◆大相撲 ▽名古屋場所9日目(21日、IGアリーナ)

 西前頭8枚目・一山本が8勝目を挙げ、名古屋場所の新会場「IGアリーナ」での幕内勝ち越し一番乗りを果たした。西前頭6枚目・豪ノ山を引き落とし、関脇・霧島、平幕・玉鷲、草野が2敗目を喫して単独首位に立った。

北海道勢では1991年春場所の北勝海(現八角理事長)以来の優勝を目指す。新横綱・大の里は小結・高安を危なげなく寄り切って7勝目。一山本を1差で7人が追う。

 新会場で勢いが止まらない。一山本は立ち合いでしっかりと踏み込み、突き押し自慢の豪ノ山の出足を止めた。のど輪で起こし、タイミングよく引き落とした。「(中大の)後輩ですから負けたくなかった。しっかり当たったから引きが決まった」と二重まぶたの笑顔がキラリ。IGアリーナで初めて勝ち越した幕内力士ともなり、「とても名誉なことだと思います」とうなずいた。31歳伏兵の単独首位に、報道陣から同時多発的に質問が飛び交い、「僕は(一度に10人の話を聞き分けたとされる)聖徳太子じゃないですから!?」と苦笑いした。

 9日目終了時点での単独首位は、11勝を挙げて敢闘賞を獲得した23年九州場所以来で自身最速タイ。名古屋場所前には毎年、七夕の短冊を白星と給金直しにちなみ「八山本」と書くのが恒例で早くも達成した。

1敗勢が全員敗れて単独首位になったのもその時以来。取組前の横綱土俵入りでは巡業を含めて太刀持ちを初めて務めた。この日は高安が大の里と対戦するため、役割が回ってきた。「(重さで)腕がプルプルしていた。しんどかった。横綱が負けたらどうしよう」と苦笑したが、相撲の神様は大役のご褒美を用意していた。

 6月15日に日本ハム―広島戦で地元・北海道のエスコンフィールドで始球式を務め、きつねダンスにも挑戦した。名物ダンスで過去最重量とみられる154キロは「(曲の)始まりと思っていたタイミングが違って戸惑った」というが、ファイターズガールをお手本に懸命にぎこちなく踊り、日ハムファンから拍手喝采を浴びた。広島戦でのサヨナラ勝ちも見届け、「試合は面白かったし、水谷(瞬)外野手の、(メンズ)ネイルアートはきれいだった」とたくさんの刺激をもらった。21日時点で日ハムもパ・リーグで単独首位を走り、一山本とともに絶好調だ。

 北海道出身の優勝は91年春場所の北勝海(現・八角理事長)が最後。理事長から「大チャンスだね。

一日でも長く優勝争いにからんでほしい」と期待され、「一番でも多く勝てるように頑張ります」。中大卒業後に福島町役場に勤めた元公務員。“脱サラ”から夢を追う男が初優勝へ突っ走る。(山田 豊)

 ◆一山本 大生(いちやまもと・だいき)本名・山本大生。1993年10月1日、北海道・岩内町生まれ。31歳。中大卒業後、北海道・福島町役場勤務を経て23歳で入門。17年初場所で初土俵。しこ名の由来は中大OBらから縁起がいいと9画を勧められたことなどから本名の山本に「一」を加えた。188センチ、154キロ。得意は突き、押し。

 ◆北海道出身力士の優勝 過去13人で計120回優勝。

最多は32回の大鵬。千代の富士が31、北の湖が24、北の富士が10、北勝海が8、千代の山が6回で続く。北天佑、大乃国が2回。吉葉山、安念山、北葉山、長谷川、金剛も優勝している。

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