◆JERA セ・リーグ 巨人0―4阪神=延長11回=(19日・東京ドーム)

 山崎のこん身のガッツポーズに、割れんばかりの歓声が降り注いだ。甲斐のミットを目がけて投げ込んだフォークに、代打・糸原は動けず。

東京Dが伊織コールに包まれた。0―0の7回。四球や安打などで1死満塁とされ、ギアを入れ直した。高寺を内角直球で空振り三振。続く糸原にはこの日最速151キロと力を振り絞り、最後はフォークで見逃し三振。「最後は真っすぐかなと思ったけど、甲斐さんがここで落ちる球を出してくださったことが成長やと思います」。胸を張ってベンチへ戻った。

 7回で102球を投げ、4安打無失点。前半戦最終登板を終え、防御率はリーグトップを守る1・07。巨人では1966年の堀内が記録した0・75に次ぐ歴代2位で、斎藤や上原、菅野といった巨人の歴代エースも成し遂げられなかった数字だ。援護に恵まれずリーグトップタイの9勝目はお預けとなったが「先制点を与えずに粘ることができました」と自身をたたえた。

 気合十分だった。

今季一度も勝っていない阪神とのカード初戦。敗れれば自力優勝の可能性が消滅する一戦で「慎重になりすぎたところはたくさんあった」という。先頭打者を4度出して計4四球を与えたが、要所を締めて本塁だけは踏ませなかった。「ピンチも多かったけど、甲斐さんに『来い!』と言っていただいて強気に」と攻めの投球で無失点。阿部監督も「要所も頑張ってくれて、あそこまで投げてくれた。次につなげてほしい」と奮闘をねぎらった。

 チームを背負う責任がにじみ出てきた。「交流戦まで戸郷、温大、赤星がカード頭をしっかり投げてくれてた。今度は自分が勢いを持ってくるようにしたい」と交流戦明けからはカード頭を託され、結果を出し続けている。「赤星の前に登板して、あいつにプレッシャーをかけられるように頑張りたいねん!」と冗談交じりに話すが、実際には自身が登板時に感じた相手打線のポイントや打者のデータを書き出したものを赤星にLINEで送っている。カード初戦を担う先発の柱として、次戦以降に続く投手の助けになっている。

 好投が勝ち星につながらない日も多いが、エース格としてただ役割を全うするだけ。

「個人としても後半戦が勝負だと思ってる。やることをしっかりやってシーズンが終わるまで突っ走っていきたい」。山崎の存在なくして、大逆襲は実現しない。(水上 智恵)

髙橋尚成Pointo 今季、山崎がこれだけ安定したピッチングを続けられる最大の要因は、低めに球を集め続けることができていること。球の回転数や軌道などデータが計測できるようになったが、低めが最も打者が打ちにくいコースというのは、いつの時代も変わらない投球の基本だ。

 先頭打者を4度出塁させたが、無失点で切り抜けた。「最後の一本を打たせなければいいんだ」と腹をくくって投げられるかどうかも、先発投手にとって重要なこと。自らを助けるフィールディングも含め、こうすれば勝ちを積み上げられる、球数少なくイニングを稼げるという姿を体現している。

記録メモ 山崎(巨)は7回を無失点。セ1位の防御率を1.07とした。球宴前の前半戦を終えた時点での防御率(規定投球回以上)は、昨年の大瀬良(広)が0.82だったが、巨人投手では66年堀内恒夫の0.75に次いで2番目だ。他にチームでは52年の別所毅彦1.21、89年の斎藤雅樹1.33、11年の内海哲也1.50、99年の上原浩治1.81。

最近では16年の菅野智之で1.58などの例がある。

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