◆日本生命セ・パ交流戦 2025 巨人1―4日本ハム(19日・東京ドーム)
歓声と悲鳴が入り交じった飛球を祈るように見つめた。ノーヒットノーランを継続して迎えた9回1死。
「今日は悔しくて眠れないかもしれない」
それでも、7回2死で四球を与えるまで完全だった圧巻の内容に試合後は「意識するなと言われても無理なくらいすごい雰囲気。そういった中で投げられて幸せ」。昨年の広島・大瀬良以来の快挙は逃したが、9回1安打5奪三振完投で5勝目。防御率1・15は、西武・今井を抜いてリーグトップに浮上した。
新庄監督の秘蔵っ子だ。21年ドラフト8位。支配下全体では、77人中76番目の“ブービー”指名だったが、1年目から開幕投手に抜てきされ、シーズン途中には守護神を任されるなど3勝5敗9セーブ。指揮官は「俺の見る目があった。ファームのブルペンで3球見ただけで1軍に上げた意味が分かってくれたかな」とご満悦で当時を振り返り「オーマイガッシュ。あ~悔しい。今日寝れるかな」と第一声。
トレーニング法などで圧倒的な知識を持ち「教授」の愛称で親しまれる。エクササイズや呼吸法を研究し、ホームセンターで購入した機材を組み合わせ、自作のトレーニンググッズを開発するほど。睡眠にもこだわり「立ち姿勢に近い形で寝たい」と枕を使わず寝るなど、研究を重ね自身の投球への進化につなげてきた。
新庄チルドレンの26歳。この日も指揮官から「ラッパーみたいで嫌なんだよ」と言われ、これまでストレートにしていた帽子のつばを少し折り曲げ試合に臨み「もしかしたら視界が良くなったかもしれない」と笑った。「ここで達成したら安心しちゃうんじゃないかなというメッセージと捉えて、もっともっと貪欲にやっていきたい」。昨季セ王者を圧倒した手応えを自信に、大投手への道を歩んでいく。(川上 晴輝)