名門・静岡の磯部健士郎投手(3年)は、同校OBで県内強豪校を率いて多くの実績を残した磯部修三さん(85)を祖父に持つ。父は磐田南監督の磯部祐さん(49)。

夏を戦い抜く主力投手陣の一人として、技巧派左腕は「自分が力になれれば」と、2021年夏以来の甲子園出場に貢献することを誓った。

  静岡の高校野球で「磯部」といえばピンと来る人も多い。「OBの方から『お孫さん? 頑張ってね』と言われますが、プレッシャーはないです」と磯部は笑った。07年、祖父・修三さんが総監督を務めた常葉菊川(現常葉大菊川)がセンバツで優勝した約2か月後に生まれた。当然、記憶はないが、導かれるように野球を始め、静岡高に入学した。

 決め手は祖父の存在ではなく、21年夏の甲子園に出場した当時のエース・高須大雅(明大4年)に憧れたことだった。猛勉強の末、県内屈指の進学校に一般受験で合格。親元を離れ、下宿生活を送りながら野球に打ち込んでいる。

 祖父は1978年センバツで浜松商を率いて全国制覇した後、常葉菊川では監督として04年にセンバツ初出場を果たした。現在は孫の練習試合を観戦することもある。昨夏の大会前には、投球時に体が開く癖を改善するため、テイクバックの助言をした。「大化けするタイプではないが、力を出し切れる子。

敗戦を食い止める“防波堤”のような存在になってくれれば」と期待を寄せた。

 父・祐さんは磐田南監督として、今春の県大会で母校を32年ぶりの4強に導いた。息子は「悔しかった。夏は負けません」と刺激を受けていた。直近で練習試合も行っており、父は「下手くそだったところから、それなりの球を投げるようになった」と成長に目を細めた。

 チームには最速145キロ左腕のエース吉田遥孔(はるく、3年)を筆頭に主力4投手がそろい、磯部もその一角を担う。入学時から体重は約20キロ増え、138キロまで最速を伸ばした。「(夏4強で)去年の先輩も、もう少しのところだった。今年は絶対勝ちきって甲子園に行きたい」。世代を超えて「磯部」が聖地に戻るため、腕を振る。(伊藤 明日香)

  ◆磯部 健士郎(いそべ・けんじろう)2007年6月15日、磐田市生まれ。17歳。

長野小2年の時に磐田南クラブスポーツ少年団で野球を始め、南部中軟式野球部でプレー。173センチ、78キロ。左投左打。家族は両親と姉、兄、弟。血液型O。

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