻まれる名場面を数多く残してきた。公式戦2186試合、日本シリーズ68試合の中から、ベースボール・アナリストの蛭間豊章記者が12試合のメモリアルゲームを厳選した。
◇ ◇ ◇ ◇
前代未聞の珍プレーで28号アーチをフイにした。1―1の5回、長嶋は鵜狩から左中間にアーチをかけ、ダイヤモンドを一周。ベンチに戻ろうとした。
ところが、藤井弘一塁手が、一塁ベースの内側を走って踏んでいないとアピール。投手から一塁にボールが送られ、アウトになった。本塁打が一転、記録は前代未聞の投ゴロとなった。
当時の新人本塁打新記録となるはずの28号がフイになった長嶋は「一塁ベースは踏んだつもりだった。いい感じではじき返した打球がレフトに飛んでいき、『よし、三塁打だ』と思って全力疾走したんだ」と振り返った。それでも翌日の阪神戦で28号を放って「そのときはゆっくり下を見ながらべースを回ったよ」とユーモアたっぷりに語った。
もっともシーズンが終わってみれば、ラスト9試合に不発で29号止まり。打率3割5厘、37盗塁をマークしていただけに、プロ野球4人目となる「3割、30本塁打、30盗塁」は幻となった。
◇58年9月19日(後楽園)
広島 010 000 201―4
巨人 001 000 100―2
勝 鵜狩
敗 安原
本 大和田12号、13号2ラン(広)、広岡12号(巨)