陸上の競歩日本代表が28日、東京・北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで、東京世界陸上(9月)へ向けた研修合宿を報道陣に公開した。男子20キロ競歩の世界記録保持者・山西利和(29)=愛知製鋼=が3回目の世陸制覇へ、ライバルでもある21年東京五輪金のマッシモ・スタノ(33)=イタリア=と練習し、学びを得たことを明かした。

京大卒の“頭脳派ウォーカー”が王座奪還へ着々と準備を整える。

 3度目の金メダルへ、山西は進化していた。約2時間のトレーニングを黙々とこなし「久しぶりに速めのペースで、それなりのボリュームで歩いた」と汗をぬぐった。直近は欧州で転戦して3連勝と好調。暑熱対策と歩型がテーマの代表合宿では「徐々に暑さに慣らしながら、体の反応を把握していく」と明かした。

 京大工学部に現役合格した“頭脳派ウォーカー”は、研究することでさらに強くなる。昨年、欧州に飛び、21年東京五輪金のマッシモ・スタノ(イタリア)と練習を共にした。「横にいる人間を見て比較することが、最も気づきが得られて学びがある瞬間」。ライバル選手との違いを明確化する狙いがあった。

 中でも、厚底シューズへの対応で収穫を得た。山西は19、22年世界陸上で連覇したが、23年大会は24位。パリ五輪は厚底シューズへの対応に苦戦し、代表入りを逃した。

高い反発力で一気に高速化するレースに順応する必要があった。「(接地で)踏みつぶさないといけないので、パワーが必要」と気づき、重りを持って下半身を鍛える練習に着手した。

 今年2月の日本選手権(神戸)で、山西は従来の記録を26秒も縮める1時間16分10秒の世界新で優勝し、復活を遂げた。フォームの「理想型は見えきっていない」というが「金メダルを目指してっていうのが一つですが、そこに向かう過程が一番楽しい」と山西。王座奪還するまで、まだまだ貪欲に成長を求める。(手島 莉子)

 ◆山西 利和(やまにし・としかず)1996年2月15日、京都・長岡京市生まれ。29歳。京大を経て18年愛知製鋼入社。中学1年で陸上長距離を始め、競歩は堀川高1年から。13年世界ユース選手権1万メートル競歩優勝。18年アジア大会20キロ競歩銀メダル。世陸は同種目で19年、22年に日本人初の2大会連続制覇。

21年東京五輪銅。今年2月の日本選手権を1時間16分10秒の世界新記録で制し、9月の東京世陸代表に内定。好物は魚。趣味は読書で推理小説好き。164センチ、54キロ。家族は両親と弟。

◆スポーツ界の主な京大出身

 ▽プロ野球 田中英祐(元ロッテ投手)

 ▽陸上 田島直人(1936年ベルリン五輪男子三段跳び金メダル、走り幅跳び銅メダル)、原田正夫(36年ベルリン五輪男子三段跳び銀メダル)、杉本明洋(2005年世界陸上男子20キロ競歩代表)

 ▽女子ラグビー 竹内亜弥(16年リオ五輪代表)

 〇…合宿には東京世陸の男女代表メンバーも参加。男子は20キロの吉川絢斗(23)=サンベルクス=、古賀友太(25)=大塚製薬=、35キロの勝木隼人(34)=自衛隊=、女子は20キロの岡田久美子(33)=富士通=、35キロの梅野倖子(22)=LOCOK=が集まった。集大成と位置付けて臨む岡田は、目標に19年ドーハ世陸の6位入賞以上を掲げ、「最後のパワーが出ると思う。一つでも上に行けるように」と笑顔で意気込んだ。

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