◆日本生命セ・パ交流戦 2025 巨人1―4日本ハム(19日・東京ドーム)

 このまま終わるわけにはいかなかった。大城卓が一振りで快挙を阻止した。

4点を追う9回1死。カウント1―2から、無安打無得点投球を許していた北山のフォークを捉えた。久しぶりの感触が心地いい。鋭く振り抜いた打球は右翼席へ着弾。「何とか食らいつきました。いろいろな球種を頭に入れてコンパクトにいった」。待望のチーム初安打となる3号ソロで、ノーノーを阻止した。大歓声とどよめきに包まれる中、ゆっくりとダイヤモンドを一周した。

 もどかしい時間を過ごしてきた。開幕からベンチスタートの日々。4月22、23日の中日戦(東京D)で2試合連続アーチを放ったが、そこから快音が止まった。試行錯誤を繰り返し、時に全体練習とは別に、おもりを持ちながら外野でポール間走を実施することもあった。

「気分転換に。自然を感じようかな」と冗談交じりに話したが、流れを変えようと必死だった。それでも打率1割4分9厘と低迷。5月24日には出場選手登録を抹消された。

 ファームでは己を見つめ直す日々。「橋本(2軍打撃)コーチに打ち方だったり、考え方だったりのアドバイスをいただいた」。打撃フォームと思考を整理。6日に1軍昇格すると13日のオリックス戦(京セラD)で27打席ぶりの安打を放つと、この日約2か月ぶりのアーチを描いた。

 日頃の準備が実を結んだ。守備では途中からの出番ではあるものの、5月13日の広島戦(マツダ)以来となる捕手出場。「横川も(1軍で)久しぶりだったので、テンポよく」と2番手・横川をリズムよく引っ張り、崩れかけた試合を立て直した。実松バッテリーコーチは「試合に出場しない時でも、ベンチで配球を考えながら試合に入ってくれている」と来たるべき機会に備えて最善を尽くす背番号24の姿勢をたたえた。

甲斐、岸田、小林ら実力者がそろう捕手陣で強打の大城卓が復調すればチームにとっても大きい。土俵際での一撃を復活への号砲とする。(宮内 孝太)

 ◆宮本和知Point

 2回2死一塁、8番・上川畑の先制二塁打は、初球の甘い直球を捉えたものだった。次打者は普段、打席に立たない投手の北山。バッテリーとして防げた1球、1点だった。3回には、今の打線を考えると重い3失点。交流戦に入って、パ・リーグを最もよく知るはずの甲斐の先発試合で1イニング複数失点が目立っている。チームの流れがよくない今は、岸田や、9回の一発で意地を見せた大城卓を積極的に使ってもいいかもしれないね。(スポーツ報知評論家・宮本 和知)

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