◆日本生命セ・パ交流戦 2025 ロッテ2×―1巨人=延長10回=(5日・ZOZOマリン)

 構えたミットに寸分狂わず投げ切った。113球目。

山崎は外角153キロで池田に空を切らせ、ZOZOのマウンドで仁王立ちした。続投した9回を9球で退け、3安打1失点、無四死球7奪三振。同点のまま降板してリーグトップタイ7勝目はお預けとなったが、「投げた感じはよかった。すごく自分のピッチングに集中して勝負がしっかりできたと思う」と意地を見せた。

 2年ぶり、不慣れなZOZOでも「投げやすかった」と、特有の強風を巧みに利用する器用さが光った。バックネットに当たってはね返る向かい風により、変化球のブレーキが利く同球場。スライダー、シュートなど5種の変化球から有効な球を早めに判断し、序盤は落差十分のフォークを連投した。3回に最遅87キロのスローカーブを右翼席まで運ばれた直後は自ら声を張ってカツを入れ、4~6回は3者凡退。ギアを入れ直した。

 直球は今季最速154キロ。8回まで初球ストライク率85%でテンポよく放り、今季初対決のロッテ打線に考える隙を与えなかった。開幕から9戦全てでコンビを組んできた甲斐が当日に体調不良となり、岸田と組んだが「今週はすごくキャッチボールからよかった。

その流れで」と安定感は健在。阿部監督も「素晴らしい投球だった」とほめたたえた。

 勝つ。その一心だった。山崎の母・美佐さんは長嶋さんの大ファンで、この日の舞台はミスターの故郷・千葉。「全力で戦う」。自己最速にあと1キロと迫るなど、気迫に満ちた投球で種市と白熱の投手戦を演じた。

 6勝1敗、防御率1・20で勝率8割5分7厘。結果で示す5年目だが、振る舞いでも投手陣の柱に成長している。4月下旬の練習中、堀田に声をかけた。「ローテに入って、今年は一緒にハワイ行こう。ハワイでゴルフしよう」。

温かい一言は後輩の気持ちをグッと引き上げた。昨年のリーグ優勝旅行に不参加だった2人。「チームに貢献して伊織さんと一緒に行きたいと思いました」と堀田は感激した。モチベーターとしても仲間を支え、引っ張る存在になりつつある。

 首脳陣も「伊織に何とか勝ちを」との思いで9回を託したが、熱投実らずチームは敗戦。「(状態を)維持して、来週もいけるよう頑張ります」と山崎。気持ちはもう、次戦へと向かっていた。(堀内 啓太)

 ◆高木豊Point 山崎は最高の投球を見せてくれた。勝たせてあげたかった。先頭打者を1度も出していない。フォームも理想的。脱力してフィニッシュの時だけ力を入れる。

ZOZO特有の風もうまく利用して投げていた。ただ3回、藤原に本塁打を浴びたカーブ。あれば失投というより、やってはいけないことだったね。ノーステップで打つ藤原は、スローボールでも体勢を崩されにくい。しかも「カーブ」と分かるような投げ方だった。あれで1点を失ったのは、もったいなかった。(スポーツ報知評論家・高木 豊)

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