◆第107回全国高校野球選手権大阪大会▽4回戦 履正社4―0香里丘(21日・GOSANDO南港)

 天国の父へ成長した姿を見せた。履正社・江藤は2点リードの7回からマウンドを踏んだ。

「3回戦では制球が乱れた。今日は力を入れつつ、制球を意識した」と2回を無安打無失点、無四死球、3奪三振。最速146キロの直球を軸に打者6人でぴしゃりと抑え「ある程度まとまって質も良かった」とうなずいた。打線も奮起し、7回に4点を追加。エースが勝利を呼び込んだ。

 昨夏の練習中、悲痛な知らせが届いた。元高校球児の父・雄(つよし)さんが大動脈解離により、40歳の若さで急逝した。小学時代、捕手だった父とはよくキャッチボールをした。「放心状態。理解できなかった」。優しく、安心感のある父との早すぎる別れだった。

 しかし、翌日には練習試合が控えていた。

秋の大阪大会のメンバー選考へ向け、「この試合も重要になるから、俺は試合に行きたい」と母・佳未さん(44)に伝えた。多田晃監督(47)の配慮もあり試合は欠場したが、「お父さんのためにも、もっと頑張るから」と猛練習。背番号11で初のベンチ入りを勝ち取った。さらに一冬を越え、「ウェートや体幹(トレ)で球速が5、6キロ上がった」と今春にはエースにまで上り詰めた。

 この日、母は息子の雄姿をスタンドから見守った。“遅咲きのエース”に「ずっと野球大好きでやってきた。最後までずっとそのままでいてほしい。絶対甲子園に行ってほしい」とエールを送った。

 背番号1で迎えた最初で最後の夏。江藤は「甲子園で、日本一で、最後のマウンドに立つ姿を見せたい」と、天国の父へ誓った。(松ケ下 純平)

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