◆第107回全国高校野球選手権秋田大会 ▽準決勝 金足農1-0明桜(20日・こまち)

 秋田では、2018年夏の甲子園で準優勝し「金農旋風」を巻き起こした金足農が、難敵の強豪私学・明桜に1―0で勝利し、2年連続となる夏の甲子園へあと1勝に迫った。当時のエースだったオリックス・吉田輝星投手(24)の弟、エースの大輝(たいき、3年)が7安打に抑える111球の熱投で完封勝利。

22日の決勝(10時・こまち)は、統合・創部2年目で今大会、台風の目と化した県立校・鹿角(かづの)が相手だ。勝利し聖地に再び旋風を起こす。

 打球が目の前に弾む。金足農・吉田は、兄からもらったグラブでがっちりとボールをつかんだ。一塁に送球すると、右の拳を何度も握りしめ、勝利の雄たけびを上げた。1点リードで迎えた9回。2死二塁。明桜の代打・水瀬航大郎(3年)に直球を続けた。内角への4球目で詰まらせ、打球は投前へ。「グラブがまだなじんでなかったので、大事につかみました」。4月23日の18歳の誕生日に兄・輝星からプレゼントされたグラブで、最後のアウトを奪い取った。

 「明桜 圧倒して甲子園」。

練習場のホワイトボードに誓いを記し、チームでこの対戦に全てをかけてきた。春季県大会準々決勝、明桜に0―5で敗れた。その試合に先発し、5回途中5失点を喫した斎藤遼夢(2年)は「悔しくて泣きそうになった」と振り返る。屈辱を乗り越え、今大会準々決勝で好投した後輩から、エースは試合前にバトンを託された。「大輝さん、頼んだよ」。吉田の目に闘志が宿った。「命をかけて勝ちにいく」と宣言し、圧巻の投球を披露した。

 最速144キロの直球にチェンジアップ、カットボールで翻弄(ほんろう)し「今大会で一番良かった」と6奪三振完封。巨人などNPB6球団のスカウトが視察に訪れる中、7安打を浴びながらも動じず、気迫の111球で押し出し死球による1点を守り切った。守備にももり立てられた。8回1死二塁。3番・鳥山結友哉(ゆうや、3年)の痛烈な打球は、吉田の左を抜けていった。

「やばいと思った」。同点を覚悟したエースを、主将の二塁手・佐藤晃真(3年)が救った。打球に飛びつき、すかさず一塁へ。好守で流れを渡さなかった。

 ホワイトボードの誓いへあと1勝。同校史上初となる2年連続夏の甲子園出場へ、決勝の相手は、今大会の台風の目・鹿角だ。吉田の目は闘志に燃えたままだった。「一戦必勝、総力戦で勝ちます」。王者として、全員野球で再び風を吹かせる。(古澤 慎也)

 ◆吉田 大輝(よしだ・たいき)

 ☆生まれとサイズ 2007年4月23日、秋田・潟上市。18歳。179センチ、85キロ。

右投右打

 ☆球歴 小1時に天王ヴィクトリーズで野球を始める。天王中では軟式野球部。金足農では1年春からベンチ入り。1年秋からエースナンバー。昨夏甲子園は1回戦敗退

 ☆音楽好き 学校の昼休みには恋愛ソングをよく聴く。back numberや清水翔太がお気に入り

 ☆好きな食べ物 肉巻きおにぎりが大好物で、お弁当の定番。ラーメンにも目がない

 ☆好きなキャラクター クマのプーさんの筆箱を愛用。最近はクレヨンしんちゃんのグッズを収集する

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