◆第107回全国高校野球選手権佐賀大会▽決勝 佐賀北3―0北陵(21日・佐賀県立)

 雲ひとつ無い青空の下に佐賀北ナインの輪ができた。先発の稲富理人(3年)は155球目のカットボールで最後の打者を併殺打に打ち取ると、自ら一塁ベースカバーに入り27個目のアウトを取った。

「ゲッツーだったので、本当に優勝したのかな」と実感が湧かなかった。

 9回被安打2、6奪三振で完封。今大会は5試合、41イニングで3失点のみ。ほぼ一人で投げた。大会前に本村祥次監督には野球日誌を通して、「絶対に1人で投げ抜く」と宣言したエース。指揮官も「彼は夏のために走り込みとか、きついトレーニングを誰よりもしてきた」と努力している姿をたたえ、「キレのあるストレート。どんな球種でもコントロールがいい」と信頼をささげてきた。

 普段はマイペースでおだやかな性格だが、野球になると闘争心が出る。母・智子さんが「野球と一心同体」と語るほど、ひたむきに取り組んできた。土曜と日曜の午前にあるチーム練習が終わったあとは午後に自主練習を行ったり、月曜のオフには地域のゴミ拾いに参加した。

 野球は3つ上の兄・悠人さんがきっかけで、小学2年から始めた。佐賀北に進学したのも兄が理由だ。

兄・悠人さんは2021年夏、佐賀大会決勝で東明館に敗れ甲子園出場を果たせなかった。当時スタンドから試合が終わる瞬間をみていたという右腕は「あっという間に終わった。みんな悔しそうにしていた」と話し、「次は自分だ」と決意を固めた。

 さあ甲子園。「夢の舞台。一生の中でもビッグイベント」と稲富。この日応援に来ていた07年夏の全国制覇メンバーで、広陵との決勝戦に「6番・二塁」で出場した田中亮さんは「(甲子園は)全然違うところ。一球一打で歓声が沸くので、楽しんでほしい」とエールを送った。佐賀北が全国の頂点に立った07年は稲富が産声をあげた年。「縁があるな」とにこやかに語った右腕。「(当時の映像は)見たことあります」と話した上で、「勝って甲子園で校歌を歌いたい」と高らかに意気込んだ。

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