◆第107回全国高校野球選手権栃木大会 ▽3回戦 幸福の科学学園10X―6小山西=延長11回タイブレーク=(19日・エイジェックスタジアム)

 “飛ばない”低反発バットなのに―サヨナラ満弾が2地区で飛び出た。栃木では、幸福の科学学園のドミニカ共和国からの留学生で、元中日のドミンゴ・グスマン氏(50)の息子、エミール・セラーノ・プレンサ中堅手(3年)が9回に同点弾、延長11回タイブレークでサヨナラ満弾の大暴れ。

9回同点&延長サヨナラ満弾は、NPBでも過去にいない離れ業だ。

 一瞬、球場が静まりかえった。幸福の科学学園の4番・エミールが衝撃の打球を放った。延長11回。同点に追いつき、なおも1死満塁。真ん中のカーブにタイミングを外された。泳いだスイングにもかかわらず「98メートル」の左翼ポール際のフェンスを軽く越えていった。「人生で初めて」というサヨナラ満塁弾をかみしめるようにダイヤモンドを一周。チームを初のベスト8に導き、仲間と勝利の喜びを分かち合った。

 1点を追う9回もエミールが窮地を救った。1死無走者。中日などで通算30勝を挙げた父のドミンゴ・グスマンさんのような強心臓ぶりを見せた。

「(本塁打を)狙ってました」と打席に向かい、同点弾を放って延長戦に持ち込んだ。24年センバツから低反発バットが導入され本塁打の数が激減する中、ドミニカ共和国からの留学生が異例の2発でパワーを見せつけた。

 積み重ねてきた努力が形となった。昨秋の新チーム発足から100試合以上の練習試合を経験。部員も18人と少なく全員が実戦の機会を積むことができた。エミールは「試合を大会だと思ってやってきた。自信もついたし、やって良かった」と経験を重ね技術、そして精神面でも成長した。

 2回戦突破後、母国で生活している父から「おめでとう。次も頑張れ」と激励を受けた。この2発は母国の父まで届いたかと聞かれ「たぶん届いてる!」とうれしそうに胸を張った。

 次戦は強敵・作新学院との大一番だ。主砲は「まだまだ。

甲子園で校歌を歌いたいです」と見据えるは初の夢舞台。大きく、たくましく見えてきたその背中でチームを頂点まで導く。(高澤 孝介)

 ▼9回同点&延長回満塁サヨナラ本塁打 幸福の科学学園・エミールが9回同点ソロ、11回に満塁サヨナラ弾(86年今市・江崎有能と夏の栃木大会2人目。甲子園は春1人、夏2人)。春夏の甲子園大会で、サヨナラを含む殊勲打(先制、同点、勝ち越し、逆転)2本で1試合2本塁打は、79年春のPL学園・阿部慶二、81年夏の都城商・加藤誉昭、19年春の明石商・来田涼斗と3人いるが、9回同点&延長回サヨナラ弾はいない。

 ▼プロでも例なし NPBの満塁サヨナラ本塁打は81人で86度記録されている。1試合で満塁サヨナラを含む殊勲本塁打2本は3人(3度)だけ。このうち9回に同点、延長回に満塁サヨナラ弾は一度もない。

◆エミール セラーノ・プレンサ

▽生まれ 2007年11月7日、ドミニカ共和国生まれ。17歳

▽サイズ&投打 189センチ、107キロ。右投右打

▽球歴 13歳から野球を始める。父のドミンゴ・グスマン氏を中日に引き入れた森繁和・中日元監督から「日本で野球をやらないか」と誘われ、幸福の科学学園へ。

2年夏からベンチ入り。同3月から投手を始める

▽性格 おちゃめ。ランメニューの本数を減らしてもらうために監督に一発芸を披露することも

▽憧れの選手 大谷翔平。「スイングがきれいで、投手としてもすごい」

▽好物 すし▽好きな言葉 「頑張れ」

▽好きな芸能人 広瀬すず

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