◆第107回全国高校野球選手権大会第8日 ▽2回戦 関東第一6―1中越(13日・甲子園)

 二塁へ頭から突っ込み、力強く拳を突き上げた。初回先頭だ。

中越の1番打者・堤歩力我(ありが)遊撃手(3年)は、2ボール1ストライクからの4球目、133キロの外角ストレートに反応した。打球は右翼線に転がる。二塁打だ。出塁すると、相手の守備が乱れる間に本塁を陥れ、1点を先取。4打数3安打と躍動した。

 「1番打者としての役割は果たせたと思います。ヒットを打てて、味わったことのない歓声でうれしかった。今まで打ったヒットの中で、一番気持ちよかったです」

 故郷の群馬県昭和村は人口約7000人。約5倍の観衆3万4000人の前で暴れまくった。「人口も少なくて、田んぼや畑ばかりの村なんです」。しかし、堤はそんな昭和村が大好きだ。前日には地元の人々からLINEが届いた。

 「『見てるから頑張って』とメッセージをいただき、それが力になりました。感謝ですね」

 強烈な太陽光線の下、魂を燃やした2時間8分。帰省したら、村の人々にお礼を伝えたい。名前の由来「ありがとう」を実感した夏が終わった。(加藤 弘士)

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