◆第107回全国高校野球選手権茨城大会 ▽4回戦 水戸啓明7―0水城(21日・ノーブルホーム水戸)

 最速146キロを誇る水戸啓明の今秋ドラフト候補右腕・中山優人投手(3年)が、第2シードの難敵・水城を相手に、夏の茨城では1978年の大洗・飛田嘉弘が水海道一戦で達成して以来、47年ぶり2人目となる完全試合を達成した。ネット裏には11球団13人のスカウトが集結。

毎回の14三振を奪う逸材の投球に目を見張った。

 パーフェクトピッチングが続いているとき、ベンチの指導者やチームメートはどうすべきだろうか。

 長嶋茂雄さんは巨人監督時代の1994年5月18日の広島戦(福岡ドーム)で、槙原寛己さんが完全試合を達成しそうなとき、隣に槙原さんがいたにもかかわらず、こう言ったと伝えられている。

 「いいな、みんな。槙原が緊張するから完全試合なんて口にするな!」

 控えめに言って最高だ。

 この日の水戸啓明・中山の場合はどうだったのか。試合後、本人は興味深い話を聞かせてくれた。

 「言ってくる選手もいたんですけど、その時は、『あまりそういうこと言うな!』と。意識してしまうんで…」

 聞けば、仲間からは「ノーヒットノーラン、狙えるぞ!」との声が飛んでいたとのこと。中山は9回の投球を「少し意識していました」と振り返った。自覚して、意識して、それでも達成した完全試合。1回戦や2回戦ではなく、4回戦で第2シードの強敵・水城を相手に達成した点に、大きな価値がある。

 野球ファンなら今後、「中山優人」の名前を、覚えておいた方がいい。(編集委員・加藤弘士)

 ◆中山 優人(なかやま・ゆうと)2007年4月18日生まれ、茨城・鉾田市出身。18歳。当間小学校1年から、当間スポーツ少年団で野球を始める。鉾田南中時代は水戸青藍舎ヤング、水戸啓明では1年春からベンチ入り。エースナンバーは2年春から。最速は146キロ。50m走は6・5秒、遠投110m。好きな言葉は「恩返し」。182センチ、65キロ。右投左打。

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