プロボクシングWBC&IBF世界バンタム級統一王者・中谷潤人(27)=M・T=が今、感じていることを発信するコラム「中谷潤人 BIG BANG!」。4回目は、スーパーバンタム級の世界4団体統一王者・井上尚弥(32)=大橋=とのビッグマッチについて言及。
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前回の試合(6月、前IBF王者・西田凌佑=六島=に6回終了TKO勝ち)から1か月半たって、次戦に向けて練習は再開しています。初の統一戦では初回から積極的に攻めて、ボクシングの幅の広さを見せられたのは良かったんですが、何せ突出したことというか、今までやってこなかったことをリング上で発揮したので、自分が完璧にイメージしていたものというより、反省点の方が目についてしまいました。より成長できるための一つの過程でしょうが、気負いすぎて空振りが多かった。力まずにドンドン手を出せれば、もっとピンポイントでパンチを当ててスムーズにダメージを与えられるし、スタミナも削らなくても済みますから。
次戦については統一王座防衛か、階級を上げるか、気持ちは半々。ただ、スーパーバンタム級に上げることを想定しての体づくりはすでに始めています。
尚弥選手との対戦に向けて? そうですね。まだ何も決定していませんが、着々と準備は進んでいるなっていうところでしょうか。対戦相手など決まっておらず、ボクシングを伸び伸びできる今の時期に、尚弥選手との戦いをイメージする機会は、より増えています。
先日の記者会見で、尚弥選手が「中谷潤人という選手を高く評価している」と話されたと聞いて、素直にうれしかったです。僕も、さらにリスペクトして戦えるという状況になっていくと思えたし、本当にいい戦いになるだろうなっていう気持ちになりました。
尚弥選手との試合が、日本が真っ二つに分かれて応援する状況となれば、すごく盛り上がります。『対立する』っていう構図こそ、ボクシングの面白いところ…醍醐味(だいごみ)でしょう。いろいろなストーリー性がある中で、世界4階級王者と3階級制覇王者が当たるべくして当たる…。国内初の対決は、歴史に残っていく試合になると思います。
中谷潤人のボクシングをつくり上げるために、これまでもいろいろなボクサーの映像を見てきました。世界2階級制覇王者リカルド・ロペス選手(メキシコ、引退)は「精密」と言われていて、パンチをキッチリ当てていく。きれいなボクシングをするのがすごくいいなと思うし、参考にしています。
WBA世界スーパーウエルター級王者テレンス・クロフォード選手(米国)は構えを結構、スイッチするんですが、彼は左構えの時、合わせるのがうまい。僕はサウスポーなので、そういうタイミングなどもヒントにしたりします。
往年のボクサーだと、元世界ヘビー級王者ムハマド・アリ選手(米国、故人)とか…。彼の体の使い方や手の出し方などを実際にやってみたりして、ルディ・エルナンデス・トレーナーからは「ムハマド中谷」って言われます(笑)。練習中に「ムハマド中谷」って声がかかると、僕は足をスラッシュ(素早く切り返すこと)する。
尚弥選手も参考にしています。彼のボクシングから学べることは、プレッシャーを常に相手に与えられるというところ。それで相手を疲れさせることができますし、相手にボロを出させることもできるので、すごい強みだなと。
プレッシャーにはパンチが強いということもありますが、いろんなものが含まれます。常に相手を後ろに下がらせたりとか…。相手の反応を増やさせることもできます。プレッシャーをかけることで相手が手も足も出ないということではなく、むしろ相手にボクシングを出し尽くさせて、自分の勝負どころを見つける。これはあくまでも自分の目から見た印象ですが、そこは見習いたい部分でもあります。
そういう歴史に名を残した選手のボクシングを参考にしながら、中谷潤人のボクシングを構築させる―。いろいろな選手の優れている点をピックアップして、そこから刺激をもらうことは、どの選手もしていることでしょうが、それをどうオリジナルに変えられるか。
ビッグマッチに向け、僕のボクシングスタイルに、より磨きをかけていきます。接近戦でも、距離が遠いところからでも柔軟に対応できるというところの精度を、より高めていかないといけないと、あらためて感じています。感謝! 感謝!(WBC&IBF世界バンタム級統一王者)